第381話 地煞星④
『はう……』
“梁山泊”
まあ……言ってしまえばここまで、決して楽な戦いじゃなかったからなあ……。
特に『第三十八門』と『第三十九門』は本当に強敵だった。下手をしたら、サンドラやプラーミャ、カズラさんに匹敵するかもしれない。
「ヨーヘイくん……ここで出現する
「ですね……」
サクヤさんの問いかけに、俺は頷く。まあ、これに関しては仕様だからとしか言いようがない。
というのも、
これは、この“梁山泊”
「[シン]……次の『第三十七門』を超えれば、いよいよ次のステージに進む。だから……頑張れ!」
そう言って[シン]を励ますが……ハア、俺は[シン]のマスターとして、無力だな……。
だけど。
『っ! はうはうはう! マスターの言葉で[シン]は元気百倍になったのです! 残りも全部やっつけて、[シン]の最強伝説の幕を開けるのです!』
はは……俺なんかに気を遣って無理しやがって……。
「よし! この“梁山泊”
『はう! すす、すごいのです! 大盤振る舞いなのです!』
それを聞いた途端、オニキスの瞳をキラキラと輝かせて[シン]は水辺の上を縦横無尽に飛び回った。はは、現金な奴。
そして。
「クク……見えたようだぞ」
中条の言葉を受け、俺達は船の進む先へと視線を向けると、『第三十七門』の看板を掲げた赤い鳥居が姿を現わした。
「さあ、行こうか」
『はう! なのです!』
桟橋に船をつけ、鳥居をくぐって中に入る。
『……待ってた』
舞台の上にたたずむ、
あれこそが、“梁山泊”
その名は、[神機軍師]。
そして、[シン]や[混世魔王]と同じ【方術】の使い手で、【八陣】のスキルを駆使する。
『はう! 頑張るのです! やっつけてやるのです!』
[シン]は[神機軍師]を見やりながらフンス、と気合いを入れると。
『……悲しい』
『はう!?』
よよよ、と泣く仕草をする[神機軍師]を見て、[シン]は面食らってしまったようだ。
『……感動の再会、期待してた……』
『はう……ひょ、ひょっとして……?』
『……私はあなたの姉、[神機軍師]』
……うん、そうだろうとは思ってた。
[混世魔王]を除くと、【方術】使いは二人しかいないし。
『……でも、これからは[神行太保]と一緒にずっといられるから、嬉しい』
『は、はう……それは、[シン]が勝った場合なの……です?』
頬を赤らめながらクスリ、と笑った[神機軍師]を見て、[シン]は顔を引きつらせながら条件確認をした。
『! ……まさか。この私が[神行太保]を傷つけるなんてあり得ない』
『だ、だったら、すぐに力を貸してくれるのですか?』
おずおずと尋ねる[シン]。
だけど、[神機軍師]は静かにかぶりを振った。
『……なので、私は他のことで試す。【長蛇】』
「っ!?」
そう告げた瞬間、突然俺の影が大蛇に変化し、全身を締め上げてきた!?
『な、何をするのです!』
『……決まってる。あなたのマスターであるこの男を殺し、[神行太保]を呪縛から解き放って私達は永遠に一緒にいる』
「貴様あああああああああああッッッ!」
「フザケルんじゃないわヨッッッ!」
[神機軍師]の言葉を聞いた瞬間、サクヤさんとプラーミャが[関聖帝君]と[スヴァローグ]を召喚して吠えた。
『……言っておくけど、私を攻撃したらそれで終わり』
「それがどうしたッッッ! 貴様はこの
サクヤさんが叫び、[関聖帝君]が青龍
「サクヤさん! プラーミャ!」
「「っ!」」
二人の名を告げた瞬間、[関聖帝君]と[スヴァローグ]がピタリ、と止まった。
「二人共ゴメン……気持ちは嬉しいけど、この[神機軍師]を含め、[シン]には絶対に“梁山泊”
そう……[シン]がここで
この、クソッタレなシナリオをぶっ壊すことに必要だから。
「はは……言っとくが、俺と[シン]は魂でつながった正真正銘の相棒なんだ。オマエが何をしようが、絶対に切れないからな」
『そ、そうなのです! [シン]のマスターは……[シン]の大切な人は、マスターだけなのです!』
『……関係ない』
「っ!? あぐ……っ!?」
チクショウ……締め上げる力を強くしてきやがった。
『っ! このおおおおおおお! マスターを離せえええええええッッッ!』
今まで見たことのないほどの怒りの表情を見せ、[シン]は[神機軍師]に突撃した。
『……[神行太保]の愛を一身に受ける存在……ムカツク』
「ああああああああああッッッ!?」
さらに締めつけが強くなり、俺の身体がミシ、ミシ、と
クソ……本気かよ……っ!
その時。
「クク……【カイロス】」
中条がくつくつと笑いながらそう告げた瞬間、俺の身体にまとわりついていた大蛇の影は、一瞬にして消え去った。
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