幕間 《秘薬完成》
「――出来上がりましたよ!!体力も怪我も魔力も回復させる新薬、名付けて仙薬改です!!」
「や、やっとか……」
王城の研究室では解毒薬の製作の合間にイリアがイシと共に仙薬を参考にした新しい薬の開発に成功した。イリアの計算ではこの丸薬を飲めば怪我の治療だけではなく、体力や魔力の回復を同時に行えるという。
複数の薬を調合して作り出された代物であり、時間の問題で1つしか作り出せる事は出来なかったが、遂にイリアは新薬を作り出す事に成功した。これを飲めばたちまちにどんなに疲労困憊の人間だろうと立ち直る事ができる代物だと彼女は言い張る。
「まだまだ精霊薬には程遠いですが、少なくとも今までにない全く新しい薬を作り出す事ができましたよ!!」
「そ、そうかよ……」
「という事で師匠、試飲をお願いします」
「ふざけんな!?自分で作った薬だろうが、自分で飲めよ!!」
さりげなく作り立ての薬の試飲を頼もうとするイリアに対してイシは怒鳴り付け、そんな作り立ての怪しい薬など飲むはずがなかった。しかし、イリアとしてはどうしても効能を確かめたく、彼に無理やり飲み込ませようとした。
「何言ってんですか、新薬を作り出す際は誰かが飲んで確認しないと効果を確かめられないでしょうが!!」
「なら、お前が飲めよ!?自信作なんだろう?」
「私が倒れたら誰が精霊薬を作り出せると思ってるんですか!?」
「こ、こいつっ……!!」
「御二人ともこんな時に何をやってるんですか!?」
「二人を抑えろ!!」
他の研究員たちが喧嘩を始めたイリアとイシを止めようとした時、ここで彼等に衝撃が走った。この時に火竜が城下町に出現し、その威圧感が王城にまで届く。
「な、何だ……今のは?」
「何ですかこれは……リョフ?いや、違いますね……」
リョフが復活を果たした時よりも異様な気配を感じ取ったイシとイリアは顔を見合わせ、喧嘩している場合ではない事を察する。二人は解毒薬の制作を中断し、新しく作り出した新薬に視線を向ける。
「今度は何が起きた……」
「……早々にこれが活躍する機会が訪れたのかもしれませんね」
「あ?何を言って……おい!?」
イリアは新しい丸薬に視線を向け、彼女は仕方なく覚悟を決めた様に自分の口に含む。その光景を見た他の者は驚くが、直後にイリアは目を見開く。
「う、うっ……」
「お、おい!!大丈夫か!?吐き出せ、そんな物!!」
口元を抑えて膝を着いたイリアを見てイシは慌てて薬を吐くように促す。しかし、次の瞬間にイリアは目を見開くと、彼女は叫び声をあげた。
「美味い!!」
『はっ?』
「成功です!!これは最高の薬ですよ!!」
新薬を飲み込んだ途端にイリアは体力と魔力が回復する感覚に襲われ、更に従来の薬よりも味が美味しい事に感動を覚える。
――実はイリアは薬を飲みやすくするため、その味にも拘っていた。苦い薬を毎回飲まされるよりも、味が美味しい薬の方が飲みやすいと判断した上での製作だったが、遂に彼女は理想の薬を作り上げた。
自分自身で新薬の完成を確かめたイリアは即座に同じ薬の調合を開始する事にした――
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