略奪者。
エイリーク、エッダの社長兼旗艦エイリークの艦長でありArche乗りだ。
「あんた…Arche使えたんやね」
「エッダは実力主義だ、そのトップが乗れなくてどうするんだよ」
とんでもない理由に聞こえるけど…エッダだとそうなんだろう、徹底的な実力主義だと聞いてはいたんだけど…まさか社長クラスとまでは思っていなかったな。
「いやはや羨ましい、
ピョンと上に跳ねるように飛び上がり、天井を蹴って比和子さんが一気に首を狩りに行くが、斧を思いっきり刀に合わせて振り切られる。
「ふんっ!」
「ぬあっと!?」
斧のパワーに負けて弾かれるように跳んだ比和子さんは壁に張り付くように着地して、自分の刀をまじまじと見る。
「なんと! 刀が折れました!!」
比和子さんの刀がポッキリと中程から折れてしまっている、エイリークの二度の斧によるダメージを比和子さんが持っていた刀は耐えきれなかったらしい。
「無事か?」
「なんの! まだ刀は予備があります!」
ヤタさんが比和子さんを気遣うが比和子さんはケロリとした様子で、全く刀が折れたことを気にしておらず、次の刀を取り出す。
「切れ味はいいのですが、スグに折れますので、最初から予備の持参です」
「なるほど合理的だ、好きだぞそういう考えは」
「やややややや!?」
おや? なんか急に比和子さんが動揺してバグったような声を出したぞ?
「まったく、急に好きなどと、考えておきます!」
「…おい?」
え、そういう流れじゃなかったよね、どういうこと?
「………え?」
「いやいやいや! ウチわからんって!?」
俺とヤタさんに同時に意見を求めるかのように見つめられたアイだが、当然わかるわけがなく、激しく目の前で左手を振って否定する。
「比和子はああ見えて…好意を向けられたのは少なくてのぉ」
父親はしみじみと、動き回ってどうにかスキを作ろうとしている比和子をみながら理由を言う、いやまあ日頃からあんな感じなら怖がられてはいそうだけど。
「まあ、あれじゃ、勘違いと伝えればケロっとしておるよ」
父親が言うのなら、そういうものなんだろう…って今はそういう場合じゃない。
もちろんアイに視線を向けたとはいえ、意識自体は敵からは反らしてはいない、敵は比和子さんに集中しているが、こちらを不意に狙ってくるとは限らない。
自分も上手く援護をしたいところだけど、比和子さんの動きが素早くてトリッキーなので誤射が怖くなるし、そもそもノルドよりも硬そうなあの機体にエネルギーライフルでの火力では足りなさそうだ、ここはレーヴァテインを使うべきか?
「ウチも行って来るで」
一方でアイはペイルハンマーと、足の武装が有効打が与えられそうな武器なので、いつでも叩き込めそうな位置に移動する、ヤタさんは対物ライフルを構える。
「……はて、この男こんな鈍重なのに斬り込めませんね」
相手の機体はノルドと同じく防御型で、しかもかなりお金をかけており最新パーツで固められているコスト度外視の機体だ、恐らくノルドの装備していたものよりも硬く、更に出力が高い分ノルドよりは素早い。
「援護する」
ヤタさんが敵にライフルを撃ち込む、誤射が怖いところだけど的確にエイリークの腹に弾が着弾し、機体の装甲が大きく凹む…って対物ライフルで凹むだけ!?
「いい援護です!」
しかし機体が大きく凹むほどの衝撃を受けてさすがにあの機体も大きくよろけ、そのタイミングを比和子さんは見逃さない、首筋に刀が左斜下から横一閃に斬りつけられる。
「………はて………?」
しかし、エイリークの首は繋がっていて、比和子さんの刀が真ん中から先が無くなっている。
「また折れましたっ!?」
さすがの比和子さんもコレには焦って急いで飛び退く、比和子さんの戦闘スタイルは元々ヒット・アンド・アウェイ、攻撃したらスグ離れるののだがあまりの事態にこの時、その判断が遅れてしまう。
「なんでぇ……効かねぇのか!」
比和子さんに向かって腰のエネルギー砲が比和子さんに向けて発射される。
「なんのぉ!」
比和子さんに向けられた二つのライフルのものよりも遥かに太いエネルギー砲は、身体をひねることで比和子さんの身体の両サイドを抜けていく。
「ぐっ……!」
しかし、比和子さんの機体の右足と左腕の装甲は簡単にはがれ、ブーストがいくつかショートしているのがわかる、彼女の機体はそれ程までに脆く、一つのミスも許されないほど繊細なのだ。
「それ、避けてみろ!」
このチャンスを逃すまいかと、もう比和子さんにエイリークはもう二発、エネルギー砲を放つために身体を向ける。
「やらせん…!」
すかさず、比和子さんの前に時義さんが飛び出し、比和子さんの背中にある盾と自分の盾を二つ使い、エネルギー砲を受け、すこし後ずさりする。
「父様!」
「少し控えておれ!」
「…はい!」
比和子さんは急いでエイリークから距離をとる、その動きは明らかにスピードが落ちており、足には宇宙服のジェルが出てきているのがわかる。
「次はお前か、そうれ…! 受けきってみろ!!」
盾に向かってエイリークは斧を振り下ろす、そのパワーは凄まじく、盾を二つ持つ同じく重量級である筈の時義さんの機体がいともたやすく押されていく。
「余りもたんぞ!」
そう言われても、自分も撃ち込んでみるがまったくエイリークに攻撃が効いていない、いつもみたいに
今のエネルギーライフルは武器はレーヴァテインを持っていたあのコロニーのエースの機体でも装甲に傷ぐらいはつく性能をしてるのにだ…。
唯一射撃で相手を怯ませることができているのは、ヤタさんの対物ライフルだ、それでも何発撃ち込んでも装甲を破壊するに至らないのでその硬さが相当なものだと伺える、丸っこい流線形のボディの上、元々の肉体が一回り以上大きく見えるような装甲にかなり強い
相手の機体コンセプトはわかっても、どうやって突破すればいいのかわからない、刀が通らなかった以上レーヴァテインでもマトモに通るのか不安になる。
「………おっと、ソレはダメだ!」
周り込んでいるアイにエネルギー砲が放たれアイは転がるように回避行動をとる、手にはレールガンを取り出そうとしていたのがわかる。
「さすがにそりゃあ危険だ、させらんねぇな」
「…やっぱアカン?」
「あぁ、ダメだ」
自分も流石にそれは無理があると思う、レールガンはエネルギーチャージ中どうしてもブースターにまわすエネルギー量が下がりスピードが落ちる、そんなスキがあればこの敵に
「さすがにコレやったら、アンタを地獄に送ってやれるんやけど…なぁ!」
次にヤタさんがエイリークを後ずさりさせたタイミングに、アイは今度は拳を叩きつけに行く、ペイルハンマーを叩きつけにいくつもりだ。
「ソレもダメだな!」
エイリークはアイが放った拳を
「……っぐ…あっ!」
なんて握力の出力だ、普通武器を握れるだけの握力があれば問題ないのでそんなに握力を強化しない、確かにあの斧をもつなら平均よりも高い握力性能は必要だろうけど、そんな万力やプレス機みたいな握力は必要ないはずだ。
「はなせやぁ!!」
アイはエイリークの顔面にスタンキックを無理やり身体を捻りながら当てる。
「その程度の出力でなぁ」
「こっちやったら通るやろ!」
アイは接触しただけの弱い蹴りから電流を流し、エイリークの肉体へ直接攻撃を試みる、さすがに全身金属なので、宇宙服の耐電圧性能を持ってしてもある程度はダメージが通るはずだ。
「ぐうっ!」
案の定エイリークにスタン攻撃は効いた、だがエイリークは感電しながらも掴んでるアイの腕を振り回し、時義さんの方に投げつける。
「あっ……う……っ!」
時義さんは一瞬だけ手を開いて胸でアイを受け止め、追撃できたエネルギー砲は盾を再び閉じることで防ぐ、だがアイは衝撃で苦しそうな声をあげ腕を抑えていた。
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