閑話 《ペガサス》

「――なんか行く先々で問題ばっかり起きてますね。この調子だと次の目的地でも面倒事に巻き込まれそうな気がします」

「う〜ん……否定できない」

「だ、大丈夫だよ!!もう問題なんて起きないよ……多分」



ゴノを後にした飛行船は次の目的地に向けて出発し、現在は移動速度を大幅に落として夜間飛行をしていた。旧式のフライングシャーク号は出せる速度は一定だったが、新型のスカイシャーク号は速度も自由に調整できた。


飛行船の移動速度を落とせば長時間の移動ができるが、その代わりに飛行船を浮上させる際に使用する風属性の魔石の消耗が大きくなる。だが、予定よりも出発時間が遅れた事と飛行船がどれだけ移動できるのかを確かめるために現在は速度を落としている。



「ゴノに立ち寄ったせいで予定よりも大分遅れてしまいましたが、この調子で移動すれば予定日までにはアチイ砂漠に到着するそうです。それまでの間は自由に過ごしてください」

「自由にと言われても……」

「こんな狭い飛行船じゃ訓練も碌にできませんし、第一にナイさんは正式な王国騎士でもありませんからね。私が話し相手になってあげてもいいですけど、リーナさんに嫉妬されるのも面倒なので二人で夜間飛行を楽しんだらどうですか?」

「夜間飛行……そうか、もう夜を迎えるのか」



ナイは外が暗くなっている事に気付き、夜を迎えれば騎士団員は部屋で待機しなければならない。ナイは医療室を後にすると自分の部屋に戻る途中、不意に甲板の方が気になって足を剥ける。



「うわっとと……ちょっと寒いな」



飛行中の間は甲板の出入りは禁じられているが、現在は飛行船の速度を限りなく落としているため、人が吹き飛ばされない程度の風圧だった。間違っても足を踏み外さないように気を付けながらナイは甲板に辿り着くと、不意に彼は外の景色を見て感動を覚える。



「うわぁっ……本当に高いな」



窓から外の光景を眺める事はできるが、やはり広い甲板から見る景色の方が壮大さを感じさせた。ナイは吹き飛ばされないように気をつけながら外の景色を眺め、まさか自分が生きている間にこんな乗り物に乗るなど夢にも思わなかった。


飛行船には何度か乗った事は有るが移動中の飛行船の甲板に立った事はなく、基本的には窓から外の景色を眺める事しかなかった。外の景色を眺めながらナイは旋斧に手を伸ばし、昔の思い出に深ける。



(爺ちゃんも鍛冶師だからこの飛行船を見たら喜んでくれたかな……)



亡き養父アルの事を思い浮かべながらナイは空を見上げると、この時にナイは上空の方に違和感を覚えた。ただの見間違いかもしれないが、上空の方で何か影のような物を見かけた。



(何だ?あれ……まさか!?)



飛行船の甲板から空を見上げながらナイは嫌な予感を感じ取り、視線を凝らして正体を確かめようとした。しかし、影は丁度飛行船の上空に漂う雲の中に紛れて消えてしまう。



(何だったんだ、今の……鳥?いや、そうは見えなかった)



雲の中に隠れた謎の物体にナイは疑問を抱くが、その後は怪しい影は確認できずに船内に戻るしかなかった――






――飛行船よりも遥か上空、雲よりも高い場所に空を飛ぶ生き物が存在した。その姿は背中に取りの様な翼を生やした白馬であり、神話でも有名な存在である「ペガサス」が雲を駆けるように飛んでいた。


ペガサスは人前には滅多に姿を現さず、もしも空を飛ぶ姿を見た人間は大いなる幸運に恵まれるという逸話まであった――






※その日の夕食


ナイ「あ、今日のご飯は僕の好物ばっかりだ!!」(*'ω'*)ワーイ!!←大いなる幸運(?)

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