幕間 《親衛隊》
――その頃、吸血鬼の罠によって嵌められたドリス達は地下施設の広間に閉じ込められ、扉に向けて幾度も体当たりを仕掛ける。
「行きますわよ!!せぇのっ!!」
『はあっ!!』
魔物を閉じ込めるように特別に設計された扉に対してドリス達は力を合わせ、扉をこじ開けるために幾度も体当たりを仕掛ける。しかし、いくら体当たりを実行しても扉の方はびくともせず、それでもドリス達は諦めずに扉を開くために体当たりを実行した。
ドリスの魔法剣でも扉の表面を凹ませる事しかできず、そんな扉を人力で開く事は不可能に近い。しかし、それでもドリス達は諦めずに扉に体当たりを行う。
(これ以上に魔力を消費するわけにはいきませんわ……外から感じる気配、恐らくは大変なことが起きているはず。ならばこの扉はどうにか自力であげないと……!!)
施設の中からでも地上の火竜の存在感を感じ取り、ドリスはここで無駄な魔力を消耗するわけにはいかなかった。そのため、広間を封鎖する扉は自力で何とかしようとするが、いくら全員がかりで体当たりを仕掛けようと開く様子はない。
「はあっ、はあっ……」
「くっ……肩が……」
「も、もう駄目だ……」
「弱気になってはいけませんわ!!さあ、諦めずに立ち上がりなさい!!」
他の団員達が幾度もの体当たりで体力を消耗し、精神的にも追い詰められていくが、ドリスは皆を励まして体当たりを続行させる。彼女の行動は一見は無謀に思えるが、実際の所はドリスもこの扉が体当たり程度で壊れる扉ではない事は理解している。
彼女が団員達と共に体当たりを繰り返すのは自暴自棄になったわけではなく、外にいる人間に気付いてもらうはずだった。彼女の予想でもう間もなく外にいる人間が駆けつける頃合いであり、自分達がここへ捕まっている事を示すために彼女は体当たりを行う。
「いっせぇのっ!!」
『せいっ!!』
再び全員で体当たりを行うと、外側の方で初めて足音のような音が鳴り響き、その音を耳にしたドリスは笑みを浮かべる。
「貴方達、扉から離れて!!」
『えっ?』
ドリスの言葉に騎士達は戸惑うが、言われた通りに全員が扉から下がると、しばらくの間は静寂の時が流れる。しかし、外側の方から強烈な衝撃が走ると、十数人がかりでドリス達が体当たりしてもびくともしなかった扉が吹き飛ぶ。
扉が外側から弾き出された光景を見て団員達は呆気にとられるが、ドリスは扉の外側に視線を向けると、彼女は微笑みを浮かべて助けに来てくれた人物達を迎え入れる。
「助かりましたわ……リンダ」
「はっ……ドリス様もご無事で何よりです」
「し、親衛隊!?」
「ドリス団長の直属の……!!」
外側に待ち構えていたのはリンダを筆頭にした数名の女性たちであり、彼女達は全員がメイド服を着こんでいた。親衛隊隊長のリンダは発勁の力で扉を外側からこじ開け、ドリス達の救出に成功する。
どうやらドリス達を閉じ込めた広間の扉は内側からの攻撃には強いが、外側からの攻撃は想定されておらず、彼女の発勁で吹き飛ばす事に成功した。リンダの扱う発勁は内部に衝撃を伝える技であるため、扉を固定する金具に直接衝撃を与える事で扉を外した。
親衛隊はフレア公爵家のドリスに使える護衛隊であり、王国騎士団に属しているというわけではない。しかし、その実力は王国騎士にも匹敵する。心強い助っ人を味方につけたドリスは親衛隊と共の商業区へ向かう。
「さあ、行きますわよ!!他の騎士団に手柄を取られる前に!!」
『おおっ!!』
こうして黒狼騎士団の勢力も復活し、商業区へ続々と王都の戦力が集結していく。
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