第27話「幼馴染がいじられる」
「おお‼‼ お二人さん、遂に付き合ったのか‼‼」
「ひゅーひゅー‼‼ これはめでたいなぁ!」
「最高だね、良かったね、四葉ちゃん‼‼」
「高嶺さんを仕留めちゃうなんて、峯藤も罪だなぁ」
そして、来たる8月26日。
楽しかった夏休みも終わりをつげ、新たに始まった高校一年の二学期。四葉と付き合い始めたという高揚感と少しの不安を抱いて教室の扉を開けると——待っていたのはそんな祝杯の声だった。
「おいおいおい、まじか」
「っは……あぅ……」
さすがに、新学期早々これとは予想していなかった。
まさか、もう、俺たちの噂が広まっているとは。
というか、俺はまだ誰にも言っていないし。広まるつてがない。割と付き合いのある腐れ縁、木戸俊介にすら報告していないので余計に広まる理由が皆無だ。あいつの情報網には首を垂れるほど世話になってはいるが——やつが耳に挟まなければ広まっていくことはない。
当の俺自身、そのことが分かっていたし、安心していた。
だが――なぜ、こうなっているんだ?
そんな疑問が150kmストレートの様に投げ込まれる。
「おいおい、どうしたどうしたよぉ、兄弟!」
「いてっ——」
「お二人とも付き合っちゃってるんだってなぁ……この俺もさっき初めて聞いたぞ!」
「ってぇ……なんだよ、急によぉ」
「ははっ! 何言ってんだよっ——ていうのはこっちの台詞だっよ!」
ニコニコと満面の笑みを浮かべながら背中を強く叩いてくる俊介。
バシバシと体が揺れ、ツッコミボケの激しい動きに久々に酔いそうになってしまったが——同時に気づいたことがある。
「——って。お前が、広めたんじゃなかったのか?」
「え? あぁ、まあ……今回は初耳だぞ?」
「まじか……」
こりゃ驚いた。
しかし、それならどのルートここまでクラスの連中に広まったんだ?
疑問を浮かべる。そして、同時に周りの様子を眺めてみる。
数秒間、沈黙を貫くと——自分の盲目さに腹が立った。
「——ってことは」
そう言いながら、ゆっくりと隣に視線を向ける。
隣、そして斜め下。
背の低い、赤毛ボブで童顔な幼馴染の方へ。
「おい、なんで顔背けてやがる」
「べべ、別に……s、背けてないもんっ……」
「……それじゃあ、質問だ」
「な、何よ——」
「この状況を作ったのは誰だ?」
「——私じゃない」
「へえ、そうか……俺はまだ誰にも言ってなかったんだがなぁ。それならじゃあ、どうしてこんなに広まってるんだ?」
「……知らないわ、誰かがk、こ、こく……告白……してるとこでも見てたんじゃないの?」
お互いに告白したのは家だぞ。
だいたい、誰かが見てたとしたらまず、不法侵入だ。もはや、ただのストーカー野郎でしかないだろう。マジでいたら、吐いちゃうぞ俺。
「んなわけ、あるかっ」
「うがっ!」
「はぁ……全く、言ったら言ったで別にいいのに」
「……っさい」
「はいはい」
「なーーに二人で、イチャコラしてやがるんだ!!」
「俺たちも混ぜろ~~‼‼」
「男はどっかいけ、ここは二人だけの空間なんだよぉ!!」
「よつばっち、がんばれぇ!!」
カオス。
ひどすぎる。
祝福してくれるのは嬉しいけど、さすがに学校でここまでチヤホヤされるのは俺の道理に反する。というか、普通に恥ずかしい。
「あぁ、もう……やめてくれよ」
そして、隣の四葉と言えば。
散々、囲んでいる女子や男子に弄られ、顔が真っ赤になっていた。
「……っ、ったぁ」
もはや、恥ずかしすぎて呂律すら回っていない。
自分から広まるきっかけを作ったくせに何を真っ赤にしてるんだよ。こっちの気持ちを考えやがれ、このツンツン幼馴染め。
「まったく、ほら——席座るぞ」
「う、うん……」
「キャあああああああ‼‼‼‼」
「手を繋いでる‼‼」
「引っ張ちゃってるぞおおおお‼‼」
「あいつ、俺たちの四葉さんに触れやがってぇえええええ‼‼‼‼」
阿鼻叫喚が教室中に飛びかう。
しかし、俺はそれ以上は触れずに午前の授業まで普段通りに過ごしたのだった。
「おい、四葉」
「何……」
「顔、まだ赤いぞ?」
「っ——!? な、ななな、何言ってるのよ……」
「顔に出過ぎ」
「出てないっ」
「そうかそうか、可愛い可愛い」
「……っ、ずるいし……」
弄れば照れやがって、可愛いのがムカつくところだ。
困ることにだが――こいつの照れ顔を見ているとこっちも照れてくる。
「——授業中は静かに」
「は、はい」「す、すみません」
この後、授業中のことをまた、クラスメイトに茶化されたのは自明の理であろう。
<あとがき>
追記、誤字報告ありがとうございます。
かなり助けになっています。自分、あまり見直さない人間なもんで、よければまた誤字があれば教えてください!
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