幕間 《イリアの秘薬》

――宰相を裏切り、彼の計画を暴露したイリアは現在は師であるイシと共に白面を縛り付ける毒を打ち消すための解毒薬の製作に励む。しかし、その際中に彼女は別の薬の開発を行っていた。



「おい、イリア!!こんな忙しい時にお前は何をやってんだ?」

「何ですか、別にサボっているわけじゃありませんよ。私の分の解毒薬はもう作り終えましたよ」

「ならこっちを手伝えよ!?」



現在の王城には王都中の薬師が集まり、解毒薬の製作に尽力していた。彼等が作り出すのは王都に存在する解毒薬だけではなく、この国中に散らばっている白面に所属する全員の解毒薬の制作を急ぐ。


白面に所属する人員だけではなく、強制的に白面に連れ去られ、毒を飲まされて従っている協力者の分も用意しなければならず、本来ならば猫の手も借りたい状況だった。だが、そんな時にイリアは解毒薬ではなく、別の薬の製造を行う。



「私だって遊び半分で作っているわけじゃないんですよ。だけど、師匠の弟弟子さんが見つけ出した「仙薬」という薬、あれは本当に面白いですね。ですけど私に言わせればまだまだま改良の余地はあります」

「仙薬!?ああ、イーシャンの奴が持って来た和国とやらで作られた薬か……」



イシはイーシャンとは兄弟弟子の関係であり、昔からの親友だった。今でも手紙でやり取りをしており、イーシャンが開発に成功した仙薬に関してもイシが協力している。


しかし、イリアからすればイシとイーシャンが作り出した仙薬はまだまだ改良の余地があるらしく、彼女は二人が作り上げた薬よりも高性能な薬を作り出せる自信があった。



「仙薬といっても所詮は液体の薬を丸薬にしただけに過ぎません。回復効果を速めるという点は優れていますが、私の目から見ればまだまだ甘いんですよ」

「おい、こんな時に何言ってんだ?いいから俺達は解毒薬をだな……」

「いいえ、これは必要な事です。私はこの仙薬を解き明かせば……精霊薬を作り出せると確信しました」

「何を言ってんだお前は!?」



精霊薬はこの世界では伝説の秘薬であり、死んだ人間さえも蘇らせる事ができると言われる薬である。それを作り出す事がイリアの生涯の夢であり、そのために彼女はこの危機的状況の中で仙薬の研究を行う。



「さあ、師匠も手が空いたら手伝ってください!!どうせ他の薬師だけで十分に手は回りますよ!!」

「お、おい、お前……本気で言ってるのか!?」

「本気ですよ!!さあ、やりますよ!!」



イリアは今回の一件が終われば自分も魔導士の称号を剥奪され、しばらくの間は自由に動けない事は察していた。しかし、彼女はだからこそ今のうちに自分の出来る範囲で「精霊薬」の開発のための研究を進める――

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