第2話 公爵side
【
それが発覚したのは先日行われた、息子と息子の従者の【祝福】と同時に行われた【鑑定】だった。
【鑑定】というのは数年前に、同盟国のユイナーダ王国で開発された技術で、【爵位簒奪】を防ぐ為に今年から導入された物だ。
まさかそれに我がチェイテス公爵家が最初に、引っかかるとは思わなかった。
第二王子の側近候補として、長年努力してきた私の息子ランディーが、偽物だったなど
しかも、あの真面目な我が公爵家警備隊隊長ガルフの息子だと?
ガルフは真面目な男だ。
けしてその様な事をする男ではない。
息子が産まれ当時、ガルフは私の仕事の都合で護衛の為、自分の息子が産まれたにも関わらず、私と王都に居た。
奥は偶々、妊娠に気づいたのが領地に帰っている時で、同時期に妊娠していたガルフの妻のマリエッタを急遽乳母として雇い、念の為領地に残る事になったのだ。
という事は、子供を入れ替える事が可能なのはガルフの妻マリエッタだけだ。
だが彼女は数年前に病死していて、確かめようがない。
そう思って、今度はガルフの息子カイトを【鑑定】した結果、なんと彼も偽物でガルフの息子ではなかった。
彼は大柄で、同年齢の子供達より身長も抜きん出ていた。
しかし、それは今回の【鑑定】で実は息子達より2歳も上だったからだと判明した。
彼は以前から横柄で、他の使用人の子供達に嫌われていた。
息子に対する態度とは、全く違っていた為ガルフには悪いが成人を期に、息子の従者から外そうとした矢先に、この結果だ。
【鑑定】の結果、ガルフの息子カイトは【マリエッタの姉夫婦の息子】だった。
しかも最悪な事に彼はその事実を知った上でガルフの息子として、今まで凄して来ていたのだ!
とても許される事ではない!!
私は急いで領地にあるマリエッタの姉夫婦が住んでいる村に、部下を向かわせた。
ところが、村には既に本物の息子らしき人物は居らず、村人から聞き出した結果ずっと虐げられていた為、どうやら成人を期に村を出たらしい事がわかった。
部下の報告に拠ればあろう事か、彼は教会のくだらないしきたりの所為で、【最初の祝福】さえ受けられず、その後の成人の儀である【祝福】も受けられなかったというのだ。
何という事だ!!
『【最初の祝福】を受けていない。』という事は『彼の出生が届けられていない。』という事だ。
村にいる時は必要なかったが、外に出ればそういう訳にはいかない。
届けが無ければろくな仕事にも着けないだろう。
もう少し早くこの事に気付いていれば……
部下達によって、マリエッタの姉夫婦とその3人の子供は捕らえられ牢に入っている。
この件でガルフは警備隊隊長の座を降り、公爵家を出る事になった。
長年真面目に勤めてくれていただけに、実に惜しい事だが仕方がない。
息子のランディーもガルフと共に家を出る事になった。
他の子供達も何も知らなかったとはいえ、そのままという訳にはいかず、かと言ってこのまま国内に居ては『王弟を騙していた。』と言われ肩身が狭いだろう。
そこで私はユイナーダ王国にいる、義弟ベルツリー侯爵を頼る事にした。
第四騎士団長を務める彼なら、悪い様にはしないだろう。
この時、娘のテレーゼが、とんでもない事を言い出した。
『実は、兄であると思って諦めていたけど、血の繋がりが無いなら問題無く結婚出来るわよね♪』
などと言い出したのだ。
いったい何を考えているのだ?!
娘には早急に、婚約者を決めなければならない様だ。
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