愛のご飯

バブみ道日丿宮組

お題:愛、それは食卓 制限時間:15分

愛のご飯

 女性は両手を広げる。

「今日の献立はどうかしら?」

「どうって、これ生物じゃない?」

 男性はそれを見て、呼吸をつまらせる。

「そうね。頭、舌、乳、性器、眼、鼻。どれも体の1パーツ」

 1つ1つ女性が指差す。

「そういう意味じゃないんだけど……」

「ひょっとして人のものだと思ってるの?」

 姿かたちはどれも人のものと相違ないように男性には見えた。

「……うーん」

「人のものだとしたら、この性器なんてまさに偽りじゃない。完全状態のあなたのものより4倍は大きいし、長いわ。それに冷たい」

 男のペニスと思わしき物体を女性は手にもつと、しこしこと指に輪っかを作りその中を上下させる。

「……酷い言われようだ。そして冷たいのはもう死んでるからだよね? っていうか、熱してないの!?」

「冷たいのは調理した後に冷蔵庫に入れていたからよ。酷い言われとあなたはいうのだろうけど、あなたのは私の身体にたくさんの傷跡を刻んだの。もうあなた以外じゃ反応しないのよ? 責任とってもらえるかしら?」

 女性はぺろりとペニスを舐めた。

 その仕草にびくんと思わず、反応させた男性は、

「えっと……言葉から察するにそれって浮気してきたよってこと?」

 と問いを作る。

「いえ、この剥ぎ取った動物に押し倒されて犯されただけよ」

「だ、大丈夫だったの?」

 自分がいない間にそんな状況になっていたとはと、慌てる男性に、

「だから、こうしているんじゃない。解体までされてるのだから、平気といえるでしょう」

 女性は笑いかける。

「そ、そうなのかなぁ? 病院一応行ったほうがいいんじゃない? ほら、なにか病気もらったかもしれないし」

「動物に犯された私は愛せないって意味かしら?」

「そういうことじゃないよ。どんな姿の君であっても愛せると誓えるよ」

「なら、いいじゃない。何が付与されようと私は私ということよ。でも、そうね。感染症になるのは得策じゃないから、車を用意してもらえるかしら」

「そうだね、いくなら早いほうがいい」

 男性は女性に近づくと、車椅子のハンドルを手にとった。

「それにしても、足が不自由なのによくもまぁ狩りができたものだね」

「そこはあれよ。相手の欲望が解き放たれた後だったからよ」

 満足そうに女性は笑った。

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愛のご飯 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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