喧嘩の後

バブみ道日丿宮組

お題:高貴な栄光 制限時間:15分

喧嘩の後

「大体いつも君はそうだ、どうしてもっとはやく人を頼らない!」

 叫ぶ少女の足元には、気づいた少年が寝転がってた。

「……喧嘩なんだ。喧嘩は一人でするものだろ」

「相手は5人だったじゃないか。もはや喧嘩なんてものじゃない。リンチだ、暴行だ!」

 しゃがみ込むと、ゆっくりと少年を起こす。

「でも、よかった。頑丈さが君の取り柄だ」

「はは、ありがとう」

「病院にいくぞ。見えないだけでどこか壊れてるかもしれない」

 少年を立たせると、肩を貸す。

「ほんとは救急車を呼びたいところだが、そういう柄でもないんだろ? まぁ、路地から出て他の人が呼ぶかもしれないな」

「そういうこともあるかもしれない」

 少女からため息が漏れる。

「もっとマシな生き方をした方がいい。僕が心配しなくてもいいやり方を見つけてくれ」

「……」

 ゆっくりと歩き出す二人。

「仲間が一人入ってたから君を見つけられた。その一人がいなかったら、君は死んでただろう」

「殴られただけじゃ死なないよ」

 少年は誰が内通者なのか考えたが、答えは出なかった。

 誰しもが少年を強打し、血反吐を吐かせた。どこにも優しさという概念は存在しなかった。それは少女でも同じことだ。

 本来であれば、喧嘩が始まる前に止められれば、少年が傷つくことはなかった。内通者に少年の仲間になってもらえれば、多少なりとも喧嘩は有意差を得れたかもしれない。

 だが、なかった。

 少女は少年に傷ついてほしくないと願う一方で、傷ついて学習して欲しいと願ってた。

「全く男というのはどうして喧嘩ばかりするのだろうか。理解できないよ。殴り合いたいのであれば、ボクサーにでもなればいい」

 またため息が吐かれる。

「君と付き合ってもこんなことばかりじゃ、僕は愛想を尽かしてしまうよ」

「……そっか」

 寂しそうに少年は微笑んだ。

「なんだ。本当にそうなって欲しいのかい? ご相悪さま、そうなってはあげないよ。君は一生僕のもの。僕の伴侶なんだ」

 少年を担いでいない少女の左手が少年の頬を撫でる。

「ありがとう」

「例を言うくらいならもう二度とこんなことはしないでくれたまえよ」

 そうだねと少年はつぶやくと静かになった。

「早速救急車を呼ばれたな。なら、もうここでいいか」

 路地裏から表へ出ると、スーツ姿の男が少女たちに近づき携帯を取り出した。

 それを見て、少女は少年を床に座らせた。

「全く制服も血だらけだ」

 白いワイシャツは少年の血で真っ赤に染まり上がってた。

「まぁいいさ。今日はもう学校にいく暇もないだろうし」

 警察の厄介にもなるだろうしと、少女は空を見上げる。

 そこに太陽がさんさんと輝いてた。 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

喧嘩の後 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る