外伝第10話 対竜種用兵器
――王城の宝物庫に隠されていた
古城から膨大な財宝と更にはオリハルコン製の
人造ゴーレムは元々は魔物に対抗するために作り出された兵器だが、巨像兵の場合は宝物庫の番人という役目だけではなく、竜種を打ち倒すために作り出された最初の人造ゴーレムだと発覚した。しかし、製作の段階で色々と問題が起きた。
まずは巨像兵を造り出すためだけに大量のオリハルコンを使用してしまい、これによって当時の経済は圧迫された。オリハルコンは希少金属で加工するにも相当な技術が必要であるため、当時の王国の財政では1体作り出すだけで精いっぱいだった。そこで2体目以降は大きさを調整し、最終的には人造ゴーレムを造り出す際はオリハルコン以外の素材を使うようになったという。
骸骨騎士は巨像兵の次に作り出された人造ゴーレムであり、その他の人造ゴーレムは特殊な鉱石で作り出された量産型の人造ゴーレムだった。だが、量産型の人造ゴーレムは巨像兵と異なって最初に命じた命令しか効かず、味方であろうが古城に近付く存在は容赦しない。
巨像兵は聖光石を動力にする事である程度の意思疎通はできるが、他の人造ゴーレムの場合は聖光石以外の魔石を動力にしており、しかも外側ではなく内側に動力を内蔵しているので動かす事はできない。比較的にまともに動いたのは骸骨騎士だけであり、この骸骨騎士だけは王族には手を出さない。
結局のところは人造ゴーレムの中で唯一の完成形は最初に作り出した巨像兵だけであり、それ以降の人造ゴーレムは魔物を倒すためだけの兵器としてしか利用されなかった。そして既に巨像兵以外の人造ゴーレムはナイの手によって破壊され、これでもう古城を守護する存在は消えてしまった――
――迷宮都市から帰還した後、アルトは自分のペンダントで起動させた巨像兵を王都まで連れ帰る事にした。正確にはアルトが離れようとしても巨像兵が勝手に付いてきてしまい、結局は巨像兵も一緒に連れて王都に帰るしかなかった。
「ドゴンッ、ドゴンッ♪」
「やれやれ……いい加減に解放してくれないかな」
「だ、大丈夫ですか王子?」
「割と楽しそう」
「うわぁっ……こうしてみると本当に大きいな」
王都の街道にてアルトは巨像兵に肩に担がれた状態で運んでもらい、そのせいで周囲の人々は唖然とした表情を浮かべて彼を見つめる。かなり恥ずかしい姿だがアルトが起動させたドゴンは彼の傍から離れず、結局は移動の際も彼を肩に担いで歩いていく。
どうやらドゴンはアルトの位置を確認する術があるらしく、こっそりと彼が離れようとするとドゴンはすぐに異変に気付いて彼の元に向かう。アルトが命令を与えればある程度の距離を開く事はできるが、あまりに離れ過ぎると勝手にドゴンはアルトの元へ向かう。
外見は大人のようだが実際の所は小さな子供のように自分を起動したアルトを親の様に慕い、決して命令がない限りはアルトの傍から離れようとはしない。一応はアルトが側にいれば危害を与えるわけではないため、仕方なく王都まで連れて行くしかなかった。
「あっ、皆!!お帰り〜!!」
「ナイ君、帰ってきたんだね!!」
「あ、二人とも……迎えに来てくれたの?」
街道を歩いているとナイの元にモモとリーナが駆けつけ、二人は嬉しそうにナイの元に駆け寄ろうとしたがドゴンを目にして驚愕の表情を浮かべる。
「わわっ!?な、なにこの大きくて格好いいの!?」
「きょ、巨人族!?」
「いやっ……ちょっと色々とあってね」
「たくっ……今度は何を連れ込んできたんだい」
二人が巨像兵を目にして驚いていると、今度はバルが聖女騎士団を率いて姿を現す。彼女は巨像兵を見て呆れた表情を浮かべ、他の女騎士達も動揺を隠せない。
「おおっ!?な、何だこれ!?第三王子、巨人族を騎士にしたのか!?」
「こらっ!!第三王子じゃなくて王子様と呼びな!!」
「あいてっ!?バ、バルだって王子と呼んでる癖に……」
「あたしはいいんだよ、ガキの頃から王子の世話をしてきたからね」
「はははっ……まあ、好きに呼んでくれて構わないよ」
約一か月ぶりのバル達との再会にアルトは朗らかな笑みを浮かべるが、まずは王城に戻って報告する方が先であり、一向は王城へと向かった。
――後に巨像兵は王族の守護者として歴史に名前を刻む事になるのだが、それはまだ先の話である。
※これにて本当に完結です。新作の準備のため、貧弱の英雄の物語はここまでにしておきます。
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