第756話 仙薬の効果
「いったいどうやってこの薬を!?」
「作るのには苦労したがな……王都にいる俺の
「へえっ……飲んでみてもいいですか?」
「ああ、お前等もここまで来るのに大変だっただろう。体力補給も兼ねて飲んどけ」
イーシャンの言葉にナイ達は彼から回復薬から生成された仙薬を受け取り、それを飲み込む。その途端、かなりの苦味はあったが一気にナイ達の疲れが吹き飛び、疲労回復効果も高い事が判明する。
「うえっ……にが〜い」
「けど、効き目は凄いな……身体が軽くなったよ」
「感覚的には回復薬を飲んだ時と同じぐらい体力が回復した気がします」
「まずい、もう1個」
「やらねえよ、そんなに!!怪我してないなら1個で十分だろうがっ!!」
「凄い……ありがとうございます、凄く楽になりました!!」
ナイはイーシャンに感謝すると、彼は照れくさそうな表情を浮かべながらもこれまでの旅路で作り上げた仙薬をナイ達に渡し、それぞれで分け合うように指示した。
「ほら、お前等も持っていけ。一応は言っておくが、色で見分けろよ。緑色は回復薬、濃い目の緑は上級回復薬、青色は魔力回復薬、そして白色は聖水と同じ効果を発揮する」
「むむむっ……和国の秘伝の丸薬を作り出すとは、大した腕でござるな」
「いや、こいつの作り方が分かったのは俺とこの王都に住んでいる親友のお陰だ。俺一人だと作り上げるのに時間が掛かってどうしようもなかったよ」
「親友?それは誰の事ですか?」
「ああ、そいつの名前は……何だっ!?」
王都の方から轟音が鳴り響き、何事かと全員が視線を向けると、城壁の上には魔術兵が存在した。魔術兵は杖を構えると、一斉に上空に魔法を放つ。
杖先から次々と魔力の塊が放たれ、空中に拡散して花火のように散る。その光景を見てナイ達は何のつもりかと思ったが、アルトはそれを見て合図だと確認する。
「あれは……王都に敵が攻め入った時の合図だ!!」
「敵!?敵ってどういう事!?」
「王都に敵の軍勢が迫った時、王都中の人間に警告を行う!!つまり、王都は警戒態勢に入った事を意味する合図なんだ!!」
「という事は……まずいです。、王都が警戒態勢に入ると私達は中に入れません!!」
ヒイロの言葉にナイは驚き、その一方で城壁の上では魔術兵が次々と魔法で花火を演出し、王都中の人間に警戒態勢に入った事を知らせる。この状態では外部の人間が中に入る事も、逆に外部に逃げ出す事も許されない。
完全に王都は警戒態勢に入った事で城門は封鎖され、城壁の警備が高められる。こうなってはナイ達は入るのは難しく、王子であるアルトでさえも中に通す事は許されないかもしれないという。
「恐らくは警戒態勢も宰相の指示だろう……くそっ、このまま宰相を見逃せば何を仕出かすか分からない!!何としても止めなければ……」
「止めるって、どうやって!?何か方法はあるの!?」
「……あの城門を破壊して中に入るのは不可能だ。大軍が攻め寄せて来た時や、魔術師が攻撃を仕掛けて来た時を想定して魔法金属で構成されているから破壊は不可能だ。だから強行突破は難しい」
「それならどうやって忍び込むのでござる?」
「忍び込む?違うね、堂々と入ればいいのさ……僕を利用してね」
「えっ?」
アルトの言い方にナイ達は不思議に思うが、この後にアルトは一世一代の芝居を行って王都へと入り込む方法を告げた――
――その後、ナイ達はビャクの狼車に乗り込み、王都へと接近する。王都へ入るには城門の他に水堀を通るための橋も同時に降ろさなければならず、この時に狼車が王都に近付くと、城壁の上の兵士が「拡音石」なる魔石を利用して声を大きくして語り掛けた。
『止まれ!!そこの馬車……いや、狼?白狼種か?まあ、どっちでもいい!!これ以上に近付けば攻撃するぞ!!』
「グルルルッ……」
ビャクに対して城壁の上の兵士達は弓矢を構え、魔術兵も魔法で迎え撃つ準備を行う。如何に白狼種とはいえ、水堀や高い城壁を跳び越える事は不可能である事は分かっているが、それでも城壁の兵士は警戒する。
この時に狼車から二人の人物が降り立つと、それを見た城壁の警護を任された警備隊長は驚愕した。それはアルトともう一人は黒仮面を纏った人物であり、その人物はアルトの首筋に短剣を構え、城壁の兵士に怒鳴りつけた。
「この王子の命が惜しければ我々を王都の中に入れろ!!」
『き、貴様……何の真似だ!?』
「聞こえなかったのか?我々を早く城門の中に通せと言っている!!この王子の命が惜しくないのか!?」
「ぐっ……!?」
アルトは黒仮面に首元を締め付けられ、それを見た警備隊長は顔を青ざめるが、すぐに冷静に考え直す。
※明日からいつも通りの話数で投稿します。
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