第322話 クリスマスの約束
「土御門さん……大丈夫、だろうか……」
賀茂のいる第二十階層へと向かう中、俺はポツリ、と呟く。
「フフ……シキなら大丈夫ヨ。それに見たでショ? あの子の
「ま、まあそうなんだけどさあ……」
苦笑しながらプラーミャはそう話すけど、それでも一対八、多勢に無勢だ。
「それに、シキが連中の仲間のフリをしてたのだって、連中の実力を見極めてたからヨ?」
「そうなのか!?」
「ソ。その上で倒せるって判断したんだから、ヨーヘイは気にしなくてもいいノ」
何だよ……だけど、土御門さん
もし思惑がバレたら、それこそどんな目に遭ってたか分からないだろうに……。
「マア、危険を感じたらすぐに離れるようにっテ、
「そ、そうか……だけどプラーミャって、意外とお節介で仲間想いだよな」
「ッ! ヨーヘイに言われたくないわヨ!」
「イテッ!?」
何故か顔をしかめたプラーミャに、思い切り蹴られてしまった……。
というか、相変わらず俺にだけは容赦ないなあ……。
「……サンドラ。どうやら本気で警戒しなければならない時がきたようだぞ」
「……そうですわネ。いつかこんな時が来るとは思ってましたけド……」
? サクヤさんとサンドラ、小声で何を話してるんだ?
ま、まあいいか……。
「だけど、早く賀茂カズマをやっつけて、クリスマスの準備したいね!」
隣に並んだアオイが、ニコニコしながらそんなことを言ってきた。
というか、緊張感のない話題だなあ……まあ、暗いよりは全然いいけど。
「そうだな。いい加減、こんな面倒なことはサッサと片づけないとな。それに、プレゼントも用意したりしないといけないし……っ!?」
そう話した瞬間、サクヤさん、サンドラ、そしてアオイが瞳をキラキラさせてコッチ見てる!?
「そそ、そうだな! わ、私ももちろんプレゼントの準備をしているとも! うん!」
「とと、当然ですワ! か、覚悟するんですわヨ! ヨーヘイ!」
「うわあ……ヨーヘイくんのプレゼント、楽しみだなあ……!」
顔を真っ赤にして焦るサクヤさんとサンドラに、まるで俺からプレゼントをもらうことが既定路線だとばかりに妄想を始めるアオイ。
いやコレ、みんなの期待値がメッチャ高くない?
「マ、マア……
嘘吐け。じゃあなんでさっきからソワソワしながら、コッチをチラ見してやがるんだよ。
「クク……クリスマス、か……」
すると中条が、くつくつと思い出し笑いをしていた。
俺はそんな中条をからかおうかと思ったけど、よくよく考えたら中条の過去は結構悲惨なので、あえて話題を振るのは止めた。
いやだって、『攻略サイト』の中条のプロフィールによると、孤児だった中条は小さい頃から施設で育って、小学生になろうかって時に『ユグドラシル計画』の一つである“全国民
しかも、計画の主任研究者だったサクヤさんのお母さんが他界したことで『ユグドラシル計画』が中断して、その隙にメイザース学園の学園長で、同じく『ユグドラシル計画』の研究者の一人だった“麻岡マキ”に連れていかれてさあ……。
挙句、サクヤさんのお母さんの意志を歪曲して引き継いだサクヤさんのお父さん、藤堂マサシゲの研究を入手しろと、麻岡マキからただの捨て駒として命令されて……。
「む、な、なんだ?」
「へ? あ、ああいや、何でもない……」
「クク、変な奴だな」
くそう、不覚にも中条に同情して、泣きそうになっちまったじゃねーかよ……。
というか『ガイスト×レブナント』に登場するキャラって、どんな不幸自慢だよってくらい不遇な奴が多いんだよなあ。
あのいつもヘラヘラしながらアオイのケツ追っかけてる加隈だって、それなりに重い設定があったりするし。
いくらイベントや面白くするための設定とはいえ、このゲームを作った連中は、絶対に人の心を無視したクズ野郎だと思う。
「そ、それで! 中条も当然クリスマスパーティーには参加するんだろうな!」
「クク、我も一緒でいいのか?」
「何言ってやがる! お前がいないと始まらないだろうが!」
そう言って、俺は半ば強引に中条と肩を組んだ。
コイツも、俺と一緒にサクヤさんを守ってくれると誓ってくれた、大事な
「クク……全く、貴様という奴は……よかろう! ならば我の[デウス・エクス・マキナ]で、見事に余興を務めてみせようではないか!」
「いや、何やらかす気だよ!?」
忘れてた……コイツ、今まで壮絶な人生を送らされてきたせいで、あんまり一般常識が通じない設定だった……。
「フフ……クリスマス、楽しみだな」
「サクヤさん……はい!」
肩にポン、と手を置いたサクヤさんに、俺は元気よく返事をした。
「ヨーヘイ、ですけどその前ニ」
「ああ……賀茂を倒して、スッキリしないとな」
そう言って、次の第十五階層へとたどり着くと。
「……へえ」
そこには、大谷姉妹と佐々木キョウカ、そして、小森先輩が待ち構えていた。
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