第83話 ジークフリート
「よし、今日はここまでにしよう」
結局、俺達は“グラハム塔”
さすがにここまで来れば、立花がソロで攻略するってのは無理だけど、それでも主人公らしく、俺達となかなかの連携を見せてくれた。
「ま、まだいけます!」
「立花くん、君の熱意は買うが、さすがに初めて
「そ、そうですか……」
すっかりやる気を見せている立花に、先輩は苦笑しながらたしなめる。
立花の奴も、第一階層の時とは打って変わって、今では先輩の指示に素直に従うようになっていた。
「はは、ところで立花、ここまで結構な数の
「あ、そ、そうだね!」
そう言うと、立花はガイストリーダーを取り出して……うん、どうやら使い方が分からないみたいだな。
「ちょっと貸してみ。ここをこうしてだな……」
「えへへ、望月くんありがとう!」
立花がメッチャ至近距離で微笑むが、色々と間違えそうになるからできれば少し離れて欲しい。
「ホラ、これが[ジークフリート]のステータス画面だ」
「ふああああ……!」
—————————————————————
名前 :ジークフリート
属性 :
LV :14
力 :C-
魔力 :C-
耐久 :C-
敏捷 :C-
知力 :C-
運 :C-
スキル:【グラム】【竜の恩恵】【竜の息吹】
【竜特効】【チェンジ】
—————————————————————
……うん、『まとめサイト』で知ってはいるものの……なんだよこのステータス。完全に超バランスタイプじゃねーか。
しかも、最終的にはこのステータス、全部“SS”まで成長するんだぞ? 本当にふざけないで欲しい。
それよりなにより、このスキルの数々だ。
なんで属性が“
オマケにこれらのスキル、全部とんでもないものばかりだしなあ……。
「ど、どうかな……ボクの[ジークフリート]って、その……強い、かな……?」
立花は不安そうな表情でおずおずと尋ねる。
だけど、これを見て弱いなんて答えが出るわけがないだろ。
「バッカ、こんなステータス反則だろ! メチャクチャ強いじゃねーか!」
「ホ、ホント! 良かったあ……」
俺の答えを聞き、立花がホッと胸を撫で下ろした。
「ん? だけど、なんでそこまで強さにこだわるんだ?」
「それは! ……そ、その……強かったら、これからも望月くんが、一緒にいてくれるんじゃないかって、そう思って……」
…………………………グハッ!?
「お、おう……まあ、別に強くなくても、こうやって一緒に
「っ! あ、ありがとう! うわあ……嬉しいなあ……!」
立花は、本当に嬉しそうな表情で、小さくガッツポーズした。
いや、ホント勘違いするぞコノヤロウ。
「望月くん、ちょっとコッチへ……」
先輩に手招きされたので
「な、何を……!?」
「立花くんは、本当に男子、なんだろうな……?」
「もしくは、ヨーヘイは男の子が趣味、ではないですわよネ……?」
こ、この二人は……!
「プークスクス!」
チクショウ! プラーミャめ、腹を抱えて笑いやがって! 覚えてろよ!
◇
「ふう……」
風呂から上がった俺は、自分の部屋に入るなり扉を閉めて溜息を吐いた。
そして。
「あああああ! なんで俺は主人公と仲良く、キャッキャウフフしてるんだよ!」
膝から崩れ落ち、思わず床を叩いて叫んだ。
いや、おかしいだろコレ! 俺とアイツ……立花は戦う運命にあるんじゃないのかよ!
ていうか、そもそもなんでアイツが一-三に転校してくるんだよ! あり得ないだろ!
『はう! マスター、[シン]はジークおじさまと戦うのですか?』
そう言うと、[シン]が不安そうな表情でそう尋ねてきた。
俺が立花と戦うって? それは…………………………どうなんだ?
「ウーン、今のところ、よく分からないなあ……」
俺は腕組みしながら首を
ゲームのシナリオ通りなら、今週末の昼休みに、俺が立花にケンカを売ることになるんだろうけど……うん、俺がアイツとケンカをするイメージが全然
「い、今のところは大丈夫だと思う……ぞ?」
『はう! 良かったのです! ジークおじさまは優しいのです!』
「そうなのか?」
『ハイなのです!』
まあ、立花もあんな様子だし、[シン]も嬉しそうだから……ま、いっか。
とはいえ、もう一度俺と主人公……立花とのイベントについておさらいしておくかあ……。
俺はスマホを取り出し、『まとめサイト』を開く。
「えーと……『一-二のゴブリン』っと」
何度見ても悲しくなる俺のイベント名のタグをタッチし、ページを開く。
まあ、イベントに関しては簡単にまとめるとこうだ。
主人公が転校してきた週の金曜日、昼休みにヒロインや仲間と食堂で楽しくランチをしてるところに、突然俺が[ゴブ美]を召喚したまま乱入する。
で、食堂で主人公と戦闘になるんだけど……うん、ステータスの差が歴然なので、俺はアッサリ倒され、あえなく停学処分になってイベント終了。
そして、それが評判になってヒロインと仲間キャラの好感度が上がるんだよなあ……俺、完全にかませ犬じゃんかよ……。
「……まあ、金曜日の昼休みは特に注意しとかないとな」
スマホをベッドに放り投げると、俺はゴロン、と横になってそう呟いた。
すると。
『えへへー、[シン]は今日も頑張ったのです! たくさん疾走丸を飲んだのです!』
そう言って、[シン]は俺の隣に同じように寝転がる。
「……それに関しては、俺は対価を支払ったはずだが?」
そう、[シン]ちゃんと帰りにルフランでジェラートを食わせてやった。なのにコイツは、さらに何かを要求しようというのか?
『はう!? そ、そうなのですけど、そのー……』
[シン]は何故か少し遠慮がちに、ス、と自分の頭を俺の身体にすり寄せてきた。
あー……つまり、そういうことかー……。
「はは、そうだったな。[シン]、よく頑張ったぞ」
『えへへー、なのです』
俺は[シン]の頭を優しく撫でてやると、[シン]は嬉しそうに目を細めた。
全く……なんで俺の
そんな[シン]を見つめながら、俺も口元を緩ませていた。
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