第20話「幼馴染の変化②」
「っはぁ、っはぁ……」
玄関を出ると、途端に変な感覚に襲われた。
心の底から、胸の内から溢れてくる——嬉しさ。恐ろしいほどに、震えるほどに、気持ち悪いくらいに、私は私が分からなかった。
な、なんで私、こんなに嬉しいの……。あ、あいつがただ、少しだけいい点を取っただけなのに……い、意識しちゃってなんかドキドキしてすごく、すごくおかしい。
教えた甲斐があったのは事実。
いっつもギリギリを彷徨う
私が教えたおかげで、いい点を取ってくれた。
——そんな事実を考えただけで、胸が熱くなった。
「——」
人がすれ違い、不意に恥ずかしくなった私は顔を両手で覆った。ただ、ぴたりと顔に付けた両手に伝わる体温のせいで、さらに顔を熱くさせる。
いつもの数倍は熱くなっているような気もする。それに、心臓がバクバクとなっていて、心なしか肩も震えている。
たかだか幼馴染の試験結果だというのにここまで嬉しがっている私がただ、ただ怖かった。
「どうして……どうしたちゃったんだろ。私」
一旦、立ち止まって深呼吸をする。
スゥ―、はぁ。
スゥ―、はぁ。
顔を二度叩いて、空を見ると幾らかは落ち着いたが……ふと思い出す和人の顔。そしてまた、熱くなる体。
どうやら、私は末期だ。
恋愛病末期。
て、何考えてんだ。馬鹿なのか、変態なのか⁉
あぁ、もう‼‼ うっざいわ‼‼
いつのまにか変態乙女になっているぞ!!
私は変態じゃないわ、ボケ!!
このボケ読者が!!
言いやがって、くそおおおおお!!
「……はぁ。もう……やば、い」
気が付けば。
私は——あいつの、和人の事を考えると、ドキドキが止まらなくなっていた。
「……い、一旦コンビニ行こっ、だめだ、私っ」
ぶつりと一言吐き捨てて、ドキドキする胸を落ち着かせながら近くのコンビニまで走った。
道中、それでも思い出してしまう。振り返ってしまう。
気が付いた。
でも、信じたくない。
分かっていてもどうしても理解したくなかった。
しかし、私は奥底に眠る本音を掘り起こしてしまったのだ。
馬鹿馬鹿しい。
全くもって馬鹿馬鹿しい。
気にしないと、あいつだけは嫌だと思っていたのに、昔のあの出来事から——。
だめだ、本当に駄目だ。
本音も建前もぐちゃぐちゃで、偽ることもできない。
そっか、私。
「————っ!」
あいつのことが、和人の事が好きだったんだ。
たまに優しくて、格好良くて。
でも、いつもはずぼらでだらしなくて、頭も悪い。
そして、唯一。
私が
そんな
走りながら頭の中で完結した気持ち。
それに真正面から向き合った時、私は軽くなった。
変なプライドも、邪な思いも抱くことなく、本音を理解した途端。
心が、思いが、体がすっごく軽くなった気がした。
馬鹿だ、私。
大馬鹿だ、私。
☆藤崎和人☆
「遅い……大丈夫か、あいつ」
って、何を気にしてるんだろうか俺は。
さっき、あまりにもいけ好かないというか、なんというか、らしくない返事をしてくれたおかげでおかしくなっているようだ。
だって仕方ないじゃん?
いつもの
——くらいは笑みを浮かべながら言いそうなのに、若干頬を赤くさせながら「そ」って言ってくるもんだから調子がおかしくなる。まったく、俺の事も考えてほしいものだ。
「まぁ、でも……赤点回避どころか、平均点以上取れたのはさすがに嬉しいなっ。これはワンチャン、というか普通に次は学年トップ30は目指せるかも!? うひょー、楽しみだなっ!」
「——何が、楽しみなのよ?」
ピキンッ!
そんな音がした気がする。
いや、冷たくて背筋が固まっただけだったようだ。
「どうしたのよ、変な顔して……」
家を出るまでのことは忘れてしまったかのように、いつもの冷静で冷たい目を向ける彼女。俺も、あまりの出来事で頭が真っ白になっていたがどうやら、買ってきたサイダーを首に押し付けてるだけだった。
「い——いや、びっくりして……」
「ふぅん……それにしても、間抜けな顔だったわね」
「ま、間抜けっ⁉ お、おい取り消せよ今の言葉ぁ‼‼」
「嫌。というか、買ってきてあげたんだけど?」
「……露骨だなぁ、まあ、いいけど」
俺はお尻にあるポケットを探る。財布を取り出して、120円を四葉の手に差し出すがそのお金を掴もうとはしない。
「違う」
「え?」
顔を横に振る彼女。
俺はいやいやとさらに前に出す。
しかし、対して一歩下がっていく四葉。
そのループを5回ほど繰り返したところで再び口を開ける。
「なんで、これが欲しいんでしょ?」
「……そ、そうじゃないしっ、驕りでいいわよ」
「は?」
「は、じゃなくて驕りでいいよって言ってるの! 分からない? 日本語も分からないの、和人は」
「おい、いちいち
「知らない、でもお金は要らないの。これはその……えっと、おw……び」
「え、何?」
最後だけ口をもごもごとさせる四葉。
心なしか、家を出る前までの表情に戻っているような気もする。どこか、顔も赤くなっているように見えた。
「……だから、お……ぃ」
「聞こえねぇよ」
「~~っ!! お詫びよ‼‼ お詫び‼‼」
「は、はぁ……で、何の?」
「そ、そのくらい分かってるでしょ! あ、あの、前の……その、助けてくれた、やつ……でしょ?」
「でしょって言われてもなぁ、あんまり覚えてない」
否。
嘘である。
だが、勘違いはしてほしくない。
別に俺は見返りが欲しくてやったわけではない。断じて違う。それは言い切れる。
しかし、俺も男子だ。厳然たる高校生男児である。それはこんな幼馴染だとしても、多少は思ってしまう。何かあるのでは? と。
「はぁ? まじで?」
「まじ、まじだ」
うそ、嘘だ。
「——はぁ。なんか、シラケちゃったじゃん。そんなこと言われるとは思ってなかった」
「い、いや別に覚えてないというか、助けたことは覚えてるけど……なんというかその、鮮明ではないというか?」
「っそ。いいわよ、それで」
「お、おう……」
「——でも! 要らないから、それでいいから! 私が欲しかったのは、ありがとうっていう言葉っ」
「……っ」
驚いた。
まさか、四葉が感謝の言葉を欲するとは思ってもいなかった。しかし、俺が驚いて目を見開いていると彼女はそっぽを向いて視線を逸らした。
な、なんだよこれ。
最近、丸くなっておかしいなって思っていたら、またこれかよ。
「ま、まぁ……ありがと……」
「……まぁって何よ」
「あ、ありがと……」
「うん、どうも」
露骨。
あまりにも愚直だ。
プライドの高い、そして俺にだけツンツンしてくる
イメチェンしたのか? なんて思ってしまうほどに、頬を赤らめながららしくないことを言う彼女を俺は珍しい物を見るような気持ちで見つめていた。
すると——。
「見つめないで……」
と。
四葉は聞こえるか聞こえないかくらいの小声でぼそっと呟いて、買ってきたアイスを冷蔵庫のあるキッチンへ歩いて行った。
<あとがき>
連載から約一か月が経ちましたね。
前作、「巨乳ロリ」の小説には及ばないもののフォロワーが500人間近ということで嬉しい限りです。1000人を超えることを目標にしていましたが壁が高いですね笑
とはいえ、自分的に初めてツンツンなキャラを描いてみましたが思うことがあります。なかなか難しい。気持ち、思いを少し表に出しながら、でも出し過ぎないように台詞を考えるのがこれまたかなり難しくて、いい経験になっています。この小説は二章にて完結しますが、新たに「耳舐め、甘噛み」この二つをタイトルに入れた「甘噛みJKと耳舐めJD」という新作も考えています。一応、来週から投稿できればいいなと思っていますが、もしかしたら日曜日には上げるかもしれないです……(土曜日にコロナワクチン打つので体調が悪くなれば別です)。
ツイッターでも天下を取る宣言したので、☆1000、フォロワー10000を目標に頑張っていきたいと思います。ケイスケホンダ並みにビックマウスな発言ですが、なんとか頑張ります!! なんとか、応援してくださいな!
最後に、言っておきますが——
——僕はロリコンです。
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