幕間 《その頃のミイナとヒイロ》
「くっ……いい加減にしつこいですね!!」
「こいつら、倒しても切りがない」
「グルルルッ……!!」
「ウォンッ!!」
クロとコクと共に闘技場に向かっていたミイナとヒイロは、現在は広場にて白面の集団に取り囲まれていた。白面達はナイの追跡を諦めると、彼女達を執拗に追跡し、襲い掛かる。
「シャアアッ!!」
「なにがしゃあっ、ですか!!貴方達が普通に喋れる事は知ってるんですよ!!」
「あぐぅっ!?」
飛び掛かってきた白面の一人に対してヒイロは膝蹴りを食らわせ、顔面の仮面を叩き割る。彼女は魔剣だけではなく、体術も心得があり、その一方でミイナは如意斧と輪斧を振り回して白面を牽制していた。
「てい、やあっ、とりゃあっ」
「うぐぅっ!?」
「がはぁっ!?」
あまり気合が入ってこない声を上げるが、彼女の怪力から繰り出される攻撃を受けた白面は吹き飛び、クロとコクも白面に襲い掛かる。
「ガアアッ!!」
「ガブゥッ!!」
「あだだだっ!?」
「ぐあっ!?」
クロとコクに噛みつかれた白面達は悲鳴上げ、戦況はミイナ達が有利だった。以前は王国騎士の中でもミイナとヒイロはドリスやリンに次ぐ実力を誇り、今更ただの白面程度では相手にはならない。
しかし、街中で白面に襲われているというのに街の警備兵や王国騎士が現れる様子はなく、王都内の殆どの戦力が城壁の守備に集中していた。これも宰相の指示だと思われ、現在の市街地には兵士の姿は見えない。
「ヒイロ、どう思う?宰相の狙いが分かる?」
「いいえ、全然分かりません!!そもそも本当に宰相が黒幕なのですか!?」
「私は宰相が怪しいと思う」
戦闘の最中にミイナはヒイロに話しかけ、今回の出来事が本当に宰相が裏を引いているのかを話し合う。ヒイロは宰相の事を本当に尊敬しており、いくらアルト達に言われても完全には宰相を疑う事が出来なかった。
「私は、宰相が本当にこんな酷い事を引き起こしたとは思えません!!あの人はこの国に何十年も仕えてきた人ですよ!?」
「それはヒイロが宰相を疑いたくないだけじゃないの?」
「……そうですね、否定はしません!!」
「ぐぎゃあっ!?」
白面を打ち倒しながらヒイロは自分の考えを告げ、彼女は宰相を最後まで信じたいとは思っていた。しかし、状況的には彼が一番怪しい事に変わりはない。
それでもヒイロは自分の目と耳で宰相が本当にこの国を裏切ろうとしているのか確かめたかった。そのためには彼を探し出す必要があると判断し、彼女はミイナに告げた。
「ミイナ、申し訳ありませんが……貴方は闘技場に向かってください!!」
「ヒイロ、どうするつもり?」
「私は王城へ向かいます!!そして宰相に問い質します!!」
「……それはいくら何でも無謀過ぎる」
「でも、このまま悩み続けながら戦うのは御免です!!」
迷いを抱いた状態ではヒイロも思う存分に戦えず、彼女は王城へ向かおうと決意しかけるが、そんな彼女にミイナは告げた。
「ミイナ、貴女の主人は誰?」
「な、何を言って……当然、アルト王子に決まってるでしょう?」
「そう、それならアルト王子の命令を無視して行動する事が貴女の騎士道なの?」
「うぐっ!?」
まさかのミイナの指摘にヒイロは言い返す事が出来ず、二人はあくまでもアルトに仕える王国騎士であり、彼の命令に逆らう事は彼を裏切る事に変わりはない。
「ヒイロ、私達は王国騎士見習い……だけど、志は見習いのままじゃいられない。もうすぐ私達は正式に王国騎士になる事を忘れないで」
「あっ……そういえばそうでしたね」
もうすぐアルトは誕生日を迎え、彼は成人年齢を向けると白狼騎士団は正式に王国騎士団として認められ、所属しているミイナとヒイロも王国騎士として正式に認められる。
ミイナとヒイロは白狼騎士団に所属する王国騎士団であり、アルトのために尽くす事を誓って騎士団に加入した。正直、他の騎士団から厄介払いされて彼の騎士団に入り込む形になったが、今では切っ掛けなどどうでもよかった。
「私達は王国騎士……なら、騎士として主人の言う事を信じる」
「ふふっ……まさか、貴女からそんな事を言われるなんて思いませんでしたよ」
「……ちなみに私の言った言葉は全部アルト王子から言われた。もしもヒイロが迷うなら、こんな風に言えと言われた」
「最後の言葉で台無しですね!?」
『シャアアッ!!』
余計な言葉まで話したミイナに折角感動しかけていたヒイロは呆れてしまうが、そんな二人に白面の集団は襲い掛かり、二人は息を合わせて戦う。
「でも、私も気持ちは同じ……ヒイロ、背中は任せた」
「ええ、お任せください!!」
「「ウォンッ!!」」
ミイナとヒイロは背中を合わせ、次々と襲い掛かる白面の集団に全力を尽くして戦う――
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