猫と私

バブみ道日丿宮組

お題:猫の出会い 制限時間:15分

猫と私

 実のところ、飼い猫に世話という世話をしたことがない。

 だというのに、

「ごろごろ」

 私に懐いてる。

「にゃー」

 この猫は私が赤ちゃんの頃からの付き合いだと親は言ってた。

「よしよし」

 そうなると、少なくとも14年は最低生きてることになる。随分な御老体だ。それなのに歩く様や、飛び跳ねる姿に老いは見えない。運動神経のない私のほうが、よっぽど年寄りに見えてしまうぐらいに快調。

「ほらぁチュールですよ」

 差し出したチュールを上手に両手足を使って美味しそうにかぶりついてる様子を眺めてると、そんなに美味しいものなのかと疑問に思う。

 生き物によっては、自分自身以外を食べたり、卵を食べたり、木を食べたりと様々だ。

 猫というのはこのチュールを食べるために生まれてきたのかもしれない。そんな特別なものを作る人間ってやつは罪作りなやつ。人間は劇薬を作り過ぎかな?

「お、あんたたちも食べる?」

 部屋の入口で猫が数匹、こちらを見つめてた。

 子猫から、大人猫まで種類豊富。もともとは捨て猫であったり、この御老体の子どもであったりと、血の繋がりがあったりなかったり。それでも兄弟姉妹のように彼らは過ごしてる。

「これでいいのかな」

 親がいつも入れてあげてる皿にちぎったチュールを盛り付けて、床に置く。

 数秒も待たずとして、猫たちがやってきてちゅるちゅると吸い付いた。

「なでなで」

 食べてるときは本当に大人しい。

 くすぐっても、撫でても、怒らない。

 私は勉強の邪魔されて怒ってばかり……猫以下の存在かもしれない。

「ほんと好き勝手できていいよね」

 私はできないことをいつも親に怒られてる。猫たちはそんなことはない。多少怒られることはあっても、罰を与えられることはない。

「……」

 いっそのこと、私も猫になれたらいいのに。

 そうすれば、きっと親にも、猫たちにも愛されるに違いない。

「はぁ……勉強しよ」

 猫たちがチュールに夢中になってる間に課題を少しでも進めよう。

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猫と私 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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