ガル

くじら

ガル

あるところに かいじゅうたちの住む星がありました


そこには さまざまなかいじゅうたちがいて 

げっぷで火を吹くかいじゅう

しっぽが天高くまでのびるかいじゅう 

海中までもぐれるかいじゅう


みんなそれぞれ特技があって お互いに助けあい この村で暮らしていました


ガルというかいじゅうがいました


ガルには何もないところに息を吹きかけると 花を咲かす そんな特技がありました


ガルは自分にとても自信がないかいじゅうで

よく一人でしくしくと泣いていました


なぜかって?

花がなくたって、みんな困らないからです


ガルの友達はみんな 魚をとるために海にもぐり 生活のために火をともし 

高いところにあるくだものをとるために 

それぞれの特技を発揮していました


ですが ガルのお花を咲かすちからは ほとんどお願いされることがなく 

友だちが活躍しているのを見た日は いつもいつも ひとりさびしく泣いているのでした


ある日 村におおきな流星が落ち 

海は荒れ 風が強く吹き 草花は元気をなくし

かいじゅうたちの住む村は くらーい雲に覆われていました


火をともすかいじゅうが火をつけても 風がつよくて火はすぐに消えてしまい

しっぽがのびるかいじゅうは くだものがぜんぶ飛んでいってしまったために出番がなく

海中へもぐるかいじゅうは 波のつよさで思うように泳げませんでした


みんなが悲しく暗く沈んでいた時 

火をともすかいじゅうが 

"ガル おはなを見せてよ"

といったのです


ガルは突然のことにおどろき ことばがでませんでした


ガルは自分のもつこの特技を いつもいつも うらめしく思っていたからです


自分はみんなとちがう 

なににもつかえない特技 

だれもお花なんてひつようとしてない


小さいころから ずっとずっと そう思っていたのです


みんながこっちを見ています


ガルはこわくて 涙がでそうになります


いままでずっと 自分のなかに押し込んでいたもの

みんなに認められないと思っていたもの


そんな時

夜空にきらりと ひとすじの流れぼしが流れました


ガルはふるえる手をおさえ 

枯れた草花たちに 

ふっ

息を吹きかけました


ぽっ


中くらいの レモン色の きらきらの丸い一輪の花


なんにもなかった大地に突然 表れたその花は 

ガルの気持ちとは正反対に 

とっても明るくて 

かわいくて 

可憐で 

強く 美しい花でした


かいじゅうたちはその花をみて あまりの美しさに 笑顔になり 

ガルと花のもとには たくさんのかいじゅうたちが集まりました 


安心したガルは そこでおおーきな声で おんおん泣きました 

小さいかいじゅうがいようと関係ありません


今までガルが抱えていたさびしさを 

ぜんぶぜんぶ 吐きだすかのように

おおつぶの涙をながして泣きました 


とってもとっても うつくしい つよい やさしいなみだでした


ガルはここまでよくがんばったのです


その夜 かいじゅうたちは陽気な歌を歌い 

楽器で優しい音色を奏で 愛を伝えあいました 




次の日 嵐はやみ 大きな空に 満点の星ぞらがひろがっていました



嵐のあとの すばらしいくらい透きとおった きれいな夜空でした

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ガル くじら @kuji_ra_

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