蛇足編 《墓参り》
――王国の大将軍ロランは自分の父親と叔父の墓に訪れていた。彼の父親である「シン」は王国の宰相を務めた人物だが、シンが裏で白面を利用して王国を支配し、その弟のシャドウも彼に協力していた。
シンの一族はこの国が建国した時から代々仕えてきたが、実際の所は彼等こそが王国を裏から支配してきた存在だと言える。王国が世界の国々の中でも指折りの強国として認識されるようになったのは彼等のお陰でもある。シンの一族が長年に渡って王国の裏社会を牛耳り、そのお陰で王国はここまで発展した事は間違いない。
しかし、彼等の行為は国のための貢献というよりも自分達の地位を守るための行動に等しい。彼等が忠誠を誓うのは王族ではなく、この国その物である。聞こえはいいが実際の所は彼等は自分達にとって都合がいい環境を維持するために動いていただけに過ぎない。
「父上、叔父上……お久しぶりです」
ロランはシンが管理していた屋敷に訪れ、そこには二つの墓が並んでいた。重罪を犯した二人が墓を作る事を許されたのはロランが嘆願したからであり、国王も特別に許可してくれた。
しかし、当の国王はシンの事を信頼していただけに彼に裏切られたと知った時はショックのあまりに体調を崩して何日も寝込んでしまった。そしてロランも自分も父に従って国王を裏切るような真似をしていたため、彼に合わせる顔が無くて牢獄で生涯を過ごすつもりだった。
だが、王国に危機が訪れたと知った彼は再び大将軍の座に戻り、これからも王国を守るために戦う事を誓う。父親や叔父とは決別する形になったが、それでも彼は自分なりの方法でこの「国」を守る事を誓う。
「父上、叔父上、今更貴方達に許しを請うつもりもありません。しかし、私は貴方達の事を「悪」だと思った事はありません」
方法はともかく、シンもシャドウも彼等なりの方法でこの国の平穏を保とうとしていた事は事実だった。実際に二人が生きている間は色々と問題はあったが、国は上手く立ち回っていた。
それでもロランは二人のやり方の全てを認めたわけではなく、これから自分で考えて自分なりの方法でこの国を支え続ける事を誓う。
「どうか見守っていてください。私はこの国の大将軍として恥じぬ生き方をします」
言いたいことを告げるとロランは二人の墓に頭を下げ、その場を立ち去った。この時に二人の墓には杯が置かれ、その杯には二人とも好きだった酒がくべられていた。
ロランが後ろを向いた時、墓の前に置かれた杯の酒は何時の間にか消えてしまい、そして彼を見送るように墓の上に人影が現れた。しかし、気配を感じてロランが振り返った時には墓の上の人影は消えていた――
※明日で物語は完結します。どうぞ最後までお楽しみください。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます