一週間後、君が夜に眠るまで

鈴響聖夜

プロローグ

 彼女は小高い丘の上からキラキラと輝く街を見下ろし、泣きそうな、消えてしまいそうな声で呟いた。


「街の灯りの数は、幸せの数と同じ。幸せが増れば、世界は明るく照らされる」


 それは彼女の願いだった。

 常に人の幸せを願い、その為なら命すら賭けられる。

 彼女に照らされた人々は数え切れない。僕もその一人。


「もう少しだけでいいから、照らされていたかったかな。なんて、わがままだね。私は」


 でも彼女は、僕と肩を並べてくれた。

 好きだと言ってくれた。

 そして彼女、月本陽奈乃つきもとひなのは幸せとの別れを惜しむ様に、眠る様に、ゆっくりと夜に昇って行った。

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