第50話 婚姻の儀の準備とバカンスの準備

2月に入り王都での生活が始まった。


600年ぶりに俺達が現れて結婚することになったので王都では大騒ぎになっているようだった。でもみんな自重してくれているのか、囲まれるような騒ぎにはなっていない。少しは王都の生活も楽しめるかもしれないな。




何度か王宮に呼ばれることがあった。


式を行う場所の確認とパレードの設定などの打ち合わせがあった。




王都には大聖堂があるが、抑々、俺やキュリアが神扱いなので神に誓う儀式などないのだ。大聖堂に入ったら祭壇に祭り上げられそうになったし、式も祭壇の上に立つ事に為りそうだったので、丁重にお断りした。神扱いは止めて欲しいのだけどなぁ・・・


そこで神の結婚を寿ことほぐ名目で王宮の大広間で行うことになった。大司教と国王様が立会人となり式が進む事になる。




パレードは、式の前後で運河をゴンドラに乗って行うことになった。通過場所は、まだ決まっていないがメイン運河が中心になるらしい。交通規制の問題も有るしなかなか決めるのが大変な様だ。


また婚姻の儀の前夜祭と後夜祭もおこなうことに決まった。まぁ、俺たちの結婚をダシにお祭りしたいのだと思うけどねぇ。




ある程度の予定が決まると少しは時間が出来るようになってきた。


まぁ、昼の部と夜の部は相変わらず続いているが、まだ受胎確認できていない。


ハニーについては、又聞きではあるが、大分お腹の方も大きくなってきているそうで、そろそろ安定するだろうとの事だった。




王都に来て2週間くらいたった頃にローレンスさんが契約の為にやって来た。


 「ケミン様、ご機嫌麗しく・・・」


「そう言うのは良いから、普通に話してよ。」


俺はローレンスさんの言葉に被せる様に言った。ローレンスさんはゴモゴモいっている。




 「解りました。ケミン様の使われた金属工房に問い合わせたら何時でも量産できるとの事でしたよ?ケミン様よりお許しが出たらすぐにでも生産できるとの事でしたが・・・」


「え?精密加工とか有るからそんなに簡単に出来ないと思うけど?」


 「精密加工の部分もミラ様からきちんと伝授されているそうですから、問題ないとの事です。」


おおー?マジか・・・俺が思ってたよりもかなり優秀な職人集団だったのか。俺がダメダメなだけかな?まぁ、俺は機械屋じゃ無いから良いんだけどね。




「それなら船外機の方は大丈夫そうだね。問題は船の改造の方かな?」


 「その事なんですが、一度船の方を見させて頂きたいのですが?大丈夫でしょうか?」


「いいよ!だってそれが無いと動かせないもの。今から見にいこう」


そう言うと俺はローレンスさんを連れて船に乗り込んだ。




先ずは運転席に案内しジョイスティックなどの説明をする。


船外機とジョイスティックはミスリルのワイヤーで繋がっている事、スロットルは魔法石とミスリルワイヤーで船外機の風の魔法石に繋がっている事、前進行進はジョイスティックを押し込んだり引いたりしてギアを切り替えている事、ジョイスティックには魔法陣が有りエナジーの流れを調整している事などだ。


ローレンスさんは、細かくメモを取っていた配線図なども書いている。




 「魔法陣はどの様なもので?」


「エナジーの流量調整と方向を決める魔法陣だよ。書き方はラヴォージェに後で聞いて」


 「ラヴォージェ様ですね解りました。ミスリルのワイヤーですか・・・此れはどの様にして加工するのですか?」


「ドワーフに加工技術が有るみたいだよ?俺もミラに作って貰ったから。量産するならドワーフの集落に頼んだら良いんじゃないかな?」


俺は、ドワーフの集落の詳しい場所なんて知らないけどね!だって俺が森の中を探索した時には、見つからなかったんだもの!北の方に鉱山が有るらしいけどねぇ。




 「成程、ドワーフですか、早急に訪ねる事にしましょう」


「え?ローレンスさん集落の場所しってるの?」


 「ケミン様の森の中ですよ?池から北方に行く道が有ります。遠いですが北に鉱山が有るのでそこに住んでますよ」


「マジか・・・そんな道知らないけど・・・」


 「アハハ、ケミン様も知らない事が有るのですね。でもドワーフたちが発見されたのが300年前くらいですから仕方ないと思います」


そうだったのか・・・きちんと確認しないと駄目かもな・・・




その後は船外機の配線などを見てもらう。2台合わせて24カ所の配線図を記録していった。


「この船は船外機を2台使ってるけど小型の船だったら1台で間に合うし、もっと大型なら3台付けても良いよ」


 「船の大きさによって使い分けるのですね。判りました」


「その辺は再試作しないといけないかも知れないけど、小型ならジョイスティックの装置を無くして船外機を手動で操作する方が簡単かもね」


 「解りました。有難う御座いました」


そうして俺は、ローレンスさんと契約を結んだ。設計図は無償提供して純利益の5%を受け取ることにした。本当は1%も要らないのだけどねぇ・・・












契約が終わると本格的に暇になる。


そこで、バカンスに出掛けることにした。キュリア湖は目と鼻の先だし、みんなで遊ぶのは初めての事だった。


前日に出発の準備をしておく。


俺は、釣りのリベンジがしたいので釣り餌を準備することにした。


「ラヴォージェ、釣りの餌ってどんなのが有るの?」


 「湖で釣るのでしたら小魚や昆虫ですかな?また、其れに似せた疑似餌ルアーと言う物も有りますな」


「成程、何処で売ってるの?」


 「釣りの道具を売っている店ならどこでも売ってます」


「おおー!じゃー其処に行こう」


俺はラヴォージェを連れて釣り道具屋に向かった。意外と近かったよ。




小さな城屋敷を出ると通り沿いに運河が有り、太鼓橋を渡ると運河沿いにいくつもの商店が並んでいた。最もマリ川に近い所にその店は有った。マリ川からも買い物が出来るようになっている。


店内に入ると優しそうなお爺さんとお婆さんが迎えてくれた。




店内は釣竿がいくつも並んでおり、リールと言われるものや網なども売っていた。何に使うのか判らないものも有るし、服や長靴なども売ってる。勿論、餌や疑似餌も有る。


色々あり過ぎて目移りするな・・・何買って良いかわからないし・・・


「ラヴォージェ?どれ買ったらいいの?」


 「私も知識は有りますが、実際に釣ったことは有りませんので何とも言えませんな・・・」




俺達が困っていると優しそうなお爺さんが、ニコニコしながら声をかけてくれた。


 「お客さん達、釣りをするのは初めてですか?」




正確には初めてじゃないけど前回は釣れなかったので初めてにしておく。


「はい、釣り道具が船の付属品であったので、釣りを始めようかと思いまして、明日湖に釣りに行こうと思ったのですが、何を準備して良いか皆目わからなくて」




 「おおー成程、成程、では今の季節に合う釣り餌と疑似餌を見繕いましょうか、それにその格好だと大変ですから服も有った方が良いですな。道具箱やタモ網は有りますかのぉ?」


「針や錘を入れる箱は有りますね。網も有りました。釣り用の道具は一式揃っていたのですが餌が解らなくて」


 「ほうほう、では餌と服だけで宜しいですな。少々お待ち下さい」


そう言うとお爺さんは餌の辺りで色々準備してくれている。お婆さんは、俺の身体に合ったベストの様な服を探してくれていた。


ってお婆さんそこは子供用ですよぉ・・・俺38歳なんだけどなぁ・・・ガクン




暫く待っているとお爺さんが餌と疑似餌を持ってきてくれた。芋虫の様な餌だな、サイズはアゲハ蝶の幼虫くらいある。其れが数十匹入ってる。それと冷凍の小魚の様だ。疑似餌はキラキラ光る金属に針が付いたものと大きめの魚の形に針が付いたものだった。


 「これだけあれば1日くらい釣れますよ。大きな魚の疑似餌は大物狙い様です。釣れると良いですなぁ」


「有難う、お爺さん。楽しみになってきたよ!」




そしてお婆さんも何着か色違いのベストとブーツを持ってきてくれた。


俺は緑色のベストを着てみたら本当にぴったりのサイズだったので吃驚した。ブーツもサイズを測った訳でもないのにぴったりだった。


「お婆さんピッタリだよ凄いね。ブーツのサイズも良く解ったね」


 「もう50年も釣り人を見てますからねぇ、一目でサイズは解りますよ」


そう言いながらもお婆さんは嬉しそうにしていた。




俺はカードでお金を払うと品物を受け取って異次元収納に入れてお店を後にした。


なにかケミカリーナ様?というような声が聞こえた様な気がしたが・・・

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