第018話 英雄VS人造ゴーレム
「てりゃあああっ!!」
「ぷるっしゃああっ!!」
「ゴルゥッ!?」
大量の水がプルリンの口から放たれ、全身に水を浴びた人造ゴーレムは怯んだ。通常種のゴーレムならばこの時点で身体が溶け始めてもおかしくはないのだが、人造ゴーレムは水を浴びても特に肉体に変化はない。
事前の情報通りに人造ゴーレムにはゴーレム共通の弱点である水は効かない事が判明し、それどころか水を浴びせられた人造ゴーレムは怒りを抱いたのかティナの元に目掛けて突っ込む。
「ゴルルルルッ!!」
「わああっ!?」
「ぷるるんっ!?」
「いかんっ、止まれ!!」
プルリンの放水を浴びながらも人造ゴーレムはティナに近付き、彼女に目掛けて右手の刃を繰り出そうとした。それを見たマホが咄嗟に魔法を放とうとした時、彼女よりも先に人造ゴーレムの前に人影が現れる。
「だぁあああっ!!」
「ゴガァアアアッ!?」
『えっ!?』
強烈な衝撃が人造ゴーレムへと襲い掛かり、派手に人造ゴーレムは吹き飛んで近くの廃墟に衝突する。あまりの威力に衝突した廃墟が崩壊し、人造ゴーレムは大量の瓦礫の中に生き埋めとなる。
攻撃を仕掛けたのは当然ナイであり、彼は岩砕剣を手にしてティナを庇うように立つ。ティナは萎んだプルリンを抱えながらも自分を救ってくれたナイの後ろに隠れ、大量の瓦礫に埋もれた人造ゴーレムの元に視線を向けた。
「わあっ……あ、ありがとうナイ君」
「無事でよかったよ」
「た、倒したのですか?」
「普通のゴーレムだったら間違いなく倒してるはずだけど……」
瓦礫に埋もれた人造ゴーレムの様子を全員が伺うと、すぐに瓦礫の山の一部分が盛り上がり、大量の瓦礫を払いのけて人造ゴーレムが姿を現す。
「ゴルァアアアッ!!」
「わあっ!?凄い怒ってるよ!?」
「怒ってる……か」
「……皆の者、ここはナイに任せるのだ。儂らはどうやら邪魔なようじゃな」
「えっ!?で、でも……」
「大丈夫、皆は下がってて」
マホの言葉に全員は戸惑うがナイは彼女の言葉に頷き、改めて人造ゴーレムと向かい合う。人造ゴーレムの方は怒りを露わにして両手の刃物を構えると、ここで人造ゴーレムの腕に変化が起きた。
「ゴルルルルッ!!」
「な、なんですかあれは!?」
「腕が……回り始めた!?」
「ほう、そんな芸当も出来たのか……」
人造ゴーレムの両腕が回転を始め、まるでドリルのように回転させながらナイの元へ迫る。その光景を見たヒイロ達は驚くがナイは一切動じず、岩砕剣を横向きに構えた。
(落ち着け、焦るな……この一撃で終わらせる)
迫りくる人造ゴーレムを視界に捉えながらもナイは意識を集中させ、この1年の間に覚えた新しい剣技を発動させる準備を行う。ナイは数々の視線を乗り越えてきた事で新しい戦法を編み出し、人造ゴーレムが自分の武器の間合いに入り込んだ瞬間に目を見開く。
人造ゴーレムが両腕を突き出そうとした瞬間、ナイは一瞬だけ聖属性の魔力を活性化させる。要は「強化術」を一瞬だけ発動させて彼は全力の一撃を人造ゴーレムに向けて叩き込む。
「はぁああああっ!!」
「ゴガァッ――!?」
先ほどよりも速く、重く、何よりも圧倒的な気迫でナイは岩砕剣を人造ゴーレムの頭部に目掛けて叩き込む。
――人造ゴーレムの頭部に岩砕剣の刃がめり込み、魔法金属のミスリルの短剣でさえも掠り傷さえ負わせられなかったはずの人造ゴーレムの肉体を真っ二つに切り裂く。
あまりの威力に人造ゴーレムの刃を切り裂くだけではなく、ナイの振り下ろした岩砕剣の刃は地面にめり込んで亀裂を生じさせた。そして左右に切り裂かれた人造ゴーレムは硬直し、やがてゆっくりと地面に倒れ込む。
切断面には人造ゴーレムの核だと思われる「ダイヤモンド」のように光り輝く核が露出し、見事にナイは人造ゴーレムの核を一撃で破壊した。しかも彼はあろう事か岩砕剣を地面から引き抜くと、何ともないように呟く。
「ふうっ……これなら火竜の方がまだ手応えがあったな」
黄金冒険者でさえも倒す事ができなかったという人造ゴーレムをナイは一撃で打ち倒し、岩砕剣を背中に戻した――
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