第48話 新年祭と王都に行こう


新年のお祝いは、ジェンナーでも行われる。ケミン達は、一度自宅に戻っていた。

街に残っていると大騒ぎになるからね。


モーターボートになったので帰るのも数時間で着くようになったし、此処からノンストップで王都迄1日で行けるようになった。朝ここを出発しても夜には着くが、勿論そんな無理はせず。一度ジェンナーの街に寄ってから王都に行くつもりではいる。


「明けましておめでとう。今年も宜しく 乾杯!」


迎賓館で家族全員と新年を祝った。豪華な食事と蜂蜜酒に林檎酒、スィーツも沢山準備した。

祭りが嫌いな訳では無いので、3日間自宅で新年祭をする。


然し、何故かローレンスさんとロザリンドさんが居た。

 「ケミン様、明けましておめでとう御座います、本年もよろしくお願い申し上げます。」

ローレンスさんから挨拶が有った。


「そんな硬い挨拶は良いよ、其れよりもなんでローレンスさんとロザリンドさんが居るの?」


 「うふふ、おめでとう御座いますケミン様。キュリア様からケミン様が起きて初めての新年祭ですから一緒に祝おうと招待してくださったのです」


ロザリンドさんからも挨拶が有り、嬉しそうにニコニコしながら話していた。


「そう言われてみれば、そうか初めての新年祭か、来てくれて有難う」

 「いやいや、ケミン様、此方こそ招待頂き有難う御座います。其れよりもあの船は何でしょか・・・」


ローレンスさんの顔色が変わり思い切り顔を近づけ言った・・・近いよ!


「あの船って?うちのヨットのこと?」


 「そうです!セイルもマストも外されているし、船尾に何か箱のようなものが追加されてましたよねぇ!」


「うん、セイルとマストは抵抗になるから外したよ。あの箱は船外機と言って、ヨットを航行させる道具だよ。」


 「どのように航行させるのですか!?セイルで風を受けずに如何やって航行するのですか!?」


ローレンスさんの声がだんだん大きくなってくる・・・


「あの箱にエナジーを流すと箱に付いてる、プロペラが回って船を動かすんだよ」


 「そんな道具の事は見た事も聞いた事も無いのですが・・・?」


「俺だって初めて作ったんだもの・・・ラヴォージェには好評だったよ。エナジーが節約できて速いって、ジェンナーから王都迄半日掛からなかったし」


 「ええええーー?ジェンナーから王都迄半日ですか!」


「そうだよ?朝一でジェンナーを出たら昼前には着いて、少し散策して帰っても陽が沈む頃にはジェンナーの街に戻れるよ」


 「その道具、是非、家で売らせてください!!」


「ええええ?あんなのもう作らないよ?船の方も改造が必要だし・・・2台作って1台5000金貨くらい掛ったんだよ?高過ぎて売れないと思うけど・・・」


 「其れは試作段階だから金額が嵩んだだけですよ。量産に入ればもっと安くなるでしょうから売れますよ」


「俺がもう作るの嫌なんだよ。面倒なんだもの・・・」


 「製造と販売は家でやりますから!設計図と販売権利を売って下さい!」


「仕方ないなぁ・・・売れなくても知らないよ?それでいい?」


 「勿論!必ず売れますから!」


そう言うと異次元空間から設計図を取り出して渡す。船の改造は設計図が無いので大まかに説明した。判らない所は試作の時に付き合う事にした。正式な契約は、王都の滞在時となった。


新年祭のはずが船外機の交渉の場になってしまたよ・・・










王都に行く日の前日、俺達は自宅を出発した。船で数時間の旅でジェーンナーの屋敷に着き、一晩過ごすことにした。


ジェンナーの街のアパートも外観が出来つつある、急ピッチで建設が進んでいる様だ。20棟もアパートが建てば、もう団地だよね。商店街も出来るみたいだし少し楽しみである。


次の日の朝には、ジェンナーを出発した。船着き場から出ると低速で移動する。朝の時間帯は荷物の積み下ろしをしている船や渡し船、貨物船が多く行きかっているのだ。高速で航行すると波が立ち他の船が転覆する恐れがある。


俺の船を皆が見ると一様に不思議がっている。其れはそうだよね。セイルの無い船が動いてるのだから。


船が少なくなっていくにつれて少しづつスピードが上がっていく。


街の外に出ると行きかう船も殆どなくなるので、全速前進!とラヴォージェに伝える。


全速に為ってもキャビンの中は安定している。このくらいの揺れなら船酔いするような感じでは無いな。


この前計算したら最大船速で時速38ノットだった。理論上では40ノット出るはずなんだけどまあ2ノットは誤差範囲だろうとした。


 「この船、本当に速くなったわよね。風を切る音が聞こえるもの」


キュリアが感心しながら言った。


「其れは俺がミラと頑張ったからだよねぇーミラ?」


俺はミラを膝に抱き、頭を撫でながら言った。ミラは嬉しそうにコクコク頷いている。


 「ケミンが頑張ったって言うとなんか卑猥な感じがするわ・・・」


「それどういう意味だよ・・・」


 「だって頭を撫でながら胸も揉んでるじゃない!やり過ぎよ!」


顔を真っ赤にしてわなわな震えながらキュリアはスリッパを投げた。そんな至近距離から投げたら避けられないだろ、パッカーーンっと俺の顔に当たった。イタイ鞭打ちになりそう


「ケミン君とキュリアの漫才はいつ見ても面白いねぇ・・・でも胸を揉むのはやり過ぎだよね!」


ベルも怒ってた。此方は頬を膨らませて目が尖ってるよ、2個目のスリッパがベルから飛んできた。だから近いって・・・パッカー―ンと逃げられずに受ける・・・HPが0になった・・・ガクン











俺が気を失っている間に王都に到着する。


王都の名前は、国名と同じケミカリーナである。なんでキュリア湖の湖畔なのにケミカリーナなんだよと言いたくなるが、キュリアが決めてしまったから仕方が無かった。


王都は、まさに水の都である。キュリア湖と本流のマリ川からの無数の運河で作られている。運河の周りには、商店街が広がり船に乗ったまま買い物もできる場所もある。乗り合いのゴンドラも有る。それぞれの家には、運河に直接出られるように家の1階が船着き場になっている。正に船が交通の要なのだ。


王城は、城壁に囲まれており、背をキュリア湖が控えている。正面には掘が有り、堀から城壁の高さは20mにも達する。所々突出した地形で城門を囲んでおり、橋を渡ろうとする敵を左右から攻撃できる構造に為っていた。城壁の突出部には見張塔が有り常に警戒している様だ。城壁の上部は通路になっており警護隊が移動できるようにもなっている。


王宮は、一際高い尖塔を中心に左右対称に建物が立っている両端には小さな尖塔が有る。


庭園も左右対象で所謂シンメトリーと言われる形になっている。こういう所を見ると中世ヨーロッパ諸国の城を思い出すよね。ここは大陸の東の辺境なんだけどねぇ・・・


何とかローレンス商会の本店に辿り着くと船を降りる。外観はバロック建築の佇まいで柱には綺麗な彫刻がなされている。


入り口には天使の石像も左右対称で存在していた。中に入るとどこかの大聖堂かと思われるよな天井の装飾に明り取りの窓が付いておりかなり明るくなっている壁も柱も綺麗な彫刻と装飾で正にバロック様式そのものだった。


ここは装飾品の品数が多く服は数着しかない。デザインの見本として置かれているだけなのだろう。綺麗なガラス細工や陶器の花瓶なども有る。ハニーの蜂蜜酒やエルフのシードルも有るし・・・何でも売ってるな!


カウンターに向かうとロザリンドさんが待っていた。


 「ケミン様、奥方様いらっしゃいませ。国王様から話は聞いておりますわ。ウェディングドレスとタキシードの採寸ですわね」


「こんにちは、ロザリンドさん今日はこっちなの?」

 「勿論、ケミン様方がいらっしゃるのですから対応は私がしますわ」


「そうか、行き来させて御免なさい。ジェンナーの街で採寸したら良かったね」


 「ウェディングドレスのデザインは此方の方が豊富ですから。奥様方がお気に入りになるデザインが見つからないと困りますもの、此方で採寸する方が良いのです」


「成程、有難う御座います、さっそくお願いできますか?」


 「先ずケミン様からお願いします。奥様方は確認のための採寸ですから後はデザインを選ぶだけなので早めに終わりますの」


そう言われて俺は、ロザリンドさんに付いて行く。別室に案内されるとお針子さん達がメジャーを持って控えていた。俺は白衣を脱がされてTシャツとジーンズになる。


因みにジーンズはLevi's 502だ。俺は此方の方が好きなのだ。


両腕を左右に広げて採寸が始まる。お針子さん達が素早く計測していく、さすがプロだな!動きに淀みがないよ。俺の採寸は10分ほどで終わる。その後はタキシードの色とデザインだ。


俺は黒とノーマルで良いと言ったのだけど刺繍を入れましょうと言われた。刺繍位入っても良いかと思い了承して外に出た。


次に奥方たちが入って行った。


メインはデザイン選びなので直ぐに出てくるのではと思っていた


 「ケミン様、指輪の方が完成しておりますので別室ににおいでください」


「もう出来たのか、見せて欲しいな」


俺はロザリンドさんに付いて別室に入る。


 「12個の指輪で御座いますご確認ください。」


「おおー!みんな綺麗に出来てるね!奥さんたち喜ぶかな?」


メインの石の周りには引き立たせるための小さな宝石が付き白金プラチナの指輪になっているそして細かい装飾も付いている。


 「大変お喜びになると思いますよ。お納めください」


「全部でいくらになるのかな?」


 「840金貨程ですが、800金貨で良いです。結婚のご祝儀だと思って頂ければ、うふふ」


「解りました。有難う御座います」


俺はカードで支払いを済ませると異次元収納に指輪をしまった。


 「服の方は、今月中旬には出来上がります。出来上がりましたらご自宅にお持ち致しますね」


「宜しくお願いします。服も楽しみなんですよ」


程無くして奥方たちの採寸とデザイン選びも終わり帰路に着いた。


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