第299話 最強クラスの精霊(ガイスト)

■???視点


「クソッ! あの野郎、またオレの先回りをしやがって!」


 家に帰るなり、オレは部屋の壁を拳で殴った。


『はう……マスター……』


 すると[  ]が、心配そうにオレを見つめる。


「……まあ、元々アイツの全部を奪ってやることには変わりないんだ。むしろ、アイツにアイテムも何もかも回収させたことで、オレの手間が省けたって考えればいいか」

『はう! そうなのです! アイツを倒して、根こそぎ手に入れてやるのです!』


 オレの苦し紛れの言葉に、[  ]は全力で同意した。

 はは……全く、可愛い道具・・だよ、お前は。


「んじゃ、手始めにアイツの手足をもぎ取る・・・・・・・・ところから始めてみるか?」


 口の端をニイ、と吊り上げてそう呟くと、オレはスマホを取り出して電話をかける。


『……はい、大谷です……』

「そんなのは分かってるよ。それよりオマエにちょっとやってほしいことがあるんだけど」

『っ!?』


 そう告げると、スマホ越しに大谷妹が息を飲む音が聞こえた。


「はは、今回は・・・いつもに比べりゃ全然楽勝だから、そんな身構えなくってもいいって」

『ほ、本当……?』

「おう。もちろん、オレへの奉仕・・とかも特別サービスで免除してやるしさ」


 まあ、ソレ・・については姉のほうにさせるけどな。


『そ、それで、私は何を……?』

「おっと、そうだったな。オマエ、小森のチビと協力して、そうだな……あとでメッセージを送るから、そこに書いてあるものを手に入れてこい」

『…………………………』


 ん? 返事をしないな。


「そうかー……つまりお前は、『壊れたお姉ちゃんのペンダント』はもう捨てていいんだな」

『っ!? やる! やりますから!』


 はは、最初っからそう言えばいいのに。


「んじゃ、よろしくな」


 そして、俺は通話終了のボタンをタップした。


『はう! バカな女なのです! 最初からマスターの指示に従えばいいのです!』

「ホントだよなー、そんなんだから、俺に“キーアイテム”を奪われちまうんだよな!」


 そう言って、俺と[  ]は腹を抱えて笑い合う。


「ははははは! ……おっと、サッサとメッセージを送っておかないとな」


 俺はメッセージを打ち込み、大谷に送信……ああそうだ、念のために小森にも同じメッセージを送っておこう。

 ということで、宛先に小森も追加し、今度こそメッセージを送信した。


「はは、あの三人は分からねーけど、少なくともアイツ・・・に関しては姉を何とかすれば大丈夫だろ。となると、厄介なのは残りの二人だよなあ……」


 さすがに二人同時に真正面から相手したら……って、別にオレが戦う必要はねーか。

 それに、数で押し切ったらあの二人・・・・も潰れるだろ。


 で、残るアイツ・・・はこのオレがキッチリトドメ刺せばいいか。

 それに、いくらアイツ・・・が予想外の精霊ガイストに進化していたとしても、オレの[  ]には敵うはずがない。


「だって……オレの[  ]は、『ガイスト×レブナント』において最強の幽鬼レブナントなんだからな」


 そう呟くと、[  ]が微笑みながら寄り添ってきた。


 だけど夏休みの終わり頃、エゴサして『攻略サイト』の存在を知った時に、オレは怒りよりも先に驚いたね。

 まさかオレがモブですらない存在で、なのにオレは最強の精霊ガイストの……いや、幽鬼レブナントのマスターだったんだから。


 あとは、“グラハム塔”領域エリアで効率よく周回してレベルをカンストさせ、一対一ならあの[関聖帝君]にだって負ける要素はない。


『はう……ですがマスター、これ以上ヒロインを増やすつもりなのですか……?』


 先程の大谷とのやり取りを一部始終見ていた[  ]は、口を尖らせながらプイ、と顔を背けた。

 ウーン……なんでオレの幽鬼レブナントは、こんなに嫉妬深いんだ?


 ……まあ、幽鬼レブナントなのに手を出した・・・・・オレが悪いんだけど。


「はは……まあまあ、まずはアイツ等をメチャクチャにしないと、オレとお前のハピエンが遠のいちまうからな。だから、仕方ないんだよ」

『はうはう!? な、なら仕方ないのです……』


 はは、相変わらずチョロいな。アッサリ機嫌直したぞ。


 つーか、最弱のクソザコモブ・・・・・・のくせに、あんな可愛いヒロインばかり仲間にしてやがるからいけないんだよ。

 だけど……やっぱヒロイン全員、既にアイツのお手付きなのかなあ……。


「とにかく、明日から忙しくなるな」

『はう! 大丈夫なのです! マスターには[  ]がいるのです! 最強なのです!』

「おう! 当然!」


 俺の胸に飛び込んできた[  ]を抱き留めると。


『ん……ちゅ、くちゅ、ちゅぷ……』


 [  ]の唇に舌を滑り込ませ、絡め合う。


『んん……ぷあ……マスター……』

「オレには……この“賀茂カズマ”にはお前だけが頼りなんだ。だから、頼んだぞ?」

『はう! もちろんなのです! この[禍津日神まがつひのかみ]に任せるのです! だから……はん……んちゅ……は……っ……』


 この愛しい幽鬼レブナントを強く抱きしめ、オレ達は激しく求め合った。

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