第351話 クリスマスパーティー②

「「「「「「「「「メリークリスマス!」」」」」」」」」

「「「「うおおおおおおおおおっ!?」」」」


 現れたのは、扉の両サイドからクラッカーを鳴らすカズラさんの弟妹きょうだいのタカシとニコちゃんミコちゃん。

 さらに、カナエさんと同じくミニスカサンタの衣装を着たサクヤさん、サンドラ、プラーミャ、カズラさん、土御門さん、そして……“悠木”だった。


「え、ええと……みんな、どうしてその恰好を……?」


 男子を代表して、俺はみんなにおずおずと尋ねてみる。


「ふ、ふふ……! 私は知っているぞ! クリスマスパーティーでは皆、サンタやトナカイの衣装を着るのだと!」


 顔を真っ赤にしたサクヤさんが腰に手を当て、大声で宣言する。

 い、いや、あながち間違ってはいないですけども!?


「そうです。それに、この衣装のほうが男子には喜ばれますから」


 そう言うと、カズラさんが少し胸をはだけた。

 も、もちろん男子は大喜びですけど!?


「ホ、ホホ……恥ずかしい……!」


 そして土御門さんに至っては、扇で顔を隠して俯いてしまった。

 ですよね! 恥ずかしいですよね!


「ネ、ネエ……コレって、ひょっとしテ……」

「ど、どうやら少し違うみたいですわネ……」


 サンドラとプラーミャが、不安そうな表情でヒソヒソと話をしている。

 あー、あの二人は騙されたんだな?


「ゆ、悠木はどうして……?」


 いや、もちろん悠木が今日のクリスマスパーティーに参加することは当然知ってたけど、まさか悠木までミニスカサンタの衣装を着るとは思わなかった。

 い、一応、この中では一番常識人だと思っていたのに……。


「だ、だって……このほうが喜ぶからって……!」


 手で顔を覆いながら指差したその先には、カナエさんの姿があった。

 犯人はあなたですか……。


「ワ、ワタクシ達ばかりがこのような恰好では、不公平ですワ! ヨーヘイ達も早く着替えてきてくださいまシ!」

「「「「へ……?」」」」


 サンドラ達に衣装を手渡され、俺達は呆けた声を漏らした。

 え、ええとー……これは、トナカイの衣装? だと思うけど、アレ? アオイだけサンタ?


「ふふ……更衣室までご案内します」

「「「「は、はあ……」」」」


 恭しく一礼したカナエさんが、俺達を更衣室へと案内する。

 そして……うん、嫌な予感しかしない。


「こちらでお着替えを済まされましたら、また会場へお越しくださいませ」


 そう告げると、カナエさんは会場へ戻って行ってしまった……。


「と、とりあえず着替えてみるか……」

「そ、そうだな……」


 俺達は手渡された衣装に着替えをする……着替え……って!?


「な、なんだよコレ!?」


 いざ衣装を広げてみると、トナカイの被り物にトナカイの手足の形をしたグローブとブーツ、それに競泳用の水着みたいな茶色のパンツだった。

 オマケに、真っ赤な鼻をイメージしたボールみたいなものに、ゴム紐タイプの蝶ネクタイまで……。


 すると。


「あああああ!?」

「ど、どうしたアオイ!?」

「ボ、ボクの衣装、ミニスカサンタだよ!?」

「「「ええー……」」」


 アオイの叫びに、俺、中条、加隈は変な声を上げた。

 コレ……絶対に俺達を笑いものにする気じゃん……。


「ク、クク……よかろう! これがクリスマスパーティーの正装だというのなら、甘んじて受け入れるのみ!」

「「「中条!?」」」


 あああああ!? 中条の中の常識が、非常識に塗り替えられていく!?

 ただでさえ中条の常識は真っ白な状態なんだから、こういった間違った注意は止めろよな!?


「う、うん! ボクも負けてられないもんね!」

「アオイ!?」


 お前は一体、誰と争うつもりなんだよ!?


「ヨーヘイ……諦めようぜ……多分、俺とお前が抵抗したところで、痛い目に遭うのがオチだろ……」

「加隈……」


 乾いた笑みを浮かべた加隈が、ポン、と俺の肩を叩く。

 うう……やっぱり受け入れるしかないのかあ……。


 で、俺達は渋々衣装に着替えたわけだけど……。


「は、恥ずかしいな……」


 ミニスカサンタの衣装に着替え、顔を真っ赤にしながらモジモジするアオイ。

 アオイが男だと知らなかったら、間違いなく鼻を伸ばしていたことだろう……って!?


「お……おお……!」

「待て加隈! 落ち着け!」


 全力で見惚れている加隈が、ゆっくりとアオイに近づきながら手を伸ばしたので、俺は慌てて止めた。

 というか、俺達はトナカイの衣装を着てるんだぞ!? 完全にヤバイだろ! アウトだろ!


「クク……スースーするな」

「当たり前だろ! 俺達はパンイチなんだぞ!?」


 うう……この姿を、これからサクヤさん達に見られるなんて、考えるだけでもつらすぎる……っ!


「ま、まあまあヨーヘイくん、みんな待ってるからそろそろ行こうよ、ね?」

「アオイ……」

「そ、それで、その……ボク、似合ってるかな……?」


 頬を赤らめながら、上目遣いで尋ねるアオイ。

 こ、これ、俺はどう答えればいいんだ!?


 そのまま『似合ってる』って答えるのが正解なのか、それとも、アオイが男であることを踏まえて『似合ってない』と答えるべきなのか……。


「そ、その……あ、あくまで客観的に見てってことなら、似合ってる、と思うぞ……?」


 俺はできる限りアオイが傷つかないようにと、性別なんかも尊重してそう答えると。


「! う、うん! ……えへへー、ヨーヘイくんに褒められちゃったよ……」

「お、おう……」


 そうかー、ここは褒めるのが正解なのかー……アオイ、お前はそれでいいのか!?


「じゃ、じゃあ行こ!」

「わ!? ちょ!?」


 俺はアオイに腕を引っ張られ、中条と加隈は俺達の後を追いながら、更衣室を出てパーティー会場へと向かった。

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