幕間 《意地》

「……お前、そんな顔をしてたのか」

「その声は……ガオウか?」

「よう、この間は世話になったな……」

「ガオウ……」



倒れているゴウカの前に現れたのはガオウであり、彼を見たマリンは少し警戒するが、ガオウは倒れ込んだゴウカの顔を見てため息を吐き出す。



「酷い顔だな」

「むっ、失礼な……こう見えても俺は村一番の男前だぞ!!」

「そういう意味じゃねえよ……まるで初めて敗北を知ったような顔だな」



ゴウカの顔を見てガオウは彼に対する怒りも消えてしまい、あまりにも悔しそうな顔を浮かべる彼の顔を見ていられなかった。明るい態度と言葉とは裏腹に今のゴウカは非常に悔しそうな顔をしていた。


ガオウとしては先日に自分がゴウカに襲われた事もあって彼の顔を見れば殴りかかるつもりだったが、今の彼を見てどうにもそんな気は失せてしまう。本当なら一発殴りたい所だが、今は彼に構っている暇はない。



「動けるようになったらお前も手伝えよ」

「待て、ガオウ……お前、あいつに勝てると思ってるのか?」

「ああ?何を言ってるんだお前?」



ゴウカの言葉にガオウは呆れた様子で振り返り、そんな彼にゴウカは心底不思議そうに尋ねる。ゴウカは自分をここまで追い詰めた存在を前にしてガオウはどうして戦えるのか疑問を抱く。



「奴はこの俺よりも遥かに強いのだぞ……それでもお前は戦うつもりか?」

「はっ……人の事を舐めるんじゃねえよ!!お前より強いからなんだ?俺がビビるとでも思ってんのか!?いつまでも人を見下してるんじゃねえよ!!」

「ぬうっ……!?」



ガオウの啖呵にゴウカは驚愕し、マリンでさえもガオウでは火竜に勝てるとは思えない。しかし、二人にどう思われようとガオウは退くつもりはなく、火竜に挑むつもりだった。



「臆病者と役立たずはそこで黙ってみてろ……俺はな、喧嘩する時は自分より強いか弱いか判断して戦った事なんて一度もないんだよ!!」

「ガオウ……」



ここまでの道中でガオウも相当の怪我を負っていたが、それでも彼は逃げるつもりはなく、火竜へと立ち向かう。その姿を見てゴウカは彼の覚悟を感じ取り、間違っていたのは自分の方だと悟る。


今までゴウカは一度として敗北した事がなく、自分の力が及ばない相手と出会った事で心が折れかけていた。しかし、ガオウの啖呵を聞いて彼は覚悟を決め、傷だらけの自分の肉体に視線を向け、マリンに頼み込む。



「マリン、頼みがある!!」

「えっ……?」



唐突に言葉を掛けられたマリンは戸惑いの表情を浮かべるが、ゴウカは彼女にしか出来ない頼みを告げる――

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