最終章 《お別れ》
――最初にアルトが立てた作戦では地上の討伐隊がダイダラボッチの注目を引き、その隙に飛行船がダイダラボッチの上空へ移動し、ナイを投下する。ナイがダイダラボッチの頭部を狙い、それに失敗しても魔導大砲でダイダラボッチの背中に撃ち込む。
作戦通りに行けばダイダラボッチは巨大剣に追い込まれ、その後に飛行船が体当たりを仕掛けてダイダラボッチを巨大剣ごと押し倒すのが作戦内容だった。結局はナイの尽力と討伐隊の命懸けの猛攻でダイダラボッチを死の寸前まで追い詰める事ができたが、結局止めを刺したのはアルトの乗っていた飛行船だった。
この一件でアルトはダイダラボッチを倒した伝説の王子として語り継がれる事になるのだが、それはまた別の話である――
「――もう行くのか?」
「うん、本当はもう少しゆっくりしたいけど、そろそろ出発の時間だから」
「たくっ、いきなり帰ってきたと思ったらもう行っちまうのか……英雄様はお忙しいんだな」
「ふふふ……私は久しぶりに会えて良かったですけどね」
「…………」
イチノの陽光教会にてナイはドルトン、イーシャン、ヨウ、そしてインと再会を果たす。インは気まずい表情を浮かべているが、そんな彼女にヨウは囁く。
「イン、ナイに渡す物があるのでしょう」
「は、はい……ナイ、どうぞこれを受け取って下さい」
「これは?」
ナイはインに渡された物を見て不思議に思い、彼女が差しだしたのは聖水が入った瓶だった。どうして自分に聖水を渡すのかとナイは不思議に思うが、この聖水を作ったのはインだとヨウは説明する。
「貴方の役に立ちたくて彼女は作った物ですよ」
「インさんが僕のために?」
「ええ……その、貴方はよく怪我をすると聞いているので、もしも良かったらお使いください」
「ちなみに俺も手伝ったんだぞ。効果は保証してやる」
「あ、ありがとうございます!!」
イーシャンもインの聖水作りに協力したらしく、二人の贈り物にナイは有難く受け取って頭を下げる。そんな彼の姿を見てインは少しでも役に立てたのかと安堵し、その一方でヨウはナイを見て笑みを浮かべた。
(もう夢は見なくなった……ナイ、貴方は遂に最悪の運命に打ち勝ったんですね)
ヨウを長年苦しませていた「予知夢」は昨日の時点から見えなくなり、彼女はナイが自分の運命に再び打ち勝ったと気付く。改めてナイを見るともう立派な「大人」に成長している事を知り、教会に世話をしていた時が懐かしく思える。
一人前の男に成長したナイの姿に喜んでいるのはヨウだけではなく、ドルトンも一緒だった。外見も正確も全然違うのだがドルトンはナイの姿にアルの若い頃の姿と重なり、今の彼は昔のアルのようにたくましい男に育った事を嬉しく思う。
「ナイ、時間ができたらまた共にアルと村人の墓参りに向かおう」
「はい!!約束します!!」
「ビャクにもよろしくな」
「ナイ……貴方の人生に幸が有らん事を」
「貴方は立派な方です……私なんかよりもずっと」
大人達に見送られながらナイは教会を後にすると、最後に彼は少しだけ寂しい表情を浮かべながらも頭を下げる。そして仲間達が待つ飛行船へ向かった――
※最終回ではないです。まだ続きがあります。
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