第3話

「それでアリス様の時ですが」


「あぁそれは言わなくていいよ。アリスがミーナから嫌がらせを受けてるって訴えがあったから、俺達がマークしてた。そんでアリスに絡んできた破落戸を撃退したから今回の件が発覚したようなもんだから」


「そうでしたか」


「ふぅ...」


 アインハルトは大きなため息を吐いてこう言った。


「ライリー、取り敢えずこのイザベラと取巻き達を拘束しろ」


「はっ!」


 ライリーが近衛騎士を引き連れて、呆然自失状態のイザベラ達を拘束していく。


 それをポカンと見送っているミーナに向けて、アインハルトは


「ミーナ、王妃教育をやり直そうか...」


 と呟いたのだった。


 一方その頃、イザベラは拘束された部屋の中で、なぜこんなことになってしまったのか、後悔しながら今までのことを振り返っていた。



◇◇◇



「ミーナ・バーネット!  ちょっとこちらに来なさい!」


 公爵令嬢イザベラの甲高い声が教室内に響き渡る。ここはブラゼル王国が誇る魔法学園リリアスの最終学年クラスの一つである。


 この学園では、15~18歳までの4年間、魔法と政治・経済、社交を学ぶ。


「はい、なんでしょうか?」


 呼ばれたのは、この国の王太子アインハルトの婚約者で、赤髪に碧眼の美女ミーナ伯爵令嬢である。イザベラは公爵令嬢たる自分を差し置いて、王太子の婚約者に選ばれたこの伯爵令嬢が、疎ましくて仕方がなかった。


 取巻きーズ三人と空き教室にミーナを連れ出してこう告げる。


「良い事、王妃になるための教育は、なにも王城でないと出来ないと言う物ではありませんの。公爵令嬢である私が実践的な王妃教育を特別に教えて差し上げますわ。感謝なさい!」


 大嘘である。


 そもそもたかが公爵令嬢如きに王妃教育のなんたるかを語れるはずもないのだが、


「本当ですか、ありがとうございます!」


 ミーナはある意味天然だった...


「カバンから教科書を全て出しなさい」


「はいっ」


 ミーナが素直に従うと、

 

「よろしい、ライザ、エリン、オルガ、やっちゃいなさい!」


「はっ!」


 取巻きーズがまるで親の敵のように嬉々として教科書をビリビリに引き裂く。


「あの、一体なにを!?」


 ミーナがポカンとしながら聞くと、


「王妃たるもの、教科書の中身を丸暗記しておくのは当然。テスト前に慌てて一夜漬けしようなんて言語道断。教科書なんかなくたって次のテストで良い点数を取ってみなさい!」


 めちゃくちゃである...


 ちなみに偉そうにしてるイザベラ含むこの四人は一夜漬け派だったりする。


 (フフン、良い気味。テスト前に最終確認出来なくて大恥掻くといいわ)


 と、あくまでも自分基準でほくそ笑んでいたのだが、


「わかりました!」


 ミーナにとても良い笑顔を返されたのだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る