飲み過ぎて路上で寝るのは若いうちでやめとけよ おっさんになるとシャレにならん
あークッソ!ほんっと、アイツと飲むとロクな事にならねえんだよ。
ロボオと不本意にも合流し、それならばと、錫乃介が閃いた事をロボオに提案して餌で釣って承諾させた後、アフロ店主とお店の女の子も一緒になって酒を飲み始め、ドンちゃん騒ぎになってその後の事は良く覚えていない。
そして何故かハンターユニオンのハンガーにある鉄骨やらドラム缶やらが転がっている廃材置き場で、寒さに震えて目が覚めた。
大丈夫だろうなアイツ、飲み過ぎで忘れてないよな……
“新宿で一生タダ酒が飲める権利ですから、忘れないでしょう。それにしても良いタイミングでロボオ様に会いましたね”
良いんだか、悪いんだかな。
昨夜錫乃介が閃いた事。新宿の交易に関する事だった。その件をロボオにやらせようと思い提案したが渋られた。当たり前だ。わざわざ新宿まで行かねばならないのは面倒であるし、そもそもロボオはアスファルトのユニオンの職員であるから、そんな余計な仕事をやる義務は無いのだ。
そこで錫乃介がサロットルと口約束している新宿のラウンジで一生タダ酒を飲める権利を譲ると言ったら、喜び勇んで快諾してくれた。
ロボオからは新宿にハンターユニオンの支部を創設すべきと提案された。
成る程確かにハンターを呼び込みプラントノイド狩りをさせ、その上資源の回収までさせれば産業化は捗る事この上ない。その場合、利益配分や権利関係をどうするかの問題が出てくるが、そんな物はそれこそサロットル達幹部に任せれば良い。今は何より実働部隊だ。現場で動ける人間をかき集めなければ巨大事業は進まない。金勘定と交渉事はお偉方の仕事だ。
そこで支部創設なんてどうすれば良いのかロボオに聞くと、流石にそれは管轄外だからよくわからない。おそらく本部がやる事だろうと。じゃあ本部は何処にあるのか聞くと、サンドスチームだと言う。あんな移動要塞が本部とは思わなかったが、もしかして軍隊の本部もあるのかと聞けばあるらしい。なお、軍隊の場合は本部ではなく司令部だと訂正された。
「ただ、ユニオン本部へ働きかけるとなると一職員の私では……せめて支部長クラスにならないと」
「う〜ん、ここの支部長にお願いするのは死んでも嫌だし、今日顔面にタブレット叩きつけたとこだしなぁ。おっと、適任者思い出した」
「矢破部ですか? ヘッドですか?」
「いやいや、それよりもっと良い人材だよ……」
…………
と、この辺り迄はしっかり記憶しているが、気づいたら隣に店員の女の子にお酌されているし、アフロも一緒になって飲んでいるし、場面場面を思い出しはするが、その後はよくわからない。
“明け方まで飲んで女の子はとっくに帰ってさぁ店閉まい、ってなってロボオ様はユニオンの寮にいるからそこまで錫乃介が送る、と言ってユニオンに辿り着いた所で二人とも力尽き、通行の邪魔だったので職員に廃材置き場に捨てられて今に至ります”
そっか、良かった良かった。まだ常識の範囲内だ。
“どこがですか。凍死するかもしれないんですよ”
目覚めたら知らない男の足を枕にして寝てるよりマシだ。
あん? って事はそこに転がってるドラム缶は……
“ロボオ様です”
そっか、とロボオを蹴り起こして施設内に入り、ロボオが使ってる部屋のコンクリート床に転がってタブレットを借りて色々閃いた事を書き込みをし再び寝た。起きた時にはもう夕暮れだった。
クッソ、身体いてぇな。なんで打ちっぱなしコンクリートなんだよ……
理不尽な怒りが込み上げるがどうしようも無い。
いつまでも職員じゃない人間が寮内に居るのはあまり宜しくないということでユニオンを出る。
そのまま近くの空き地にテントを張ってから、サウナに行って汗を流す。
二日酔いの時はサウナに限る。頭が吹っ飛びそうになるくらい気持ちが良くなる(作者注:二日酔いの時は体内の水分が極端に低下している為、サウナなんかに入ると熱中症や脳梗塞のリスクが爆上げしてそのまま天に召される可能性もありますので真似しないように!)。
食欲は無いのでサウナで販売していた冷たいラッシーを飲む。ラッシーを飲んだらカレーが食べたくなったので、屋台でチャパティとダールタドカという豆カレーを買って、テーブル代わりになっているケーブルドラムで食す。
ヒヨコ豆とかレンズ豆がたっぷり入っていてクミン、クローブ、シナモン、カルダモン、などなどスパイスの香りが食欲をそそる。このカレーだけでも栄養価は抜群だが結構辛い。チャパティは薄いプレーンのピザみたいなものだ。これをカレーに付けて食べると丁度良い。
あー、二日酔いにはインドカレーだな。スパイスが身に染みる。ラッシーも最高だな。
“あの、もうお金がありませんよ。明日はいい加減働いて下さい”
んな事わかってるけどよ〜ジャノピーはまだ修理中だし、どうやって稼ぐよ?
“とりあえずユニオン行って野良犬退治でもゴミ拾いでもドブ掃除でもして下さい”
はぁ〜またそっからか。
“ロボオ様は新宿に向けて出発しましたが、上手く行くと良いですね”
いくさ。USDビル内のプランテーション。あの技術はこの辺りに無い。あれだけの施設に勝る農場も無い。屋内プランテーションの技術者も居ない。
なら、そのノウハウを売ればいい。何も植物資源の産業化を待つ必要は無いんだ。
そう、錫乃介が昨夜思いついたのは、新宿USDビルで見た屋内プランテーションだった。
新宿では農産物を始め鶏肉鶏卵それらの加工品等、意外な程に食材が充実していた。過去には飢餓に苦しんでいた時代もあったらしいが、サロットルの改革によって慢性的な飢餓からは脱却。地下に住む底辺の住民達も飢えないように食料品の配給を可能にした。
農産物だけではなく、畜産物やその加工品まで屋内施設でやるノウハウは間違い無く他の街でも需要があるものだった。
更には新宿のプランテーションで作られた産物や、前時代より大量に残る服飾品や宝飾品も直接交易品にした方が良いかもしれない事も含め、プラントノイドの排除をする前でも、すぐに現金化出来る可能性がある事柄を二日酔いながら書き留めたタブレットをロボオに渡していた。
そして俺はというと、ポルトランドへ行く為の路銀稼ぎだわ。
“前みたいにキャラバンがあれば良いのですが、そうタイミングは良く無いでしょうしね。ポルトランドへ向かうのは矢張りジョドー様ですか?”
そ、困った時のジョドえもんさ。
テーブルドラムの真ん中では煌々とオイルランプが光り、二日酔いから持ち直してきてニヒルにニヤつく錫乃介の顔を照らす。その灯に誘われ様々な虫が集まって来ていた。
残金50c
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます