幽霊さんの恋愛事情 ~「僕」と「彼女?」の物語~

華音 楓

春の陽気に誘われて、僕は恋をした。

「落としましたよ?」


『僕』と『彼女』が出会ったのは、何の変哲もない一コマからだった。




春うららかな火曜日。

僕は駅のホームのベンチに座っていた。

特にこれといって用事があったわけじゃない。


朝7時10分

通学・通勤のため、沢山の人がホームにやってくる。


その中で、真新しい制服に身を包んだ彼女がいたんだ。


彼女は友達と一緒にホームへやってきた。


「落としましたよ?」


僕の目の前でしゃがむと、彼女は落とし物のハンカチを拾って手渡してきた。


「あ、あり」

「ありがとう、お嬢さん。これお気に入りだったのよ。」


僕の後ろから手を伸ばしたおばさんが、ハンカチを受け取ってその場をあとにした。


女性を見送る彼女と僕は目があった。

一目で僕は恋に落ちた。

でも僕らは結ばれることは無い。

だって僕は…





地縛霊だから。

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