笑顔が似合う可愛い幼馴染が俺にだけ冷たくなったけど、気持ちまでは変わっていないのかな?

藍坂イツキ

プロローグ

プロローグ「10年前の約束」


「……よ、よつばはっ——大きくなったら、かずくんのおよめさんになるの!!」


「うんっ! おれも、よつばの? になるよ!」


「じゃあ、これ……やくそくっ」


「わかった!」


「「ゆびきりげんまんっ、うそっついたらはりせんぼんっ、のーますっ、ゆびっきった!」」



 ——なんて、昔話に花を咲かせるのも悪くはないだろう。


――――――――――――――――――――――――———————————



 七月末。

 遂に始まった高校生活にも慣れてきた頃。


 ——そんな大昔の思い出の途中で、俺は目を覚ました。すずめさえずりと燦燦さんさんと照りつける朝陽が俺の瞳を照らし、眩しくて手で覆った。


「ん……ぁ、あ」


 気が付けば、朝になっていたらしい。どうやら俺は熟睡していたようだ。


 昨日は幼馴染が俺の家にやってくることが決まり、急遽引っ越しの作業を手伝っていたのだがそれが夜中までかかってしまったためか少し目覚めも悪く、筋肉痛がひどかった。


「ふぅ……ん、ぁ……ねっむ……」


「……起きるのおっそ」


 大きく欠伸をすると、聞き慣れた高めの声が聞こえる。

 そう、彼女こそが懐かしい思い出の相手でもある———俺の十年来の幼馴染、高嶺四葉たかねよつば


 宝石のように青く輝く瞳で睨みを利かせる背の低い赤毛のボブ。そして、体に見合った胸の大きさで高校生らしくはない。腕を組んでいてあまり見えないが恐らくBくらいだろう。


 童顔でじっとしていれば可愛いのだが最近はムスッてしていることが多く、あまり可愛くはない。その顔を好むやつもいるのだろうが俺的にはサバサバしているのが難点だ。遅めの反抗期ってやつだろうか。


 しかし、俺の前では冷たい彼女も高校では猫を被っているようでクラス委員長もやるほどの清楚系女子高生を謳っている。いつも近くにいる俺からは想像もできないが実際にやっているため否定はできない。


 それに男子からの人気も高く、年に数回は告白をされるくらいだ。昔の優しい四葉こいつだったら俺も好きになってたかもしれないが、今のツンツンさは正直好きにはなれない。


 ま、俺みたいな陰キャでも陽キャでもない中盤でやられそうなキャラにはもらえない存在だし、関係ないことだ。ははっ! 二軍最強や! 人生は冒険や!! あはは!!


 なーんて。まじで、虚しくなるなぁ。


 とはいえ、頭の中でそんな考えがぐるぐると回っていると四葉のむすっとした顔がしかめっ面に変わりそうになっていた。


「——んだよ、言いに来たのはそれだけなのか?」


「無論ねっ」


 大きくもない胸を張って溜息をついた彼女。


 ほんと、その偉そうな姿が少々癪に障る。こっそりと拳を握り締めるが、行き場もないその気持ちは言葉に変わった。


「ははっ……可愛げのないこと」


「ふんっ、可愛げなんてないわっ。私は可愛くはないし、というかカッコよくなりたいし」


「背も低いのに? 童顔なのに?」


「——せ、背は低くないしっ。それに、童顔じゃない!!」


「へぇ、客観視できないんだなぁ……それはそれはお粗末なことだ」


「う、ううるさいしっ!」


「はいはい、分かったって……」


「もう。そうやって揶揄うならご飯作らないけど?」


「それは辛い、悪かった」


「うわぁ、すぐに謝るとかきもっ」


「黙れ、んなことどうでもいいんだよ……」


「はいはい、下にご飯置いといたから先行ってるわね、直ぐに家出たら殴るからっ」


「——はぁ、あいよ」


 バタンッ! と扉が閉まる音が俺の小さな部屋に響いた。


 まったく、本当に可愛げがない。昔はもっと元気で、ヤンチャしていて、俺の事ばかり追いかけていて、可愛かったというのに今ではこれだ。


「……はぁ」


 優しい優しい俺も溜息も零れる始末だ。


 たしか四葉という名前は母親が「どんな素敵な人間にもなれるように」という意味を込めて付けたらしいが、どうやら素敵でもないサバサバ系女子になってしまった。これでは彼女の親も泣いてるに違いないだろう。


「——って、あいつの親。もうここにはいないんだけどな」


 いやいや、君たちが思っているような不幸が起こってしまったとかそういう類いの理由ではない。それこそ彼女が昨日、俺の家に越してきたのと関係があるし、その理由も少し複雑なだけだ。


 四葉の父親はとある私立大学の准教授で、学会やら交流などの関係で一年間くらいアメリカの方に住まなくてはいけなくなった——というだけである。だが、その転勤に「行きたくない」と異議を申し立てたのは四葉本人だったらしく、父親も母親も説得することが出来ず、昔からの親交があった俺の家に預けた——というのが一連の流れだ。


 まったくもって投げ出した感があるのだが俺の親も二つ返事で了承したため俺自身何も言えてはいない。加えて、去年巣立った姉の部屋も一つ空いていたせいで四葉の分の部屋もあったのが余計に運命的なのが腹が立つ。隣の部屋というのも少し悔しいのだ。


「もう少し、可愛げがあったらよかったんだがな」


 そこだけが問題なのだが、考えても仕方がない。


 俺は制服に着替えて、四葉が作った朝食を数分で平らげて学校へ向かった。


 ——あぁ、そういや。言ってなかったようだけど、俺の親も現在旅行に行っている。これまた急だったのだが、その話はまた今度にするとしようか。


「……そういや、あいつ。弁当忘れてるじゃん」




<あとがき>

 歩直伍長です。

 リケジョがあまり伸びなかったというのもあり、やはり僕は幼馴染で攻めていくことにしました! 良かったら、フォロー、応援、コメント、☆評価などなどお願いします。レビューも是非是非!


 あれですね、小説のフォロワーが1000超えたら軍曹に昇進するのでどうかよろしくお願いします。

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