第2話

男の案内で小さな町に着いた。


町に着いた頃にはもう日が暮れかけていた。


男に案内されるがままに町につくとすぐに酒場につれていかれ、俺たちは酒場のカウンターで一杯やることになった。


俺達はビールで乾杯し、色々な話を聞くと、俺を助けてくれたこの男はジョニーという名前で、この町の保安官をやっているのだとわかった。

ジョニーの親父も保安官だったこと。その親父が亡くなってジョニーがこの町の保安官を受け継いだのだという。

そしてパトロールをしている時に道で倒れている俺を見つけたということのようだ。


そしてジョニーから、この町のことやジョニーのことなどを俺の知らない情報をあれこれと聞いていると、後ろの方から怒声が聞こえてきた。


「イカサマだぁー!」


「ふざけるな!てめぇがヘボなだけなんだよ!」


どうやら酒場の隅のテーブルで行われていたポーカーの客同士のトラブルらしい。


「この野郎ぶっ殺してやる!」


「かかってこいブタ野郎!」


金銭のからんだ話なのもあり、かなり興奮していた。

そんな二人の間に割って入っていったのがジョニーだった。


「おい!なにやってるんだ!止めろ!」


すると、さっきまでエキサイトしていた男達もジョニーの登場により。しぶしぶと喧嘩をやめて、別々に酒場から帰っていった。


「すまなかったな話の途中で。」


事を無事に収めたジョニーはそう言って、俺のいるカウンターへ戻ってきた。


カウンターにいるマスターは感謝の意をジョニーに伝える。


「ありがとう。喧嘩を止めてくれて、助かったよ。さすがジョニーだ。」


どうやらこの町ではジョニーは皆から厚い人望と尊敬を持って接されている存在らしい。


「立派な仕事だな」


俺はジョニーに感心していた。


「いやぁそんなこともないさ、牛飼いだって立派な仕事だよ」


と言って俺の肩をポンと叩いた。


「牛飼い?」


と俺がどういう意味だ?という表情で聞き返すと


「ああ、違ったか?」


なるほど、どうやらジョニーには俺が牛飼いに見えたらしい。

確かにガンベルトを巻き腰に拳銃をぶら下げながら生活しているこの世界では拳銃どころかガンベルトもしていない俺は牛飼いに見えたのだらう。

この世界にいる今の俺は誰が見てもヒットマンには見えない風体なのだろう。


そのことが少し可笑しくなって、俺はフッっと笑った。


「というか、お前は記憶喪失だったな?仕事も何していたとか覚えていないのか?」


「ああ、そうだな。覚えていないみたいだ」


ジョニーの問いかけに俺は、最小限の情報で答えた。


そもそも自分で自分をヒットマンだと発表する者もいないが、俺がそういわなかったのはヒットマンという職業に嫌気がさしていたからなのだろう。

この世界では人を殺めたりするような事はせずに生きていきたいと思っている。


出来ることなら拳銃も持ちたくは無い。

しかし今まで四六時中持っていた拳銃を、この西部劇の世界で手放そうとしているとは皮肉なものだ。


しかしそうありたいと思っているのが俺の事実なのだ。

ジョニーの言ったように牛飼いにでもなってみようか?牛飼いの仕事は俺に務まるのだろうか?


そんな考えをジョニーと話していると、外から馬の声と銃声が聞こえてきた。

ジョニーや俺を含め酒場の全員に緊張が走り、先程まで活気のあった酒場の皆は一気に静まり返り、酒場の扉のほうに注目を向けた。 


すると酒場の扉がギィっとゆっくり開けられて、明らかに異質な雰囲気の男が登場した。








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