破壊の象徴 ~レオンハルト視点~
・・・・・・・・・・。
『メルティーナ』を
無論、アリアと行動を共にする為に教官達へ『専用機乗りは同じ班で固まって講習を受けるべきだ』と進言したのは言うまでもない。
その後直ぐに始まった
その途中でユイ嬢が
そして、いよいよアリアが講習を行う番となった。
驚く事にアリアが『メルティーナ』に乗るのは今回で三回目らしい。
しかも、これまでの二回は実戦だという。
私は、そんな彼女がどのようにして『メルティーナ』を駆るのか楽しみにしていた。
『アリア嬢、準備はよろしいですか』
『・・はい、大丈夫です』
アリアはジーク教官の通信に不安げな声で答えた。
『それではカウントゼロで開始します』
『五・・四・・三・・』
『速く・・・速く・・・・速く!!!』
アリアが可愛い声で独り言を呟いた直後、私は『メルティーナ』の機体に異変が生じ始めた事に気がついた。
ギュンギュンギュンギュン!!
ゴオォォォォォォォォ!!!
突如、機体表面の至る所が
全高二十メートル近い『メルティーナ』の機体全体から発せられるマナの奔流は、周りの
そして、黒紫に輝くマナの奔流を見て、私は
『っ!?あれは!!『
おそらく、アリアは今回の講習の結果が
その結果、無意識に自分の身体へ『ブースト』を発動したと思われる。
もしアリアの桁外れなマナ出力で発動した『ブースト』が、『メルティーナ』の術式によって
『邪神』の力を遺憾なく発揮して戦闘行動を行う『メルティーナ』の姿を想像した私は戦慄した。
『・・二・・一』
『っ!?アリア!!アリア!!今すぐ『ブースト』を解除するんだ!!』
私は必死に叫んでアリアを制止した。
『・・始め!!』
しかし、私の声がアリアに届かないまま開始の合図が放たれてしまった。
ババァァァン!!
『『っきゃああ!!』』
『くっ!!?』
直後、
『メルティーナ』が飛び出したことによって生じた衝撃は辺りを激しく揺さぶり、地面を激しく捲り上げながら巨大なクレーターを生み出した。
『くっ・・!!お兄様・・!!とてつもない衝撃ですわ!!』
『これが・・『メルティーナ』の力ですの!?』
それによって、『ウルディナ』と『フローレンス』が思わず機体の膝をついた。
『・・・っ!!』
多脚型の『アラクネ』は転倒を免れたものの、拡声魔導越しに聞こえる声は辛そうだった。
そんな中、私は必死の思いで『メルティーナ』の飛び出した方へと目を向けた。
『くっ!!なんて凄まじい衝撃・・っ!?あれはっ!?』
すると、いつの間にか『メルティーナ』の向かった先には
バァァァァァァン!!
そして、今もなお激しい衝突音と共に次々と新たなクレーターが生み出されていたが、肝心の『メルティーナ』の姿が
いや、
兎に角、それ程の高機動で『メルティーナ』は
これだけの速度で『メルティーナ』を動かしているとなれば、今のアリアに『ブースト』が発動しているのは間違いないだろう。
そして、『ブースト』によって体感時間が
『極大防御魔導』と猛烈な速度が乗った
そんな『メルティーナ』の打撃を真面に食らった
ドオオオオン!!
そして、『メルティーナ』が一際大きなクレーターを生んで停止した事で、漸くその姿を視認する事が出来る様になった。
『『ファイア』!!』
直後、『メルティーナ』が指先に炎を灯しだした。
ゴウゥゥ!!
『
そして、指先に灯した炎をクレーターの出来た大地の中心に目がけて放とうとする。
ゴウゥゥゥゥ!!!!
その時、私は『ヨークスカ』でアリアが放った魔導の威力を思い出した。
『アリア!!駄目だ!!まずい!!』
ゴウゥゥゥゥゥ!!!
しかし、私の言葉も虚しく、魔導の炎が猛烈な速度で放たれた。
『っ!!駄目!!』
魔導を放った後、漸くアリアも正気を取り戻したようだが、放たれた魔導はもう戻らない。
そして、目標地点に進むにつれてどんどん膨れ上がる炎は、瞬く間に地上へと着弾した。
ピカッ!!!
その瞬間、激しい閃光がコクピットの光魔導スクリーン一面を埋め尽くす。
『うっ!?』
その光に一瞬目が眩んだ私は思わず声を上げた。
ドオォォォォォォォォォォン!!!!
そして、着弾した『ファイア』の猛烈な爆風は、魔導の発動者である『メルティーナ』さえも飲み込んでいった。
『アリアーーーー!』
『アリア!!』
『アリアちゃん!?』
『お義姉様!!!!』
私達は爆発に巻き込まれたアリアを見て叫ぶ事しか出来なかった。
オォォォォォォォォ・・・・。
そして、そのまま暫くして爆発が収まった後、風によって黒煙が押し流されることで再び視界が映し出され始めた。
私は、ただひたすらアリアの無事を願った。
ゴォォォォォ!!
『っ!?』
はやる気持ちを抑えながら光魔導スクリーンに目を向けた私は、やっとのことで明らかとなった光景に目を瞠った。
何故なら、あれ程の爆風にもかかわらず『メルティーナ』は無傷で佇み、その足下にある大地は半径数百メートルにわたってマグマの様に赤熱していたからだ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・。
そして、立ち込める陽炎が揺らめく灼熱の大地の中心で『人工魔眼』を妖しく光らせる『メルティーナ』は、まさに破壊の象徴のようであった。
『『『『・・・・・・』』』』
私たちは、その姿を見てただ言葉を詰まらせることしかできなかった。
『わた・・・し・・・』
すると、『メルティーナ』から震えるアリアの声が聞こえてきた。
同時に、『メルティーナ』が両掌を開いて呆然とそれを見つめているような素振りを見せる。
その後結局、『メルティーナ』によって演習場が破壊されてしまったことから実機講習は中止となった。
アリアの事情は学園側も把握しているので演習場を破壊したことについての責がアリアに問われることは無かったが、『メルティーナ』を降りた後もアリアの表情は暗いままだった。
「っ!!」
たったったっ!!
そして、アリアは思いつめたような顔をしながら一人駐機場から飛び出そうとしていた。
「アリア!!」
もちろん、私はアリアの事を引き留めたが、彼女はそのまま走り去ってしまった。
「アリア・・・」
「お兄様・・・」
「アリアちゃんは大丈夫なのでしょうか?」
「・・・きっと今はそっとしておいてあげた方がいいわ」
私たちは、見えなくなったアリアの姿を、ただ呆然と眺めることしかできなかった。
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