第827話 白狼騎士団VS白面

「――おらおらぁっ!!退きやがれっ!!」

「ガ、ガオウさん!!やり過ぎですよ!?」

「生ぬるい事を言ってんじゃねえ!!こっちはむしゃくしゃしてるんだよ!!」

「ううっ……」

「つ、強いっ……!?」



地上にて白面の集団と対峙した白狼騎士団だったが、圧倒的な実力差で白面を打ち倒す。この場に集まったのは王国騎士の中でも10本指に入る騎士二人、黄金級冒険者2名、更には高階級の冒険者達が集まっている。


いくら白面が王国内では指折りの暗殺者集団だとしても、今回ばかりは相手が悪かった。ガオウに至ってはゴウカに敗北した事で鬱憤を晴らすために半ば八つ当たり気味に白面に攻撃を行う。



「ふうっ……これでこの一帯の白面は倒す事ができましたかね」

「油断はできない……そもそもこいつら、何人いるの?」

「これまでに倒した白面も相当な数でしたが……」

「ごちゃごちゃ考えても仕方ないだろ。おい、合図を送れ」

「は、はい!!」



ガオウの言葉を聞いて同行していた冒険者の一人が杖を構え、上空に向けて魔法を放つ。同行者の中には魔術師も参加しており、砲撃魔法を利用して上空に撃ち込む事で合図を送る。


砲撃魔法を花火代わりに利用して異変を知らせる事は事前に各騎士団で取り決めており、すぐに警備兵の集団が駆けつける。



「お待たせしました!!何事でしょうか!?」

「こいつらを連行しろ、言っておくが手荒に扱うなよ。死なないように拘束するんだ」

「はっ、分かりました!!」

「さあ、私達も地下施設へ向かいましょう!!」



倒した白面の事は警備兵に任せ、白狼騎士団と冒険者達は地下施設に通じるはずの秘密の抜け道を探し出そうとした。しかし、この時に倒された白面が起き上がって怒鳴りつけた。



「ま、待て!!」

「ちっ、急いでいる時に……まだ殴り足りないのか?」

「ち、違う……お前等、何故殺さなかった?」

「あん?」



起き上がった白面は他の仲間達に視線を向け、全員が気絶させられているが誰一人死んでいない事に気付き、どうして自分達を殺さなかったのかを問い質す。



「答えろ、どうして我々を生かす!?ここで死なずともいずれ毒で死ぬんだぞ!!いっその事、楽にしてくれ……!!」

「馬鹿かお前は?さっきから言ってるだろう、解毒薬はちゃんとあるってな」

「嘘を吐くな!!そんな都合がいい物があるはずが……」

「なら、なんで俺達がお前等を殺さなかったと思う?お前等が可哀想な奴等だと思ったからだよ。毒のせいで逆らえずに無理やりに従わされる……俺だったらそんな人生、耐え切れないね」

「な、何だと……」



ガオウの言葉に白面は呆気にとられ、そんな彼等に対してヒイロは武器を治めて語り掛けた。



「……貴方達を苦しめていた宰相はもういません。我々はあの方と違い、貴方達を救うために戦っているのです。勿論、貴方達がした事が許される事ではありませんが、それでも本当に悪いのは貴方達ではなく、悪事を強要させた人間のせいだと思っています」

「お、俺達は……本当に助かるのか?」

「現在、私達の仲間が解毒薬の製作に専念しています。もう少し時間があれば必ず全員分の解毒薬を作りだせるそうです。だから……それまではその仮面をはずさないでください」



ヒイロの言葉に白面は自分の仮面に手を触れ、この仮面を外せば事前に飲用した毒薬の毒が身体中に駆け巡り、数分と持たないだろう。だからこそヒイロは彼等に諦めないようにと語り掛ける。



「次に仮面を外す時、貴女達は毒という呪縛から解放されます。今まで犯した罪は償って貰いますが、罪を償い切った時は貴方達は真の自由を得られるんです」

「自由、だと……今更そんな物……」

「おいおい、腑抜けた事を言ってるんじゃねえよ。お前達の腕ならどこへでも生きていけるさ。他人に指図されない人生、今までに一度も夢見なかったのか?」

「…………」



ガオウの言葉に白面は言い返せず、彼等は幼少期の時に王国へと送り込まれ、暗殺者として仕立て上げられた。だからこそ暗殺者以外の生き方など知らないが、それでも幼少期は彼等は普通の子供として生きてきた。


任務の度に毎回毒を飲まされて苦しい思いを抱き、定期的に毒を抑える薬を飲まないと生きていけない身体、自分達の生まれた国でもない国のために命を懸けて戦わされる日々、そんな生活に嫌気を覚える白面は多い。


結局は白面は自害する事を諦め、白面に手を伸ばしていた者達は手を下ろす。ヒイロ達はそれを見て安心すると、ガオウは気軽に白面の肩を叩いて呟く。



「もっと楽に生きろよ……罪を償った後は冒険者になるのはどうだ?お前等程の腕ならきっといい線まで行けるぜ」

「……考えて置く」

「ああ、時間はたっぷりあるんだ」



ガオウは白面の言葉を聞いて笑うと、そのまま彼は立ち去る。その後姿を見て白面はもう何も出来なかった――

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