嫌いなもの
バブみ道日丿宮組
お題:僕の嫌いな人 制限時間:15分
嫌いなもの
僕は不幸な子どもなのだろうか。
確かに天涯孤独の身になって、親戚の家を転々と過ごしてきた。友だちもいないし、家族はいない。ずっと一人だった。誰も側に寄ろうとする人はいなかった。
両親が残してくれた膨大な遺産……それを狙う人は寄り添ってこようとしたが、小学生で既にそういうのがいけないことを理解してた僕は全てを拒否した。
その結果、最終的に孤児院に住むことになった。
そういうことをいろいろ考えてみると、確かに不幸ではあるかもしれない。
「……」
ただ、本だけはどこにいっても友だちであり続けた。
図書室、図書館。
とても神聖な香りが漂ってる。
自分だけの空間を脳内に広げることができた。
だが、それも異臭という悪によって、現実に戻される。
「……」
新聞を読む年寄りのおっさんか、おばさん、あるいは若そうな人。いずれかの誰かが毎度のことながら異臭を放つ。
それは体臭に始まり、タバコ臭、加齢臭、イカ臭。
僕はそういった匂いで鼻水が止まらなくなる。一度始まると、最低30分は流れ続ける。そのおかげで、トイレの洗面台にい続けなければならない。
親切にしてきた親戚や、ヤンキー学生、裏がありそうな役人。そういったものは耐えきれた。好きとはいえないが、嫌いではなかった。
だが、異臭を持つものだけはダメだ。
嫌い。
自分の匂いも好きというわけでもない。
本のカビ臭さは平気なのに、どうしてか人の放つ臭いには人一倍敏感だった。
「……んっ」
大分収まってきた。
腕時計を確認すると、もうすぐ図書館が閉まる時間帯だった。
トイレから出てみれば、異臭はしなかった。
その人物がでたからか、あるいは消毒用エタノールがまかれたか。
何にしても読書を続けることはできない。
本を元の場所に戻すと、図書館を後にした。
嫌いなもの バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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