6日目

 今日の朝は太陽を見れず、重苦しい雨が降り注いでいる。

 また学校をズル休みしてしまった。今日はどこか行くのだろうか。

 彼女は8時になっても起きてこない。疲れたのだろうな。昨日は楽しかったようで、家に着けばすぐに眠ってしまった。

 お昼まで起きてこないだろうから朝ご飯は一人で食べる。いつもなら気にならない孤独だが、今は凄く寂しい。もうすぐ失ってしまうと分かっていると余計に。

 ずぶずぶと暗い感情に呑み込まれていくが、雨の所為だろう。

 そうこうするうちに僕は浅い眠りに落ちていった。


 ***


 またあの夢を見た。

 彼女が僕の代わりに轢かれる夢。

 強い雨が降るこの街で、儚く命が一つ散る。

 飛び上がった血飛沫は僕に襲いかかってくるような気がした。やはり人は脆い。

 嘆いても仕方のない事だが、あまりにも無情な気がしてやまない。

 いや分かってはいたが、目を逸らしていたかっただけだ。

 それももうやめにして、現実と向き合うべきかもしれない。

 彼女が死んでも尚、僕の前に現れたのは、そう伝えるためだったのかもしれない。

 さて、そろそろ起きるとしよう。彼女との時間を、あと38時間を切った残りの時間を、今までの中で最高のものにしよう。

 そう思い、夢の中に暗い感情を置き去りにしたまま、ゆっくりと目を開いたのだった。


 ***


 目を覚ましたが、夢の内容は忘れていなかった。

 どうやら1時間ちょっと眠っていたようだ。

 あと彼女はまだ起きてきていないようだった。

 失礼を承知で彼女の部屋の扉を少し開けて覗いてみたが、気持ち悪いくらい整理された部屋のベッドですやすやと眠っていた。

 窓の外では依然として雨が降っている。なんだか不安を掻き立てるように強さを増した。

 彼女とはもうすぐお別れなんだ。彼女はもうこの世に居るはずのない人。

 何か強い後悔があってこの世に留まっているのかもしれないし、彼女のことだからふらっとこの世に舞い戻ったのかもしれない。

 どちらにせよ、僕に出来るのは彼女を愛し続けることだけ。

そんな覚悟を決めたのに、彼女はこの日、目覚めることはなかった。

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