2、復讐心
七水と一緒に館内を歩き回る。
それから改善や指導が必要なのは指導したり改善を促したりした。
気が付いたらもう夕暮れであり。
俺達は会議室に戻ってから欠伸や伸びをしていた。
七水は今日の状況をノートに纏めている。
俺は邪魔しない程度に語り掛けた。
「文化祭近いしみんな忙しいな」
「それは確かにですね。先輩」
「この文化祭は基本的に恋人が出来やすいって聞くしな。共同作業が多いから」
「まあ私は先輩にトキメキませんがね。アハハ。先輩は先輩ですから」
「いやそれ地味にひっでぇなオイ」
俺の言葉にクスクスと笑う七水。
全くコイツという奴は。
でも忙しいとか大変とかなのは七水も、だな。
コイツ自身も相当、苦労しているから。
俺は.....労いの言葉しか掛けれないが、だ。
七水の実家は相当に貧乏らしいから.....。
それなりに大変らしいし。
あくまで風の噂程度に聞いた話だが、である。
まさかと思うが本人に聞く訳にもいくまい。
だから詳しくは知らないのだが。
「先輩って心から面白いですよね。ずっと思っていました。この長い付き合いの中で、です」
「面白いっていうか.....面白くしている、の間違いかもな。.....俺自身が結構辛い過去をしているからな」
「それで面白く居ようと決めたんですね。......流石ですね」
「辛い過去は過去だが.....まあそんな過去ばかりじゃない。お前に出会ったりとか。栗谷に出会ったりとか」
「ですか」
ああ。と答えながら俺は会議室の窓から外を見る。
さて今日も明日も準備だな。
夕焼け空を3回ぐらいこの部屋から見る計算になる。
明日はどんな日が待っているのだろうか。
思いつつ俺達はそのまま解散した。
☆
俺の親父は相当に横暴だった。
何が横暴かといえば母親では無い女を作って俺。
つまり息子をボコボコにするぐらいに、だ。
そんな親父に俺は復讐してから出て行ってから。
クローゼットに有る黒ずんだ血液付いた.....この木製の折れたバットを見ている事がよくある。
この木製の折れたバットは親父への復讐心の塊だ。
つまりこの木製の折れたバットは親父への怒りを忘れない為に置いてある。
この血液は誰のものかといえば。
俺のものだ。
このバットが俺に対して暴力を振るっていた象徴である。
「.....駄目だな。やっぱり怒りが湧いてくる。クソッタレだな」
俺は思いながら.....折れた血の付いたバットを収納する。
それから額に手を添えてから考える。
俺の人生はこれから始まる。
だから誰にも邪魔させない、と思いながら、だ。
「全く。.....何でこんな目に遭わなくちゃいけないのだろうか。息子が、だ。親は息子に対して愛を持つ筈なのに.....というかそれが基本だと思う。.....なのにアイツは俺を殺したしな。.....人格も」
最低の親だと思う。
母親は全然良い人なのに、だ。
世の中は狂っているよな。
俺は考えながら.....クローゼットの戸を見る。
そして.....窓から差し込む星の光を見る。
「母さん遅いな」
考えながら、でも仕事が忙しいんだろうな、と思いながら。
俺は、勉強するか、と思いそのまま勉強道具を出す。
そうしていると.....インターフォンが鳴った。
宅配便か?
「.....?.....栗谷?」
レンズを覗くとそこには栗谷が紙袋と鞄を持って立っていた。
俺は、???、と思いながらドアを開ける。
そして栗谷を見た。
栗谷はモジモジしながらはにかむ。
忙しいのに夜来てゴメンね、と言いながら、だ。
「いや。それは良いが.....どうしたんだ?」
「はーくんは勉強が苦手かなって思って来たの。これお菓子ね。勉強しながら休憩中にでも食べようかなって」
「サンキューな。.....確かに苦手だよ。今の範囲はな。テスト面倒だな」
「アハハ。前にやったでしょ?あれと同じで教えてあげるよ」
「そりゃ助かる。じゃあ宜しく頼むよ」
俺はそう言いながら笑みを浮かべつつ。
栗谷を部屋に招き入れた。
それから.....栗谷は直ぐにクローゼットを見る。
そこにはあのバットが眠っているが。
「まだ.....忘れてないの?」
「.....忘れられないよ。.....あの親父は。っていうか忘れちゃ駄目だしな」
「.....はーくん。部外者が言っても仕方ないけど.....復讐だけでは生きていけないよ」
「.....」
そうだな。
それは確かにその通りだ。
だから俺の行動はおかしいのだ、きっと。
だけどそれでも。
俺は忘れられないのだ。
この燃え滾る怒りを、だ。
「.....はーくん。犯罪だけは止めてね」
「.....まあな」
「.....はーくんが捕まるなんて私が最も嫌だから」
「.....有難うな。そう言ってくれて」
「.....当たり前だよ?心配してるよ?本当に」
「.....」
でもな栗谷。
申し訳無いが.....俺は。
許せないんだ。
あの男だけは、だ。
だからいつかぶっ殺すだろう。
母親を守りたいから、だ。
思いながら俺は冗談めかして去って行く栗谷を見ながら決意の元に拳を握った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます