第11話 凛空と千騎
悠楽が後ろに下がるのを確認して千騎に小声で話しかける。
「千騎、頼んでいい?」
「わかったよ。お前らの戦力じゃ戦えないみたいだし」
俺は千騎に体を一時的にを譲った。
「ここからは俺が相手だ」
怪物は千騎に驚いている様子だった。とても動揺している。
「ほら、どうした? 戦意喪失か?」
怪物は気を取り戻し、千騎に向かっていった。千騎は怪物を受け止め、吹っ飛ばした。
怪物はもう消えていた。そして違和感があった空間が元に戻った。
怪物の跡には俺が取り込んだ欠片と同じようなものが落ちていた。
「宝の持ち腐れ」
そして千騎はその欠片を潰して取り込んだ。
「り、凛空……?」
「いくつか来るけど、どうする? 自分たちでやるか?」
「え、えーっと……」
悠楽たちが悩んでる間に怪物が襲ってきた。
千騎を中心に魔法陣みたいな白い円ができる。悠楽たちのところまで円がかかる。もう逃げ場はない。そんなこと千騎には関係ないみたいだ。
千騎が拳を握りしめる。するとその円の中に入った怪物は一瞬でいなくなった。ってことは悠楽たちは……
悠楽たちの前には誰かがいた。そしてその人を中心に赤色の円ができていて、千騎の攻撃の効果を受けていないみたいだった。
そしてその人が千騎に斬りかかろうとする。悠楽が雷を放ってその人の動きを止める。その人は赤髪の女の子だった。
その女の子は悠楽の方を見てこう言った。
「わかんないの? 今こいつが何したか」
「急に出てきて、まず君誰?」
「どうでもいい」
「戦う? 君」
千騎がそう言った。
「ちょっとはさ、考えないの? 仲間っていうか、味方巻き込んでるってこと。それとも、仲間でも味方でもないって考え?」
「俺は信じてない。そいつらも、こいつも」
千騎は女の子を掴みあげる。
「君、怪物だと思ってたけど違うんだね。でも魔獣でもなく、人間でもない」
「うん、どれでもない」
千騎が女の子を降ろす。すると女の子が苦しそうな顔をする。
「これが目的か……」
後ろにいた悠楽たちも血を吐いたりしてる。
「お前ーっ!」
女の子が飛び上がって千騎に炎を発射する。千騎は手で抑える。びくともしてない。炎に隠れるように女の子が直接向かってくる。千騎の目の前で女の子がフードを被った悠莉に変わった。悠莉は千騎(凛空)の首を掴んで床に叩きつける。そしてこう言った。
「ほんとバカだね、信じられないのはわかるけど、攻撃は違うだろ。殺したりでもしたらお前が殺されるんだかんな。そこちゃんと覚えとかなきゃ。ね? ……」
最後が聞き取れなかった。そして千騎と俺は入れ替わった。
「はぁ……はぁ……何で……悠莉が……」
「暴れたから。つけといてよかった」
悠莉の横にさっきの女の子がいた。
「こいつは、千夏って言って、優多と同じ感じ」
「兄弟みたいなもんだよ」
2人はそう言った。
「大丈夫……じゃないな」
3人とも意識がなかった。
どこからか四足動物が2体現れた。悠莉に凄くなついているようだった。
悠莉は3人の血が出てるところに手をかざす。そしてさっき怪物の後ろにいた死体っぽい何かに近づいて同じように手をかざした。
悠楽たちの方に戻り、黒い方に悠楽、白い方に夏向、そして桜愛をおんぶした。
「凛空、いくぞ」
「あ、うん。おいてっていいの?」
「連れていけないだろ、2人で」
「あ、うん」
「気にすんなよ。こいつらの怪我はお前がやったんじゃない。それに治る」
「う、うん」
家の外に出る。
「凛空、悠楽か夏向、どっちか担いで」
俺は隣にいた夏向をおんぶした。そして悠莉は悠楽をおんぶし、桜愛をお姫様抱っこした。
張ってた膜を出て、警察関係者の車に3人を乗せる。
悠莉は警察の人と少し話をする。そしてその警察の人が指示して一斉に動き出す。
3人を乗せた車が走り出す。
「凛空、帰るぞ」
そう言って現場をあとにする。
「ここからは俺たちの仕事じゃないから。居ても邪魔なだけだしさ」
「確かに」
そして俺たちは駅へ向かった。
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