第26話 夜のお話
いやはや、何処の貴族の屋敷だよってくらいの建物が目の前にある。
ここに住むのか・・・広すぎて迷子にならないか?
ラヴォージェがメイド達を連れてやってきた。もう完全に執事になってるよ。
エルフのメイドを選抜したらしい十五人程いるな、この屋敷の広さだとこのくらいの人数は必要なのだろう。其れに俺の専属メイド兼奥さんのヒュパさんとメリトさんで十七名か・・・
とりあえず屋敷に入るか、奥さん連中は部屋決めしてるみたいだな。
「ケミン様、お部屋に案内いたします。」
ヒュパさんが近寄ってきて俺を部屋まで案内してくれた。もう場所の把握してるのか、メイドって凄い!俺、確実に迷子になる自信ある。俺の部屋は3部屋に別れてる寝室にリビングと書斎みたいだな・・・
本が一杯有るけど何処から出したんだ?てかラヴォージェが作ったのか?芸が細かいな・・・
俺は本を一つ取って読んでみた。ちゃんと文字が書いてあるし、精霊魔法と召喚魔法って書いてあるのか。
魔法の指南書みたいだな、後でじっくり読んでみるか。
後は、業務机と椅子、何処の社長室だよって感じの椅子と机だな俺の身体の事考えてないだろ・・・
こんなに大きい椅子に座ったら小学生社長みたいになっちゃうだろう・・・此れ絶対使わないな。
リビングは、迎賓館と一緒だなバルコニーにも出られる様だ。
最後は寝室だけど、ベッドの大きさが半端ない。これに寝るのかよ!下りるのに時間が掛かりそうだぞ。
一通り見て廻るとリビングのソファーに腰かけた。
すると直ぐに紅茶が出てくる。本当に手際が良いんだよなぁ、もうメイドさん無しでは生きていけなくなりそうだよ。
「私はずっとお傍におります、安心してください」
「ありがとう、今日の夜は、ヒュパさんからで良いのかな?」
ヒュパさんは恥ずかしそうに俯きながらハイと小さく答えた。
俺がゆっくり紅茶を飲んでいると扉がノックされ外から声が掛かった。
「夕食の準備が整いましたのでお迎えに参りました」
「直ぐに行くよ」
俺が立ち上がるとカップがすぐに片づけられた。そして扉も開けてもらった。手動だけど自動ドアだよ!
外にはメリトさんが待っていて後を付いて食堂に着く。女性陣はもう席に着いていた。
「あれ?ハニーは?」
「ハニービーは通い妻よ。子供産まなきゃいけないもの」
キュリアが教えてくれた。
「ああ、そうか。でもそうすると毎回違うハニーが来るって事になるの?」
「ハニーの順番の日は同じハニービーが来るらしいよ、僕たちだと見分けがつかないけどね」
今度はベルが教えてくれた。俺も見分けは付かないよ!全く一緒だもの・・・
俺が席に着くと食事が運ばれてくる。今日も豪勢な食事だな。
そう言えば食材を沢山貰ったのだっけか。今日のメインディッシュは牛肉みたいだな。
俺はゆっくり味わって食べた。美味しい!
食事が終わると風呂に入った。
本当に岩風呂を移設したんだな。ブランコはないけどね!やっと普通の風呂になったよ!
お湯にゆっくり浸かっていると誰かが入ってきた。またキュリアが押し入って来たのかと思ったらヒュパさんとメリトさんだった。メイド服のまま?腕まくりはしてるけど・・・
「ケミン様、お背中をお流しいたします。」
「其処までしなくて良いから・・・」
「此れも仕事ですので、仕事を無くさないで下さい」
そう言われてしまうと断れなくなるな。俺は仕方なく風呂から出て体を洗ってもらう。前と後ろにメイドさんが、これ恥ずかしいぞ・・・たぶん俺の顔は真赤になってるな。
背中を流し腕を洗ってもらい体中丁寧に洗ってもらった。此れ毎日やるのか?逆に毎日洗って貰ったら慣れるのかな?
洗い終わると、ヒュパさんとメリトさんは出て行った。俺はもう一度湯船に浸かってゆっくり温まってから出るとヒュパさんとメリトさんが待ち構えていて体をタオルで拭かれ服まで着せられた・・・
こんなの慣れてないよ!一般庶民だった俺の感覚だと、これは一生慣れそうもないよ!
脱衣所から出ると今度はキュリアが待っていた。かなりご立腹の様子でわなわな震えている、此れは噴火しそうだ・・・
「ケーミーンー!メイドとは一緒にお風呂に入るのね!なんで私とは入らないのよ!」
「ヒュパさんとメリトさんの仕事だって言う・・・」
言い終わらないうちにパッカーーンとスリッパで叩かれた。だからどこに隠し持ってるんだよ!
「次は私も入るからね!」
「いいよ、もうキュリアと一緒に入っても大丈夫だよ?結婚するんだし・・・」
「け・結婚・・・」
今度は別の意味で真赤になってるキュリアそしてバタバタと走り去っていった。と思ったら戻ってきて言った
「あ・愛してるわケミン」
「俺も愛してるよキュリア」
また真赤になって今度こそ走り去っていった。何だったんだよ!スリッパで叩きに来ただけかよ!
慌ただしいなぁ全く。
俺は皆の集まっているリビングに行く、俺の部屋とは別に一階の食堂の隣にリビングがあるのだ。
「やっとゆっくり出来るね」
俺はソファーに腰を下ろすとそう言った。この家が今日一日で出来たとは思えないな
「今日は慌ただしかったよねぇ、それにしても凄い家だよね」
ベルが本当に吃驚したように言った。
「だよなぁ、正直に言うと迷子になりそうだよ」
「アハハ、本当だよね、僕は解り易い様に端の部屋にしてもらったよ」
話しているとラーニャがちょこんと横に座る。もう武装はしていなくて、いつものヒョウ柄の装いだ。
俺が頭をなでてやると嬉しそうに目を細める。
「ベルの相棒は、もう龍舎に入ってるの?」
「うん、燥いで走り回ってたよ。まだまだ子供だからねぇ」
「成程ねぇ余程、嬉しかったんだろうね」
「ところでさ、飛空蜥蜴って如何やって作ったの?」
「あの子は召喚したんだよ、召喚魔法が有るだろ?其れを使ったのさ」
「あー、確か書斎に本が有ったな、精霊魔法と召喚魔法とか」
「後で読んでおくといいよ、役に立つよ召喚魔法って」
話していると、ラーニャが寄り掛かってきた。目もうつらうつらしている。
「ラーニャ、眠いなら自分の部屋に行って寝なよ」
「ん、解ったにゃ」
一言いうとメイドの一人が、ラーニャを連れて行ってくれた。
「俺も部屋に戻るよみんなお休みなさい」
メリトさんに部屋まで案内される。俺が部屋に入ると
「ケミン様お休みなさいませ」
と言って部屋から出て行った。
暫く、リビングで寛いでいると扉がノックされた。どうぞと声をかけるとヒュパさんがエルフの服を着て入ってきた。この服の姿初めて見るな。ちょっと新鮮。
「いらっしゃい、少し話す?其れともすぐに始める?」
「時間が掛かる事ですので直ぐにお願いします」
「解った、じゃー寝室に行こうか」
俺はヒュパさんを連れ寝室にはいる。
「それじゃあ服を脱いでベッドに横に成って貰えるかな?」
ハイと小さく頷くと恥ずかしそうにしながらエルフの服を脱ぎ下着姿になった。そして、ベッドに仰向けに寝てもらった。
俺は、ヒュパさんの横に座ると両手を軽くお腹にあてて少しずつエナジーを流し始める。
俺は白衣を着てるから、医者が診察してるように見えるかな?
手から青い光が出始めるとヒュパさんは、はぁぁと言った
「大丈夫?痛くないかな?」
「痛くありません。温かくて気持ちいいです」
「其れならよかった、もう少し掛かりそうだから少し我慢しててね」
俺はエナジーを流しながら言った。
ヒュパさんは本当に気持ちよさそうで薄っすら上気した顔で目を瞑っていた。
三十分くらいエナジーを流していると青い光が消えエナジーが流れなくなった。これで今日は終了なのだろう。一度くらいでは準備文様は出来ないようで白い肌のままであった。
「今日は御仕舞だよ、お疲れ様でしたヒュパさん、起きられるかな?」
「は・はい、大丈夫です。ケミン様もお疲れ様でした。有難う御座いました」
そう言ってゆっくり起き上がると服を着て立ち上がる。
「それでは失礼いたします。ゆっくりお休み下さいませ」
そう言って俺の部屋から出て行った。
悪戯なんてしないからね!
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