過去編 《そして現代へ……》

――赤子をアンが救ってから16年近くの時が流れ、彼女は人里から遠く離れた場所で暮らしていた。コボルト亜種を仲間にした後も彼女は様々な魔物を従え、用済みと判断した魔物は捨て駒として扱う。


既に彼女の傍にはコボルト亜種の姿はなく、その代わりにトロールたちの姿があった。色々と魔物を仲間にした結果、彼女が配下にしたのは魔物の中では知能はそれほど高くはないが腕力と耐久力が特化しているトロールを選ぶ。


アンが契約を交わしたトロールは最初の頃は知能が低いせいでまともに命令も聞かなかった。しかし、長年の調教と魔物使いの能力の影響でトロールたちは人語を理解する程の高い知能を得た。



「ウガァアアアッ!!」

「フガァッ!!」

「フンッ!!」



山奥にてトロールの群れが石斧を振りかざし、木々を伐採する。本来のトロールは肥え太った肉体で、常に何か餌を口にしていなければ暴れ狂う性格だが、アンに調教されたトロールたちは空腹時でも理性を保つ事ができた。


トロールたちは次々と木々を薙ぎ倒すと、彼等は倒木を運び出す。目的地は洞窟であり、その場所にはアンが待機していた。この16年の間にアンの風貌も代わり、薄汚れた衣服に自作の杖を握りしめていた。



「ウガッ、ウガッ……」

「フウウッ……」

「……置きなさい」



斬り倒した木々をトロールたちはアンの前に運び込むと、それを見たアンは木々を置くように促す。命令通りにトロール立ちは木々を洞窟の前に置くと、洞窟の中から恐るべき姿をした生物が現れる。




――シャギャアアアアッ!!




山の中に咆哮が響き渡り、その鳴き声を耳にしただけで木々に止まっていた鳥たちは慌てて飛び上がり、動物達は恐れを為して走り去る。


アンが16年以上も山奥に留まり続けた理由、それはある生物を従えて制御するためであった。その生物を最初に発見した時、アンは確信を抱く。この生物を味方にすればどんな相手にも負けず、この国を支配する事もできると――






――この約1年後にアンは辺境の地を離れ、トロールの群れと山奥に暮らしていた「生物」を突き従えて王国に対して侵略行為を開始する。

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