幕間 《オロカの最期》

「オロカ様、いったい何をなされているのですか!?」

「ば、馬鹿者、逃げるに決まっておるだろう……猛虎騎士団が戻ってきたのだぞ、いずれここも奴等に見つかる」

「に、逃げるって……どうやって!?」

「いいから早く準備をしろ!!お前も死にたくはないだろう!?」



シャドウの元から離れたオロカは自分が拠点としている建物へと戻り、これまでに稼いだ金を担ぎ、それを見た配下が戸惑う。彼はいちはやく猛虎騎士団が帰還した事を知り、しかも彼等が宰相ではなく、王族側に就いたという情報を聞いて逃げる準備を行う。


これまでに稼いだ全ての金と宝石の類を袋の中に纏め、彼は急いで逃げる準備を整えた。しかし、逃げると言っても王都は現在警戒態勢へと入り、城壁は完全に閉じられていた。



「無理ですよ、この状況で逃げるなんて……何処かに潜伏しましょう!!」

「いや、駄目だ!!何処に隠れようと奴らは儂等を見つけ出す!!お前等はあの男の恐ろしさを知らんのだ……王妃さえいなければ、あの男は歴代最強の王国騎士と成れた男じゃぞ!!」

「な、ならばシャドウに協力を……」

「いや、駄目だ……もう、あの男は使い物にならん」

「えっ!?それはどういう……」

「ぐうっ……」



オロカは頭を抑え、彼は頭に包帯を巻いただけで碌に治療を受けておらず、未だにシャドウに投げつけられた事を思い返すと腸が煮えくり返る。しかし、シャドウに手を出すわけにはいかず、今はシャドウが他の騎士団の注意を引く事を祈るしかない。



「もうじき、奴は王国騎士団の元へ向かう……その騒動を利用して儂等も逃げ出すぞ!!」

「は、はい……分かりました」

「シャドウめ……最後の最後まで忌々しい!!」



部下に命じたオロカは怒りのあまりに机を叩き付けると、この際に彼が持ち出そうとした袋の中身が飛び出す。それを見たオロカは頭を抱えげるが、この時に宝石の中に見覚えのない物が入っている事に気付く。



「何じゃ、これは……!?」



オロカが発見したのは何時の間にか袋の中に紛れ込んでいた「火属性の魔石」であり、しかも壊裂のような魔道具が嵌め込まれていた。それを見たオロカは目を見開く。



「な、何じゃこれは……うぐぅっ!?」



何者かに肩を掴まれた感覚に襲われ、オロカは恐る恐る振り返ると、自分の肩に何時の間にかが存在した。オロカは悲鳴を上げて腕を振り払うと、肘から先の部分しか存在しない腕は床に落ちる。


何時の間にか自分の肩に張り付いていた腕にオロカは驚くが、その腕は闇属性の魔力を纏い、そしてゆっくりと火属性の魔石の元へ近づく。それを見たオロカは表情を青ざめ、次の腕の行動を読み取って止めようとした。



「止めっ――!?」



しかし、オロカが腕を止める事は間に合わず、そのまま破裂を起動させた腕は火属性の魔石を破壊させ、内部の魔力を暴発させて大爆発を引き起こさせる――






――こうして数十年に渡って闇ギルドを纏めてきた裏社会の「小物の王」は死んだ。




※オロカが黒幕にしようかと考えた時期もありましたが、小悪党過ぎて没にしました。

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