後日談 《城下町の復興、火竜の経験石》

「ううっ……もう疲れたぞ、テン!!」

「ほらほら、サボってんじゃないよルナ!!あんたの馬鹿力はこういう時に役立てないんでどうするんだい!!」



白面、死霊人形、火竜の襲来によって王都の城下町は大きな被害を受けた。そのため、王都内の兵士達と王国騎士団は街の復興に専念する。


聖女騎士団は一般区の担当を任され、建物の瓦礫の撤去作業を行う。この時に力持ちであるルナは瓦礫を延々と運ぶ事に不満を告げるが、そんな彼女の元に大量の握り飯を持って来たクロネが訪れた。



「皆さん、ご飯の時間ですよ。作業は一旦休んで食事して下さい」

「おおっ!?ご飯か!!テン、これ頼むぞ!!」

「わあっ!?馬鹿、投げるんじゃないよ!!」



ルナは手にしていた瓦礫をテンの元に放り投げ、彼女は咄嗟に受け止める事に成功するが、あまりの重量に危うく潰れかけた。しかし、そんなテンを放ってルナはクロネの元に駆けつけ、両手に握り飯を掴む。



「はぐはぐっ……美味しい!!こんなおいしい握り飯なんて初めて食べたぞ!!」

「あらあら、嬉しい事を言ってくれるわね。いっぱいおかわりはあるから、喉を詰まらせないようにゆっくり食べてね」

「うん!!」

「ちょ、ちょっとあんた……この瓦礫、何とかしな!!」



クロネに頭を撫でられたルナは子犬のように嬉しそうな表情を浮かべるが、その一方でテンの方は両手に抱えた瓦礫を支えるのが限界であり、彼女に早く瓦礫を退かす様に指示する――






――商業区の方では冒険者達と白狼騎士団が復興作業を行い、この際に彼等が対応に困ったのは火竜の死骸だった。火竜は商業区で打ち倒され、未だに解体作業は終わってはおらず、解体する人間達は苦労させられていた。



「全く……これほどの化物がまさか街中に現れるとは」

「しかし、よく倒せたものだな……」

「くそっ……鱗が硬すぎる!!これでは引き剥がすのも苦労するぞ……」



グマグ火山の火竜の解体も時間はかかったが、こちらの火竜の解体も相応の時間が掛かると思われた。しかし、竜種の素材は貴重品であるため、火竜の素材となるとどれほどの価値があるのか想像さえもできない。


この時に火竜の経験石も回収され、グマグ火山の時と違って今回の経験石は魔力を奪われてはおらず、赤々と光り輝き、高熱を帯びた経験石が回収される。この経験石だけでもどれだけの価値があるのか分からず、不用意に破壊すれば内部の魔力ば暴発して大爆発を引き起こす危険な代物だった。



「こ、これが火竜の経験石か……おい、下手に扱うなよ」

「大丈夫だろ、そう簡単に壊れりゃしないだろ」

「ん!?おい、待て……これ、どういう事だ!?」

「どうした!?」



解体作業中に作業員の一人が騒ぎ出し、火竜の経験石が回収された後、更に死骸の方から信じられない物が出てきた。それは紛れもなく、火竜の経験石の欠片である。


回収された経験石には特に傷跡はなく、しかも発見された位置がおかしい。普通は経験石の類は魔物の心臓近くに存在するのだが、見つけ出された経験石の欠片はの方に存在した。



「あ、あり得ない……どうして経験石が分かれてるんだ?」

「いや、分かれてるんじゃない。こいつは別物だ」

「そんな馬鹿な……経験石を二つ持つ生き物なんて聞いた事がないぞ!!」

「でも竜種なら……有り得るんじゃないのか?」



作業員は発見された巨大な経験石と、もう一つの経験石の欠片を見て戸惑う。彼等は知らないが街を襲撃した火竜は古代の火竜の経験石を喰らった存在であり、実は体内に飲み込んだ後も経験石の欠片は取り込まれずに残っていた。


二つの経験石を手にした火竜は急成長を遂げ、最終的にはナイ達の手で倒された。しかし、倒された後も経験石は魔力の輝きを失わず、取り込まれた古代火竜の経験石の欠片も色を取り戻していた。これを意味するのは古代火竜の経験石も魔力を取り戻した事を意味しており、作業員は扱いに困り果てる。





――火竜の経験石の報告はすぐに行われ、とりあえずは経験石は厳重に王城の方で管理し、その一方で古代火竜の経験石の欠片に関しては研究が行われる。だが、後にこの古代火竜の経験石の欠片からとんでもない代物が作り出される事になるなど、この時は誰も予想すらしていなかった。

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