第10話

 あの後、熱が出て1週間学園を休んだ。


 正直、このまま行きたくないと思ってる。男爵の手前そういう訳にもいかないが...


 はぁ、やだなあ...ミーナ嬢はまた斜め上の勘違いでなにか仕掛けてくるんだろうなあ...


 いっそ殿下に相談してみるか...いや、無いな。更にややこしくなりそう。


 あぁ胃が痛い...


「アリス! 心配したぞ、もう体の方は大丈夫なのか?」


「はい、お陰様で体の方はなんともありません」


 心の方はボロボロだけどね...


「その、アリス...本当に虐めとかに遭っていないのか? 君は自分で足を滑らして落ちたと言っていたがどうにも信じられないんだ。誰かに虐められてるのだとしたら正直に話してくれ。君が心配なんだ...」


「い、いやだなあ、殿下ったら。アタシがドジっ娘だってこと知ってるでしょ? いつものドジですから気にしないで下さいな。あと手を離して下さい」


「君がそういうなら今は信じよう。だけどなにかあったらすぐに相談してくれ、君の力になりたいんだ」


「ありがとうございます。その時は相談させて下さいね。あといい加減手を離して下さい」


 病み上がりなのに朝から疲れさせんなよ...



◇◇◇



「アリス様、お久しぶりですね。もうお加減はよろしいので?」


「げっ! み、ミーナ様!  こ、今度はなんですか?」


「いえね、この間、殿下にお姫様抱っこで運ばれたでしょう?  あれから両思いに発展したかなあと思いまして」


「...なんで?」


「ほら、吊り橋効果ってやつですよ。危機的状況に陥った時、それを乗り越えたらお互いの愛が燃え上がるっていう」


「...すいません、全く意味がわかりません...」


「本来はこういう趣旨じゃなかったんですが、しょうがないですかね。まあこれも教育の一環と言えなくもないでしょうし。危機的状況をお二人で乗り越えるって意味で良しとしましょうかね」


「...あの、だから一体なにを!?」


「これからも私が危機的状況をプロデュースするということです」


「...」


 ヤバい...この人は同じ星の人なんだろうか...全く意思疎通が出来ない...


「あ、ほら。ちょうど殿下が来ましたよ。あなたを探してるみたいですね。さあアリス様、もうちょっとこちらに」


 ここは階段の踊り場。嫌な予感しかしない。


 アタシは逃げ出そうとした。しかし、回り込まれてしまった!


「タイミングを合わせて...えいっ!」


 ミーナ嬢に押されて階段から落ち、ちょうど下から上がってきた殿下に抱き止められた時、アタシは全てをあきらめて殿下に相談することにした...




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