第2話

あれから1年……



去年、三年生だったケイト先輩達が卒業し、俺も後1年で卒業して本国に帰る予定だ。



俺を嫌っているのテレーゼも何故かこの学園に編入して来た。

『【特進科】を優秀な成績で卒業して、自分が公爵家を継いで、のランディーを婿養子にする。』

つもりらしい……

残念ながら本人の希望通りに行かず、【淑女科】に編入させられた。



無理だと思うが、まぁ頑張ってくれ。



実は今、俺は【稀人伝説研究部】の部長をやっているんだ。

『稀人の事に一番詳しいから。』という理由で……



詳しいと言われても、稀人の殆どが何故か日本人なんだよなぁ。

まぁ、偶に外国人もいたみたいだけど、残っている文献によると、彼等の殆どはだったみたいだけどな。



そんでもって、後数ヶ月で卒業ってところでユイナーダ王国の王城から呼び出しを受けた。



何でも『数年振りにが5人が現れて。』という事で【稀人研究の第一人者】の俺に、『本物か偽物かの判断とユイナーダ王国への不法侵入、住民への暴行等、犯罪を犯した理由を聞き出すアドバイスをして欲しい。』というのだ。

って何だよ?



俺、一応ただの留学生なんですけど……



王様からの呼び出しを無視する訳にもいかず、俺はいくつかの資料を持って、ユイナーダ王国の王城へ向かう事にした。



普段、第四騎士団が取り調べをしているというマジックミラーのある部屋で、まず様子を見させてもらう事になった。



見て直ぐに解った。



アレ、前世の俺の従姉妹だ!良かった、直接会わなくて……



もし直接会ってたら、俺は何をするか解らないだろう。

彼女との間に、何があったかはこの際、置いといて。



出来ればこのまま、会わずに帰りたい。



従姉妹は騎士団のイケメン騎士2人の質問に、頬を赤くしながら答えている。

1人は従姉妹がハマってた乙女ゲーム【聖女の♡異世界学園生活】の攻略対象だった。

そりゃイケメンだわ。

もう1人は、確か彼の後輩でヒロインにいろいろアドバイスしてくれるサポート役で従姉妹の推し。

コイツも眼鏡のイケメンだ。

確か『何で彼が攻略対象じゃないのよ!』とかよく言ってたな。



彼等が従姉妹から聞き出したところ、どうやらどっかの馬鹿が、異世界召喚をしたらしい。




テンプレの【勇者召喚】か?

しかし、この世界で【魔王】とか【邪神】とか聞いた事がないんだが?



もしかして、【あかん奴の召喚】とかそういうのかな?

因みに従姉妹は()だそうだ。



どうやらこのユイナーダ王国や俺の国がある大陸とは別の大陸にある国が、世界制覇を企らんでいるそうだ。

とはその国の事らしい。



その国はかつて、ユイナーダ王国の始祖【ユイナダ トオル】を召喚した国だった。



確か歴史書に『その国で散々やらかして此方の大陸に逃げて来た。』という様な記述があったな。

あちらの国では【トール・ユイナーダ】は【魔王】扱いらしい。



自分のの質問に、本人達だと気づかずにペラペラと答える従姉妹……

チョロいなwww



『彼女達は個別に管理して何と言われても、絶対に他のメンバーと会わせない様に!』

と指示して次の人物の尋問を続ける。



次に呼ばれたのは、

彼曰く……

『自分達が倒したのはだ!

襲われていた犬獣人の幼女を助けてあげただけなのに不当逮捕だ!!』

と言っていたが、実際には……

『牧場で羊の世話をしていた犬獣人のミラちゃん(6歳)の目の前で家畜の普通の羊を1匹残らず殺し、駆けつけて来た彼女の家族(シェットランドシープドッグ似の犬獣人)に重傷を負わせた』強盗傷害事件だ。

この大陸の獣人は人に近いタイプから、ほぼ2足歩行の動物にしか見えないタイプまで、同じ家族でも様々な姿をしている。



因みにコボルトとは見た目が全く違うので、見間違う事は無い。この世界のコボルトは何故か、赤だの黄色だのとカラフルな毛色をしている。



更にタチが悪い事に【保護】と称してミラちゃん(6歳)を拐って連れ回している。

【誘拐】だな。

彼女にしてみれば、『突然現れて、家畜を殺され家族を傷つけられ、無理矢理連れ去られた。』のだ、余程怖かったのだろう。



可哀想に彼女は怯えて、保護された教会の部屋でずっと震えているそうだ。



これだから【勘違い勇者】ってのは、嫌いなんだよ!!







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