第850話 ゴウカVS火竜
『……頭がおかしくなったの?』
『何を言うか!!いや、言葉は口にしていないから……何を書くか!!ん?何を書いている、か……と言えばいいのか?』
路地裏からゴウカを心配した風にマリンが筆談で語り掛けると、ゴウカは自分の頭を心配する彼女に怒る。別にゴウカは火竜に力負けした事で衝撃を受けたわけではなく、彼は本当に嬉しかったのだ。
自分をも上回る存在と戦う事こそがゴウカの生き甲斐であり、圧倒的な存在を倒した時、自分は更なる強さを得ると彼は信じていた。しかし、生まれた時から規格外の力を持っていたゴウカは自分よりも強い存在と巡り合うことが殆どなかった。
今以上に強くなりたいというのに自分よりも強い人間と巡り合えず、彼は巨人国には自分の求める存在はいないと判断して王国へと渡る。そして遂に彼は自分をも上回る圧倒的な存在と対峙した。ゴウカはドラゴンスレイヤーを手にして火竜と向き治り、戦闘を再開するために声を張り上げる。
『行くぞ、火竜!!マリン、お前は手を出すなよ!!』
「グガァッ……!?」
火竜は自分の攻撃を受けても起き上がったゴウカに戸惑い、その一方でマリンの方は建物の陰に隠れながらゴウカと火竜の戦闘の様子を伺う。
『今度はこちらの番だ!!うおおおおっ!!』
「グガァアアアッ!!」
ゴウカはドラゴンスレイヤーを振りかざしながら接近すると、火竜の身体に目掛けて振り下ろす。その攻撃に対して火竜は敢えて避けもせずに受ける。
「ガアアッ!!」
「ぬおっ!?」
胸元は尻尾よりも非常に硬く、攻撃を仕掛けた刃の方が弾かれてしまう。ゴウカは後ろに傾くと、その隙を逃さずに火竜は前脚を繰り出してゴウカを抑えつけた。
「フンッ!!」
『がはぁっ!?』
火竜の前脚に鷲摑みにされたゴウカは押し潰され、流石に純粋な力は火竜が上回り、ゴウカの馬鹿力でもどうしようもできなかった。彼は必死に前脚を引き剥がそうとするが、びくともせずに押し返す事が出来ない。
地面の押し込んだゴウカに対して火竜は口元から火炎を迸らせ、今度は炎塊を放つのではなく、火炎その物を吐き出してゴウカを丸焼きにしようとする。それを見たゴウカはに呈していたドラゴンスレイヤーを構えて火炎を防ぐ。
「アガァッ!!」
『ぬおおっ!?』
火竜が火炎を吐き出すと、ゴウカはドラゴンスレイヤーで受ける。この際に火竜の火炎に反応してドラゴンスレイヤーの刃が炎を吸収するように高熱を帯びると、ゴウカは自分を抑えつける火竜の前脚を斬りつけた。
『ぬんっ!!』
「グガァアアアッ!?」
前脚をドラゴンスレイヤーに切り付けられた火竜は悲鳴を上げ、刃が熱したドラゴンスレイヤーは切れ味が高まり、さらに切り付けられた箇所は発火する。必死に火竜は前脚を振り払って炎を消すが、その隙を逃さずにゴウカは起き上がると火竜に向けて刃を叩き付ける。
『よくもやったな!!お返しだ!!』
「グアッ!?ガアッ!?アアッ……!?」
幾度もドラゴンスレイヤーを叩き付けられた火竜は悲鳴を上げ、身体のあちこちが切りつけられ、傷口が発火して余計に痛みが増す。しかし、火竜に抑えつけられたゴウカも無傷では済まず、攻撃の途中で膝を崩す。
『ぐうっ……!?』
「っ……!?」
ゴウカの異変に気付いたマリンは路地裏から抜け出すと、咄嗟に彼を助けるべきかと杖を構えた。しかし、姿を現したマリンを見て火竜は目つきを鋭くさせ、先にゴウカよりも彼女に攻撃を定めた。
「アガァッ!!」
「っ!?」
『何っ!?』
火竜は炎塊を放つと、それに対してマリンは咄嗟に杖を構えて迎撃しようとした。先ほどのように魔法を発動させて相殺させようとしたが、それを予測した火竜は狙いを彼女ではなく、彼女の近くにある建物に目掛けて放つ。
炎塊が建物に衝突すると、建物が崩れて瓦礫がマリンの元に目掛けて降り注ぎ、それを見たマリンは咄嗟に動く事ができなかった。そんな彼女を見てゴウカは咄嗟にドラゴンスレイヤーを振りかざし、剣圧で彼女に降り注ごうとする瓦礫を吹き飛ばす。
『マリン!!』
「えっ……!?」
ゴウカが全力で大剣を振り払うと、その剣圧によってマリンに降り注いだ瓦礫を全て吹き飛ばすが、この時に彼は火竜に対して隙を見せてしまう。火竜はゴウカに狙いを定め、隙だらけのゴウカに対して首を伸ばす。
「アガァッ!!」
『ぐああっ!?』
「ゴッ……ゴウカ!?」
火竜に噛みつかれたゴウカを見てマリンは遂に我慢できずに言葉を発すると、火竜はゴウカの身に付けている鎧に牙を食い込ませ、圧倒的な咬筋力で鎧を破壊して噛み潰そうとした。
リョフとの戦闘でも壊れなかったゴウカの鎧だが、火竜の牙の切れ味と強度は並の魔法金属を上回り、徐々に鎧全体に亀裂が広がり始める。このままではゴウカは殺されると思ったマリンは杖を構えるが、この時に火竜に向けて近付く人影が現れた。
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