第12話 普段の過ごしかた

 玲香ちゃんと会う機会が増え、それをいいことに会えそうならいつでも会おうねって約束し続けていた。

 そんな中、あるお酒の席で普段どういうふうに過ごしてるのって話に。


 未咲「わたし? わたしはね……最近見た恋愛ドラマにちょっと憧れてみたり効果的な健康法とか聞いたら積極的に試したりしてるよ」

 玲香「意識高っ。わたし全然そういうことしてないわ」

 未咲「玲香ちゃんはどんな感じなの?」

 玲香「わたしなんて全然よ。体型ちょっと変わったし、化粧したまま寝ることもあるし、そのままおねしょ……って何言わそうとしてんのよ!」


 がたんっ。まわりの人がびっくりしている。


 未咲「玲香ちゃんが勝手に言っただけのような……」

 玲香「と、とにかく毎日忙しくてそこまで気が回らないのよ……やけ酒してそのままダウンしちゃうなんてザラにあるんだから……」


 うみちゃんもそんな感じって聞いたことがある。大人になったふたりは似たものどうしなのかな。


 未咲「でどうなの? やっぱり気持ちいい? 夜な夜な香り高いお酒をその下半身から出してるんだよね……? はぁ……玲香ちゃんの家にこっそり忍び込んでじゅるっと一杯やりたいなぁ」

 玲香「やれるものならやってみなさい。即警察に突き出してやるわ」


 そう言って、持ってるグラスをぐいっ。


 未咲「ガードが堅い……あのねここだけの話、さっきわたしが普段飲みしてるお酒、こっそりそこに入れちゃったんだよね……♪」

 玲香「ちょっ……それって……」

 未咲「そ。度数がきつい辛口派御用達の、かなりいけるって評判のお酒にすりかえさせてもらいましたっ☆」

 玲香「ひゅーっ…… ←倒れる音」


 玲香ちゃんには少しまずかったようで、急性アルコール中毒にはならないにしても、顔は真っ赤で身体は触り放題の、わたしにとってかなりラッキーな状況になってくれた。

 ……ぜったい真似しちゃだめだよ?


 未咲「よしよし……これでお持ち帰りだっ」


 わたしより少し大きい(直接言ったら玲香ちゃんちょっと怒りそう……)玲香ちゃんを両手で持ち上げて、わたしの自宅にあげる。


 未咲「どうなってるかな〜……」


 下着のところまでお邪魔してみる。犯罪みがかなり高い。


 未咲「おぉ〜……少し湿ってますなぁ……」


 それまで飲んでいたということもあり、その間に徐々に溜まっていったのだろう。漏らすまいとする股間やその寝顔をじっと見つめていると、なんだかこっちまでしてしまいそうになる。


 未咲「いっそのことなら……」


 ちょうどわたしもしたかったので、玲香ちゃんに乗じてしちゃおっかな。


 玲香「……みさき?」


 ろれつのあまり回ってないような声がして、慌ててわたしは再びその度のきつい酒を口に含む。今度は口移しで。


 玲香「んん、ん……っ?」


 手に表情が出てしまっているようで、顔を見ているよりもしかすると面白いかもしれない。


 未咲「まだ冷めちゃだめだよ、玲香ちゃん……」


 あまいくちづけ。気分が高まると、自然とおしっこしたさもそうなる。それは玲香ちゃんも同じだったようだ。

 身悶えがいっそうはげしくなり、全身で耐えられないと叫んでいるように見えてきた。


 未咲「もうそろそろ出そう? 出そうなの……? はぁはぁ……んっ♡ いいよ、一緒にしよ? せーのって言ったら出していいからねっ、それまで我慢……んんんんっ」


 言ってるわたしが少し我慢できなくなっており、下着にシミが広がりはじめてるのを肌で感じた。

 きょうはとても冷えるので、そのせいもあったのかもしれない。


 未咲「わたしずっと、玲香ちゃんとこんなことできたらいいなって思ってたから……もう絶対逃さない、わたしのもとから一生はなれちゃだめ、おしっこも我慢しちゃだめっ、においだって……いつかなくなることはあるかもしれないけど、ついてる限りはずっとこうしていよう? 寂しいよ……」


 そう言って、かなしみの何番搾りかが下の口からあふれる。気持ちいいなんてものじゃない。だけど確実に、あの日の思いはよみがえってくる。


 未咲「わたしね、もうないでしょ? 会社の人たちに『あの子のおしっこ、なんか臭くない?』とか思われはじめちゃって……春泉ちゃんとか、もちろんあの子だけじゃないけど、そのへん普通なみんなの気持ちが、それはもういっきにわかるようになったの……だからいまの玲香ちゃんがすっごく羨ましくて……わたしのほんとに勝手なわがままでごめんね……でもいまは、いまだけはね……玲香ちゃんのおしっこがほしいんだ……だから……」


 そう言うと玲香ちゃんは意味深に、涙を一滴垂らしながらかすかに応えてくれた。


 未咲「いい匂い……でもまだ足りないよ……」


 まだ我慢していたいのか、なかなか出してはくれない。もしかすると玲香ちゃんにもなにか、仄暗い思いでも抱えてるのかもしれない。


 未咲「わたしが先に出したほうがいいのかな……」


 口に出してみると、意外としっくりきてしまった。


 未咲「でも玲香ちゃんに引かれないかな……いくらすぅすぅ寝てるっていっても、鼻はいつだってずーっと開きっぱなしだもんね……夢だって見てる可能性はあるわけだし……」


 わたしは玲香ちゃんの考えてることがなんとなくわかる。この世の臭いものを煮込んだような、そんな臭いが放たれることをあたかも全力で拒絶してるかのような、そんな表情をいましているんだと。


 未咲「それでもやらないと、きっと玲香ちゃんもやりづらいだろうし……」


 やめろと聞こえた気がして、わたしは胸が痛くなった。だけど玲香ちゃんもわかってるはず。これ以上我慢していても苦しいだけ。わたしは心を鬼にして、自分の身体と向き合った。


 未咲「いくよ玲香ちゃん……最初はうっ、てなっちゃうかもしれないけど、一瞬の我慢だよ……これでもわたし、まだかすかに残ってるって信じたいから……あっあっ」


 その短い悲鳴を2回聞いたことを受けて、玲香ちゃんの表情も少しおだやかになってきた。

 まるですべてを悟ったかのような、そんな表情に……。


 未咲「玲香ちゃん玲香ちゃん玲香ちゃん……もう我慢しなくていい? 正直に言うと、なんでいままでずっと我慢してきたのか、ちょっとわからなくなってきたんだ……」


 言っていて自分でも意味はよく呑み込めなくて、それはいろんな思いを処理しきれなくなってきている自分に気づきはじめてるってことなんだと思う。


 未咲「えへへ……もう出ちゃったね……」


 気づいたら水浸しの床。しやすくなったかといえばそんなことはなく、むしろしづらくなったような気さえしてくる。


 未咲「玲香ちゃんもしたくなっちゃった……かな?」


 それは正解で、匂いを嗅いでいくとそれは確かに昔のわたしを想起させてくれる。


 未咲「よかった……もう我慢しなくていいんだよ……」


 苦しみから開放されるような表情が全身から伝わってくる。よほど気持ちいいのか口元が緩んでいる、ようにも見えてくる。目を凝らさないとちょっとよくわからないくらいだけど。


 未咲「ほんとに表情くずれないなぁ……さすが玲香ちゃん……」


 酒に酔ってこれなら、もうどう頑張ってもわたしごときでは崩せないよね。そんな気を起こさせる。


 未咲「何があったんだろう……」


 嫌でも考えてしまう。あの涙のわけが知りたい。


 未咲「いや待てよ……これ玲香ちゃん酔いが醒めて起きて赤面してわたしを小突くまで見えるような……」


 ということは、むしろ酔わないほうが素の玲香ちゃんを引き出せる……?


 未咲「勧めたお酒が悪かったのかもしれないけど、こういうことは今回限りでやめようかな?」


 なんかかわいそうな気がしてきて、気づくのが遅れたかもしれないけどその結論に至った。


 玲香「んぇ?」


 まぬけみたいな声を出しながら起きる玲香ちゃん。これまたなかなか貴重なところを……。


 未咲「あっ、起きた」


 わたしの目が1.5倍くらい大きくなったような気がする。


 玲香「……なんなのよこれ」

 未咲「えーっと……ほら、玲香ちゃんおうちで我慢できないって言ってたでしょ? それの再現と、わたしの願望を混ぜた……」

 玲香「いますぐ片づけなさいよ! 未咲の家なんでしょ?! なおのこと敏感になりなさいよね!」


 状況を一瞬で判断しそう言い放つ。いやはや、これは恐れ入った……。


 玲香「なんなのよこの臭い! 人が出したものとは思えないわ! いいから片づけて!」

 未咲「わはは〜ん、玲香ちゃんにまでそう言われたらわたし、もう立ち直れないよ〜!」


 このドタバタ感……なんだかなつかしい。


 玲香「情に免じて今回は見逃してあげる。あんたも我慢できないことはあったでしょうし。ただ、次からは許可制ね。毎回こんなことされたらたまったものじゃないわよ……」


 言って本気で泣き出す玲香ちゃん。やっぱりつらいことあったんじゃないかなぁ……。


 玲香「わたし、これからずっと未咲の背負ってきた業を受け継いでやっていけるの……?」


 どうやらその方向性の心配だったらしい。跡継ぎというのは大変だ。はたから健闘を祈りたい。


 未咲「大丈夫だよ、いい匂いだったもん」

 玲香「そういう問題じゃないのよね……」


 そう言って、濡れた股間をおさえる仕草をする。


 未咲「玲香ちゃんがそのおしっこで人びとを幸せにする日々がこれから楽しみだけどな〜」

 玲香「他人事みたいに言って……」

 未咲「だってそうなんだもん」

 玲香「言ったわね〜!」

 未咲「いったぁ〜い!」


 ほっぺたをつねられるこんな感じも、やっぱり懐かしかった。

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