ミーティング。(2)
夕方、食事前になって招集がくる、船外にいた全員が戻ってきたので顔合わせを兼ねたミーティングをするそうだ、早速手伝いが終わって暇だったし早めに談話室に入る。
「失礼します」
「ん、早いな、全員揃っちまったじゃないか」
テーブルの上にクガさんが料理を置いていた。
「やっほー、一番最後やで」
「残念だったね~」
テーブルを囲んで二人用のソファーが4つ、ブリッジ側にイチゴさんが座り、手前側にアイ空いてる席にココに来て初めて見る中性的な顔立ちをした黒髪ロングの人が座っている、確か会社プロフィールに乗っていた人だ、名前は『ヤタ』さんで元々所属していたArcheパイロット。
「まあ座って待ってろ、料理を作ってるから」
「手伝いますよ」
さすがに上司が料理を作ってるのに座って待ってるのは気が引ける。
「じゃあ運ぶのだけ頼む」
「はい」
食事には拘りがあるって聞いてたから、自分が作る時は手を出させないんだろう、だけど運ばさせてくれるだけでも気を使ってくれたのかな。
渡された料理は、大きなプレートに乗ったオードブルだ、からあげにミートボール、ローストビーフやソーセージ、エビフライに人参やほうれん草等の野菜ボールがある。
「深底だが乱暴に扱うと普通に飛び出るから注意しろよ」
「はい」
慎重にテーブルに置く、それだけでいくつか浮かびかねない。
ついでクガさんが自分で運んできたのは、カットされたフランスパンだ。
「早く来ると思ったけど、まだ30分前だぞ?」
「いいじゃん、その分温かいうちに食べれるし~」
「どうせ時間通りに来ても、お前は『先に食べてるよ~』って言うだけだよ」
「かも知んない」
クガさんがイチゴさんの隣に座り、自分は空いてるソファーに座ろうとする。
「スノウ、あんたはコッチ」
それを引き止めてアイが自分と同じソファーに座るように促す。
「別にいいけど」
拒否する気もないから、促されるままに座る、ヤタさんがクスクスと笑っている。
「よし、挨拶はいいよね別に、かんぱ~い」
「「「「乾杯」」」」
適当な掛け声と一緒に食事がスタートする。
「それじゃあ食事をしながらで良いから聞いてくれ、まず改めて新人の二人、スノウとアイだ」
「「よろしくおねがいします」」
同時に挨拶した、不思議と息はあうんだよね、アイと。
「で、俺達はいいか、えーっと、ヤタだ」
「ヤタ、所属パイロットをしてる」
軽く会釈だけして、短く切り上げたらヤタさんはエビフライをかじった。
「こっからは返事は求めないから食べてていいよ、で、作戦なんだけど俺からでいいのか?」
「ふん、ひひよ」
イチゴさんはローストビーフをもしゃもしゃと口に含みながら多分肯定してる、正直この人は真面目なんだかよく分からないんだよね。
「これから向かうのは山羊座の作戦宙域、まだ地球から正式な要請は来てないから、自由参加の傭兵でコロニーと小競り合いしてる状況だ」
地球軌道上を起点にした平面図をホログラムで映し出して説明を始める、結構詳しい地図でちょっとびっくりした。
「正直地球側の予定では、今山羊座を攻略できてしまうと、来年の最接近時に相手しなくていいというメリットはあるが、その分火星真正面から激突する事になる」
コロニーという緩衝材、障害物がないし、コロニーからも手が出しにくくなる状況だ。
「ただコレはあまり美味しくないというのが地球の判断でな、理由はコロニーが手を出さずに温存できてしまい、総力戦で消耗した所を漁夫の利されるのが懸念されてる」
確かに、火星と地球を挟んで山羊座にも戦力が集まれば、コロニー側は見捨てるわけにもいかないから守りに戦力を割けるし、現状そのための準備も必要なはずだ。
「なので山羊座を敢えて今回は落としたくない、というのが結論だな」
「地球側としてはそうなんだよね~」
次の食べ物を小皿によそいながら、イチゴさんはフォローする。
「今回問題なのはコロニー側、当然地球と火星をそれまでにできるだけ削っておかないと厳しい戦いになるのが予想できる、ただ山羊座は護るスタイルで牽制だけして攻めてこない、地球も今回は落としたくないので攻めない」
てことは、今は膠着状態になってるのが普通なんだと思う。
「ただ今回ヤタが裏で仕入れた情報で、獅子座から巨大物資が運び込まれたらしい」
「巨大って…どれぐらいなんですか?」
気になったのかアイが尋ねる。
「全長100m、内容物はArcheと推定到着は13日」
「うっわ」
ヤタさんが説明したとおり、全長100mのコンテナにArcheを積み込んでるとしたら、30~50機は入りそうだ、コロニーのArcheは地球産や火星産と違って量産機でも一世代は上だから、これは危険そうだ。
「こういう時は逆に稼ぎ時でもあるんだ、ハイリスクハイリターンだけどな」
それで早めに到着して第一陣に混ざろうという計画なのか。
「ま、そういう事だ、9日出発で、前線までどのくらいで着ける?」
「ん~、最初ちょっと10分…ううん、15分みんなで対Gスーツきて加速して、そこから0.2Gずつ加速をしてって、身体に負担がないように減速するから~…」
イチゴさんは、ミートボールを食べながら考えている。
「6日頂戴、それ以上は負担が大きいかな」
「燃料は往復分と予備を積んでおくか?」
「そうだね~、うん、そうした方が良いと思う、結構燃費度外視で行かなきゃ」
「それじゃあ以上だ、明日朝八時に集合、寝坊したら寝袋ごと飛ばされると思えよ?」
「「了解」です」
気が引き締まる、とうとう戦争に行くんだ。
「よし、決まったからイチゴ、飲酒はアウトな」
「う~~~」
恨めしそうにお酒が入ってる棚を見ている、凄く飲みたそうだ。
「コレばっかりは諦めろって、艦長なんだから、飲酒できるタイミングが一番低くてもいいって言っただろ?」
「そうだけどさ~」
イチゴさんは渋々ぶどうジュースをちゅーちゅーと吸い上げる。
「今回結局昨日も飲んでないのに」
「初日飲んでたからいいだろ、ほら、ぶどうジュース」
「ありがと」
不貞腐れながら、ぶどうジュースを吸っている。
「よし、ミーティングも以上だからコレからは酒を飲んで良いぞ、二日酔いにならない程度にな、ただしスノウ、お前は薬の副作用があるからダメだ」
「なかまだね~」
同士が出来て、イチゴさんは嬉しそうに笑いかけてくる、正直上司が飲めない状況で飲むのは悪い気がするので、最初から飲む気もなかったんだけどな。
「あ、ウチは麦茶で大丈夫なんで」
アイも同じようなので、麦茶をおかわりしていた、クガさんも操縦に関わるからと理由で念の為に飲酒はなしなので、ヤタさんだけがウイスキーを開ける事になった。
「ふう…武装は?」
口数が少なめなヤタさんが、こっちの武装を聞いてくる。
「僕はまだほぼ初期支給のライフルとナイフだけです」
正直、ライフルさえあれば問題ないと思っている、防御はArcheが初期装備の対弾性能がある。
「そうか、最初のうちはそれでいい」
「うちはカタログ見てもろた方が」
「貰うよ」
クガさんと同じ様に、アイからカタログを受け取り、今度は硬直した。
「………凄いね」
「ありがとうございますっ!」
やっぱりアイは満面の笑みだ、よっぽど何か仕込んであるんだろうか?
「スノウ、君も見ておくと良い、味方の武装は大事だ」
「はいスノウ」
言われるがままに、アイの武装一覧を見る、正直気になっていたし。
なになに?
S-SKショットガン×2
ショットガン二丁、言ってたとおりかなりインファイト寄りの武装だな
対弾用フィールド、RKS-01-
通称RKS
起動中実弾、エネルギー兵器を緩和、及び逸らす電磁シールドを発生させる。
強力な電磁装置で、実弾も反射するっけどRKS同士が干渉すると効果が劇的に弱まる、必需品と言っていいレベルだけど、一定時間使用するとクールダウンが必要になる、これは効果時間が長く、一度オーバーヒートしてしまうとロックされてしまい、クールダウンがかなり長いタイプだ、それもカスタマイズしてあり、最大で10分間の起動が可能。
恐らく鉄砲玉と呼ばれるぐらい突出するならコレぐらい必要だったのだんじゃないかな。
アンカーフック
左手に一つ、右手に2つある、どちらも手首から発射できて、ショットガンと連結させている、右手にあるもう一つは、『刺す』『巻き取る』『引き寄せる』道具で、先端は鋭い刃物になっている。
電磁砲-MSMK50-
おっと、なんかご機嫌なロマン武装が出てきたぞ?
持ち運びは背中に装着するタイプで必要な時に持ち出す、流石に常備はしないか。
装填数一発という潔さと、必要電力はアイのArcheの52%、使った瞬間RKSのバッテリーごと落ちる、ついでに全力で逆噴射してなお吹き飛ぶ。
その代わり戦艦の装甲も一発で
ペインバンカー
はいでた頭おかしい、変態、しかもなんで通常兵装に組み込んでるの?
杭を電磁砲によって密着状態から打ち出して破壊する近距離専用大砲。
貫通力よりも衝撃による破壊を目的として、確かにコロニーの外壁や、小惑星基地の岩盤を破壊して強行侵入したりするのに使われるのは聞いたことがある。
でもさ、なーんで戦績に戦艦撃破経験ありって堂々と書いてるの? やったの? マジ?
「どうや? うち自慢の兵装や!」
「………鉄砲玉で良いと思うよ」
「なんでや!!」
叫びながら、思いっきり頭を叩かれた。
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