第308話 カズラさん
「……そうですか」
いつもの十字路でサクヤさんと合流し、“
薄々分かっていたこととはいえ、やはり賀茂の奴は小森先輩以外のヒロインについても色々とやり取りをしていたみたいで、その数は学園の内外合わせて十四人。
というか、そんなにヒロインばかりを仲間にしてどうすんだよ。
しかも、その中にはあの“伊藤アスカ”が含まれていたし……。
「……つまり、それだけの人数が賀茂と何らかの関与があるってことかあ……」
「ああ……その上で、今日は“
「聞き取り、ねえ……」
多分、“
そんな簡単に話せるのなら、最初からアクションを起こしていたはずだから。
「ですが、“
「ああ、その点については抜かりない。というのも、接触するのは
「へ……?」
サクヤさんの説明に、俺は思わず気の抜けた返事をした。
「ふふ……“
「あ……!」
サクヤさんの言葉に、俺はハッ、となる。
確かに“
「それで……どうする?」
サクヤさんが俺の顔を覗き込みながら尋ねる。
「……ちょっと別件で調べていることもあるので、そちらの情報と合わせてってことになりますけど、多分、賀茂を潰すことになるかと」
いや、多分じゃなくて
氷室先輩の解析結果を聞いてからとはいえ、ヒロインだけを……それも十四人もかかわりがあるなんてあり得ない。
絶対に、何か弱みを握られ……って。
「あ、そういえばサクヤさん。あの伊藤アスカ
「む? ああ……そういえば、彼女は“
「そうですか……」
……なら、他のヒロインは何も言わないかもだけど、伊藤アスカなら話してくれるかもしれないな。
「サクヤさん、あの施設って、仮に強力な
「何を言い出すかと思えば……あの施設には何人もの“
そう説明すると、サクヤさんが肩を竦めた。
だけど、これは伊藤アスカと交渉する上で、大きな交渉材料になりそうだ。
「よっし!」
俺は気合いを入れるため、パシン、と両頬を叩く。
「サクヤさん。今日の放課後、俺達のチームは予定変更です。施設に収容されている伊藤アスカに会いに行きましょう」
「分かった。なら私は、お父……学園長に面会の申請と、カナエさんに連絡して車を手配しておこう」
「ありがとうございます」
さて……伊藤アスカは、何を語ってくれるかな……。
◇
「……ということで、これが[ポリアフ]の解析に引っ掛かった人達です」
昼休みになり、俺と氷室先輩はみんなを先に食堂に行かせ、廊下の陰で話をしていた。
もちろん、昨日お願いしたヒロインの解析結果についての報告を受けるために。
「はは……ものの見事に、“
氷室先輩の[ポリアフ]の解析に引っ掛かったヒロインの数は九人。
“
「……これだけの数の生徒を引き入れているなんて、少々厄介ですね……」
「ええ……サ……先輩の話では、今日中に“
「ですが、それってまずくないでしょうか……」
俺の話を聞いた氷室先輩は、口元を押さえながらポツリ、と告げた。
「というと?」
「よく考えてみてください。“
「ああ、それについては、変装や擬態ができるスキルを持つ“
「なるほど……」
俺の説明に、氷室先輩が納得するように頷いた。
「その上で、今日の放課後に伊藤アスカ
くそう、キッチリ名前呼びを強要してくる。
「そうですね……ですが、私もご一緒してもよろしいのですか?」
ん? 名前呼びは強要するのに、同行に関しては遠慮がちって何か変だな……。
「ええと……どうしてですか?」
「事情を知る者が最低でも一人、賀茂カズマの近くにいたほうがいいかと。何かあった場合、すぐに対処することもできますし、場合によっては……」
すると、氷室先輩が俺のすぐ傍に寄って耳打ちする……って!?
「カ、カズラさん!?」
「ふふ……大丈夫、ですよ?」
ス、と離れると、氷室先輩がニタア、と嗤った。
「……絶対に、無茶しないでくださいね? カズラさんだって、俺の
「はい……その言葉だけで充分です」
氷室先輩……
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