拝啓、いかがお過ごしですか?

拝啓 いかがお過ごしですか?


父様、母様、いかがお過ごしですか?


兄弟たちや姪っ子たちはお元気でおられますか?




このたび、私は出撃する日時が決まりましたことをご報告いたしたく存じます。


つきましては、昭和20年3月16日に出撃することとなりましたので、どうか空を見上げていただきたく存じます。


私は父様、母様方に私の勇姿を見せたく思っております。


どうか、幼いころに駆け回った山のほうを見上げてください。


そこを飛ぶ機体があれば、それは私でございます。


私は知覧より出立し、故郷の山を通って戦地へ向かう所存です。


なので、どうか空を見上げてくださいませ。


そこに私がいます。




──────


それが叔父の最後の手紙だった。


それからしばらくして告げられたのは、叔父が戦死したという知らせだった。


享年22歳



それから、どれくらい時がすぎたのかはわからない。


気づけば私は年をとり、叔父によく似た孫は叔父と同じ22才になった。


「ばあちゃん!! 俺さあ、パイロットになったよ! 自衛隊のパイロット。今度見に来て! 俺が空飛ぶところみせてやる」


そういって、孫が満面の笑みを浮かべている。


あの手紙を書いた叔父は笑っていたのだろうか。


未来への希望に満ちた孫のように笑顔を浮かべていたのか。


それはわからない。


ただ、叔父は願ったのだろう。


私たちが達者でいることを


皆が幸せであることだけを願って死んでいったにちがいない。


「ああ、見に行くよ」


私はいう。


「よし! 楽しみにしてください!」


張り切って言う孫は本当に優しい子に育った。


顔立ちだけでなく、その優しい心も叔父に似ている。


きっと、この孫は叔父の生まれ変わりなのかもしれない。


私はそんなふうに思った。

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