二人と一人

バブみ道日丿宮組

お題:計算ずくめの死 制限時間:15分

二人と一人

 時間通りで、決められた場所。

 たったそれだけのことで人は死ぬ。

「……さようなら」

 何度口にしたかわからない。

 列車にひかれてぐちょぐちょになる人体を見るのは気分がいい。

 どんなに酷いやつだって、中身はみんな同じなんだって理解できる。そして二度と罵倒を浴びせられることがないんだと思うと、すっきりした。

 これで3人目。

 そろそろ警察やら、鉄道員やらが、線路を警戒するかもしれない。

 でも、他にいい肉の引き裂き方を知らない。海に捨てたり、川に捨てたりするのは殺したという実感が得られない。

 赤ーー赤い血がみたい。

 まだ足りない。

 僕を否定する奴らは教室で今日も笑いあってる。

 仲間が死んだとしてもあいつらは笑い声をやめない。自分がその標的になってるとも思わない。

 僕が死を運んでくるとは思いもしない。

「……」

 今日この後、あいつらの一人に呼ばれてる。

 今度もまた肉体接触を求めてくるだろう。僕は欲求不満を解消するための道具なんかじゃない。

 大泣きした初体験は忘れることは一生ない。

 どれだけのものを飲んで、どれだけのものを受けたか。とても苦い記憶。

 そんな非道なやつらに躊躇はいらない。

「……」

 なにを仕込もうか。

 スタンガン、注射、ハサミ、ホッチキス、カッターナイフ。

 暴力に抗えるものを持っていこう。

 制服には糸……ピアノ線は脱ぐ時に自分で切ってしまうからダメだ。今から入手するのも困難。

 なら拘束を奪えるくらいのもの。

 タコ糸? 時間として数秒取れればいい。あいつらは油断してる。受け身でいる僕をひ弱だと思ってる。そこにすきがある。

「……ちゃんとやってよね?」

「……」

 もうひとりの僕(わたし)に問う。

 彼女は答えない。言葉は僕よりも先に失ってしまった。それでも心の闇は消えてない。

 だからこそ、従ってくれる。

 ゆえに今までができた。

 二人で一人。一人で二人。


 そうして僕は指定されたホテル前までやってきた。

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二人と一人 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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